ガイドコラム

冬用登山靴の素朴な質問 どこで必要 その特徴?

 

冬用登山靴の素朴な質問 どこで必要?その特徴

季節が冬だからといって冬山用の登山靴が必要なわけではありません。

足指が冷えてしまうのを防ぎたいだけであるならば「防寒靴(ブーツ)」で良いかと思います。

この記事を読んでいただきありがとうございます。冬の山、出かける山はどちらでしょうか?

雲上は白銀世界

初心者であってもベテランであっても自分が出かける山によって、それぞれに最適な準備があります。

ここでは寒さに対する個人差や技量については触れません。あらかじめお断りしておきます。

太平洋側の気象、概ね冬型の厳しい冷え込みのとき「青空」が広がる地域の1000メートル級の山岳であれば、深い雪を想定する必要は少なく、日陰や陽の当たりにくい北斜面の出てくる氷化した登山道と冷え対策が主になります。
スリーシーズン用の登山靴に雨雪だけでなく保温性向上にも役立つゲイターを装着すると良いでしょう。安定した夏と同じ登山道や林道を歩くのですから、チェーンアイゼンや軽アイゼンで対処できるところが多いでしょう。標高が低くても東北や北海道など緯度の低いエリア、険しいルートなど個別の判断が必要です。

防寒靴と冬用登山靴の素朴な質問 違いは何なの?」 ⇒ こちら

準備はOK?

降雪が多い日本海側の気象が支配するエリアと標高が2000メートルを超える山岳地帯は流れ込む冷たく湿った冬型気象の影響を強く受けます。

冬用登山靴は「寒さ」に加えて「積雪・氷」への備えが必要な山岳エリアに行く場合に必ず必要となる基本的な装備です。

正直言って、足形状とサイズなどの個人差、メーカーアイテムの足型、供給量を考えると意外と最適な冬用登山靴の最適解は意外に少ないと考えています。登山用品店に行き、目標とする冬の雪山にふさわしい2~3モデルを試し履きして、フィットしたものに出会ったなら、そのタイミングで購入してしまうほうが無難です。
「出会いは一瞬、後でと思っていると・・・」のことが多いです。特に夏の靴選びで苦労した方は要注意ですね。

《外見上の特徴)》

1:ハイカットです。モデルによっては登山靴全体を防風性と透湿性がある素材で覆う「ゲイター付きモデル」も増えました。ビルトインゲイター仕様といいます。(写真を参照)

厳冬期日本アルプスからヒマラヤ登山まで使用可能な冬用登山靴。

2:靴底(ソール)は比較的フラットで剛性が高く、厚みがあり、ラバーパターンの彫りが深いです。靴底の先端部分形状は歩きを重視した夏山向きに比べてたいら(フラット)です。これはアイゼンと登山靴の一体化のためです。特に前爪を多く使う場面での安定感に大きく影響があります。

冬用登山靴の靴底(ソール)は彫りも深く雪を確実につかみ、剛性のあるソールは雪面に蹴りこむパワーを無駄にしません。

アイゼンを装着せずに雪面に蹴り込む場面(キックステップ)では高い剛性とフラットな形状であれば、無駄な力を使うことなく安定して歩くことができます。積雪は温度や含まれる水分量、結晶の形などでその振る舞いは変化します。彫の深く雪面への喰い込みを高めると同時に、雪離れ(排雪)し易いテーパー形状をしています。冬山登山靴を雪のない季節に使うと靴底ラバーに傷がたくさんついて雪離れが多くなります。積雪期と無積雪期で使い分けるのをお勧めします。アイゼンの装着有無にかかわらずピッケルなどによる「雪落とし」は身に付けるようにしましょう。
3:前爪のある12本爪以上の冬山用アイゼン(クランポン)を確実に装着可能なコバ(写真を参照)

つま先(トウ)と踵(ヒール)の両方に彫の深いコバがあるモデルはアイゼンを装着して厳しいクライミングを意識した各社のフラッグシップモデルに採用されることが多いようです。

踵(ヒール)のみにコバがあるモデルはアイゼン装着を想定した夏用(氷河と雪渓対応)モデルから冬山登山靴まで幅広く採用されています。

⇒ コバが付いていても保温性を強化していないモデルは冬山登山靴ではありません。

ただ、冒頭に書いた太平洋側気候に支配される山岳や日帰り雪山で数時間から半日くらいの歩行のみで、安全で温かい場所に下山できるなら、スリーシーズン用の踵コバ付きモデルを試してみる価値は大いにあります。少しづつ経験を積み自分の装備を試してみることは大切です。

フラットな靴底と高い剛性(曲げにくさ)、しっかりとしたコバ(アイゼン装着に必要なことも)がある冬用登山靴。歩きにくい?アスファルト道ならその通りです。でも、危ないのはどこでしょうか?山の中のことを優先し考えてみてはいかがでしょうか。

 

靴底は複数の素材を組み合わせている。踵(ヒール)のコバは必須。

4:水分を含みにくく加工し、天然素材特有の保温性がある「皮革」が使われることが多いです。足を保護(保温と外圧)できるアッパー素材でつくられた硬めの形状(写真を参照)はアイゼンストラップなどの締め付けでも変形しにくくなっています。

各社とも保温性と丈夫さに配慮した冬用モデルには比較が使われることが多い。

5:足入れ部分に追加された「保温のためのネオプレン素材のカフ」で靴と足の隙間から温かい空気が逃げるのを防ぎます。

温かい靴内部のくうきを逃がさない工夫です。

6:保温性を高めた二重靴(ダブルブーツ)は保温性重視です。インナーブーツとアウターブーツという二重構造です。

何日もテントを使う日本の冬山登山では登山靴は湿りやすく中々乾かすことができません。山小屋のように乾燥室はありません。テント内でインナーブーツを自分の体温を使って乾かせる二重靴、実は日本向きなのではないかと思っています。

《見えない内部構造》

1:アッパー素材に組み込まれた「保温材(インシュレーション)」
2:厚みのある靴底にサンドイッチされた「保温性が高い素材シート」
3:ゴアテックスなどの透湿防水フィルム

 

《自分でグレードアップする》

1:メリノウールなどの素材でできた厚手の靴下を使う
冬山登山靴購入時に合わせて購入が望ましいです。足指が十分に動かすことができるサイズの冬山登山靴を購入します。ソックスは使いこんでいくうちに毛が抜けて肉厚が減っていきますので、冬山前には新調することが望ましいです。

2:インソールを交換します。自分自身の足裏と靴を繋ぐ大事な部材と考えましょう。フィット感が向上しアイゼン装着時の歩行性能向上、操作性向上が望めます。また、保温性に配慮した「冬バージョン」を選ぶのもおすすめです。

3:アッパー素材の撥水性を強化する。新品の状態が一番最高ですが、アッパー素材は雪や岩で擦られ、泥などで汚れていくうちに撥水性が低下していきます。サンドイッチ構造にはゴアテックスなどの防水透湿フィルムがあるので内部への水の侵入は防ぐことができますが、アッパー素材自体に水分が含まれると、「重くなる・冷えてくる・凍る」といった不都合な状況が出てくるので注意しましょう。

雪山といども陽の高い時間帯は気温が上昇します。雪は湿り気を含み重たくなり、登山靴を濡らすことが多いと覚えておきましょう。

⇒ 靴専用洗剤で洗い、汚れと界面活性剤を十分に落としてから、撥水材で処理しましょう。雪上のみで使っているならば、定期的に撥水材を施すだけでも良いです。

コロニル ナノプロ

日本の雪山シーズンは5月ゴールデンウィークが最後のヤマ場、ということは6か月あるということです。

絶景の雪山シーンを安全に登る第一歩は「雪山対応の冬用登山靴」ですね。

 

雪山チャレンジならこんな記事も参考に、安全に近づくには「危険」を知らないといけませんから。

「雪山の絶景は危険と隣り合わせ 知らないと後悔する命を守る6つのポイント」

 

WebShopで冬用登山靴をチェックする
WebShopで雪山装備をチェックする

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

最近の記事