ガイドコラム

暖冬、でも降雪を甘く見ないようにしよう!「吹き溜まり雪・雪庇」

 

街だけを見ていると気が付きにくいのですが、空に浮かぶ雲から降ってくる雨も上空では氷の結晶です。冬期の1000m程度の山岳地帯では雪になります。5月でも3000mのアルプスまで標高を上げれば降雪は普通の現象です。日本列島にはユーラシア大陸との間にある日本海という巨大な水蒸気供給源があるために年間を通じてたくさんの雨か雪が降っているのです。

寒気の等温度線は北極圏から取り囲む曲線で、時にはまるで花の輪郭のよう描かれることもあります。今年は極めて冷たい空気の塊はシベリアに閉じ込められたままなのでしょうか。巨大冷凍庫のトビラは開け放たれ上空5000m付近にマイナス30℃の寒気が日本列島に覆いかぶさるでしょうか。

中期の寒気の動きには注目しておきましょう。

2020年はウインタースポーツ受難の年になるかもしれません。古い話になりますが、2000年も雪がとても少なく、「第55回とやま国体」の雪不足を思い出させます。記憶では2月のバレンタインデーあたりに突然、湿った豪雪になったと思います。それまでの自衛隊の皆様に要請して雪を運び込まないと競技ができない状態から、一転して除雪に苦労することになったと聞いています。そして、痛恨の3月5日北アルプス大日岳雪庇崩落事故も今年のような降雪状況の年でした。

降った雪は季節風に吹き飛ばされ、風下に堆積していきます。

 外見が白く同じように見えても、足を踏み込んだ時の安定度は様々です。ショベルなどによる積雪チェックはもちろん大切ですが、今期の積雪経緯にも気を配るようにしたいものです。

立山室堂での積雪調査。黄色い層は中国大陸からの黄砂を多く含んだそうです。

20年もの時が経ちコンピュータ解析能力などが進歩しています。突然降ってきた!などということにはならないでしょうが、自然そのものを制御することができない以上、降雪には注意を払いたいものです。

庇状ではないけれど。樹林帯に吹きだまった「雪庇」

 雪庇という漢字を見ると、「雪」の「庇(ひさし)」ですが、この字が大きな誤解を生んでいるのです。

地表に到達した雪粒や積雪は風に流され移動します。地形などによる気流で様々な積雪地形を形作ります。稜線の風下側に溜まった庇状の部分を含む吹き溜まり雪全体を雪庇(せっぴ)といいます。最も弱く崩れやすいのはもちろん庇状の部分ですが、積雪の強度・安定性は雪の積もり方、その時の気温などで変化します。表面だけでなく、深い部分の強度にも気を配る必要があります。

 雪紋とは

一粒一粒は軽い雪粒ですが、風に乗って風下に移動させられます。どれだけ遠くまで移動するかは、風の強さによる駆動力と重力で決まってきます。強風で雪が削られると美しい雪紋も見ることができます。

雪紋 雪粒を含んだ強風は雪面を削って様々な模様を描いていきます。 北八ヶ岳天狗岳

地表の凸凹、傾斜、樹木や岩など事物で風の流れは変化するので、雪稜は美しい姿を見せてくれます。

2月伯耆大山

雪上を行く先行者のトレースがより安全とは限りません。幅の広い雪稜は一見安全のように感じるかもしれませんが、視界が利かずに強風が吹く状況ではどうなるでしょうか。

 先行者が無事なら自分も無事! ⇒ 正常化バイアス、という陥りやすい思考です。自分で判断し危険なエリアから離れることに必死となることもあるかもしれませんね。

そこ、大丈夫ですか~

雪庇はアルプスの専売特許ではありません。滋賀県の比良山地武奈ヶ岳にも北西の季節風で雪庇が形成されます。庇状になっている部分、傾斜が急になっている部分など様々ですが、雪が吹き溜まっているのが良くわかります。

2月武奈ヶ岳

写真の右側の枝尾根が出ている部分には強風を避けるために風下側に逃げ込んだ跡が見られます。これはその時登山者が選択したことで良い悪いは言えないです。

笑顔の絶えない山行の中にも、様々な危険が潜んでいます。近づかない!という選択肢もあることをお忘れなく。

 

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Yahooニュース/個人/ライフ/加藤智二 ⇒ こちら

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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