ガイドコラム

近代登山100年と歩む好日山荘 VOL.03 「1931年発行の型録にみる創業から7年目、西岡一雄の思い」

 

冒頭から5ページにわたって、ガリ版鉄筆による手書きの文章が続いています。その中から私が強く印象に残った点をいくつかご紹介したいと思います。

合せて、1924年から1931年にかけて起きた日本と世界の出来事をピックアップしてみたいと思います。

1931年に手書きイラストと文字で印刷、発行された好日山荘の型録

 今週17日は平成7年(1995年)1月17日は阪神淡路大震災から25年の節目です。大正12年(1923年)9月1日は関東大震災、平成23年(2011年)は東日本大震災など災害はいつでも身近に起きます。常日頃から防災減災意識を持ちたいですね。

好日山荘マガジン登山防災VOL.01

好日山荘マガジン登山防災VOL.02

 

西岡一雄は次の言葉を書き記しています。

 「凡そ買手も売方も共に敬虔に尊敬を持つのが、商道の本来の面目だと考えます。私の御得意は私の恩人である。それに酬いるに私は其の人を敬い、良品を売り、正直にして過失なからんことを期すべきです。その良品を買った人々は良品であったが為にその品に愛着と得意を感じられる筈です。」

 

1931年当時、1929年10月に発生した世界大恐慌の不況風が吹き荒れる中で発行されたカタログです。生活必需品でもなく、大衆娯楽でもない登山という新しいスポーツの用品を売っていく苦労がしのばれます。「信用と信頼」が基本なのだと感慨深いです。

以下はカタログに書かれている文言です。

 「山に入る者にとっては正に生命である。製法の欠点、打鋲の不合理の為に山行を不愉快に終わらし、又は危険(?)に導いた事の例は余に多い。「頑丈と絶対防水」はく靴を履く者も作る者も共通の願いである。ご注文に際しては、寸法と打鋲法と期日と価格とぉ必ず書き添えられたい。打鋲に於いては神商大の「やま」NO23にある三好氏の一文と、R.C.C.NO4にある藤木氏の筆とを御参照されむ事を薦める。(別紙付録参照)とあります。鋲の価格も加わるようです。下図参照ください。

次回以降に「R.C.C.報告」に関しても触れていきたいと思います。

1927年発行、R.C.C報告壱号
1931年型録記載の登山靴、鋲を後から打つタイプですね。

登山靴:昭和五年、米1升(1800ml、重さ1.5Kg)の米価は18銭というデータが有ります。(登山靴が)17円とすると、コメが94Kg買えそうです。現在10Kgが4000円と仮定するなら37600円です。意外に現在店頭に並んでいる登山靴の価格に近いような気がするのですが。当時のお給料はどのくらいかが問題ですね。

昭和5年の大学初任給73円、勤労世帯の月収86円、給与所得者の年収738円というデータが有ったので、それを例にすると、登山靴17円は月給の20%から30%くらいでしょうか。自分の月収と比べていかがでしょうか。店頭にある冬山登山靴7万円が給与に占める割合、高いですか?安いですか? (出典: しらかわ ただひこ氏「コインの散歩道 明治から平成の値段史」)

 

好日山荘が創業して7年目に発行した「型録」はどんな時代で、どんなことが起きていたのでしょうか。全く、加藤の好みで少し抜き出してみました。皆さんは何に興味あるでしょうか。

以下は出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から抜粋です。

大正13年(1924年)の出来事 

 1月21日:ウラジミール・レーニンが死去

 1月26日:裕仁親王と久邇宮良子女王がご成婚、昭和天皇です。

 7月31日:阪神甲子園球場完成

 

大正14年(1925年)の出来事

 1月3日:イタリアのベニート・ムッソリーニが独裁宣言

 1月6日:摩耶鋼索鉄道が開業。高尾駅(現在の摩耶ケーブル駅) – 摩耶駅(現在の虹駅)間

 2月20日:国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)再建

 2月15日:全日本スキー連盟創立

 11月13日:東京帝国大学に地震研究所開設

 12月20日:叡山ケーブルが開業。叡山鋼索線として西塔橋(現在のケーブル八瀬) – 四明ヶ嶽(現在のケーブル比叡)間

 12月27日:株式会社鈴木商店設立、(1946年に味の素株式会社に社名変更)

 

大正15年・昭和元年(1926年)の出来事

 1月12日:東洋レーヨン設立

 5月24日:十勝岳が大噴火(死者144名)

 11月18日:豊田佐吉が現在のトヨタ自動車の母体である豊田自動織機製作所を設立

 11月30日:日本ラグビーフットボール協会が設立

 12月25日:大正天皇崩御。摂政皇太子裕仁親王が第124代天皇に。昭和と改元。

 

昭和2年(1927年)の出来事

 3月14日:昭和金融恐慌の発端となる片岡直温蔵相が「東京渡辺銀行が破綻」と失言から

 5月21日:チャールズ・リンドバーグが大西洋の単独無着陸飛行に成功

 7月31日:大日本排球協会(後の日本バレーボール協会)設立

 

昭和3年(1928年)の出来事

 2月11日:第2回冬季オリンピックがサンモリッツで開催

 5月10日:ニューヨークで、最初のテレビ定期放送が開始される。

 6月18日:アメリア・エアハートが、女性初の大西洋横断飛行に成功

 

昭和4年(1929年)の出来事山と渓谷2号

 1月31日:スターリンの独裁体制が完成

 6月16日:北海道駒ヶ岳が爆発

 10月24日:ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落。世界大恐慌の始まり

 

昭和5年(1930年)の出来事

 1月31日:米3M社がスコッチテープ(セロハンテープ)発売開始

 4月1日:早稲田大学山岳部出身の川崎吉蔵によって「山と渓谷」が創設。

1930年創刊の山と渓谷2号

 5月30日:台湾で烏山頭貯水池(八田ダム)竣工

 7月13日:第1回FIFAワールドカップ開催

 9月5日:浅間山爆発 (東京まで降灰)

昭和6年(1931年)の出来事

 5月1日:ニューヨークでエンパイア・ステート・ビルディング完成。

 8月25日:羽田飛行場(後の東京国際空港)開港

 9月1日:清水トンネル開通により上越線全通(上野-新潟間が7時間10分に短縮)

 9月18日:柳条湖事件。満州事変勃発。

 12月13日:金輸出再禁止令公布施行

Yahooニュース/個人/ライフ/加藤智二 ⇒ こちら

近代登山100年と歩む好日山荘 VOL.01 「明治時代の山登りを探る」

近代登山100年と歩む好日山荘 VOL.02 「明治から大正へ 神戸草鞋會 KWS 誕生」

近代登山100年と歩む好日山荘 VOL.04 「グラビア雑誌 昭和3年(1928年)にみるウインタースポーツ」

近代登山100年と歩む好日山荘 VOL.05 「グラビア雑誌 昭和7年(1932年)「キャムプの一日」

 

 

 

 

 

 

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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