ガイドコラム

2019年六甲全縦 ギリギリ通過 ガイドツアー顛末記

 

夜明け前のホーム、スタート会場がある山陽電鉄須磨浦公園駅に向かう参加者が徐々に集まり、阪神電車・阪急電車からの乗換駅である新開地駅ホームはまるで通勤時間の様子となりました。

さあ、長い一日が始まるぞ!

神戸市六甲全縦登山大会2019年は1975年第一回大会から数えて45回目になります。大正14年(1925年)に須磨敦盛塚から宝塚まで初めて縦走され、そのコースが元になっています。あの有名な加藤文太郎が活躍した時代、まさに近代登山の幕開けの頃に起源をもつ伝統ある登山行事ともいえます。

好日山荘登山学校ツアー五人がエントリー、好日山荘山岳ガイドの加藤と共に宝塚を目指しました。

16時間連続行動となった一日を振り返りながら、2020年大会を目指す人に役に立つポイントと山岳ガイドの仕事の一端をご紹介していきます。

今日は祝日、勤労感謝の日です。
  • ガイドのつぶやき:この大会、中盤までは自動販売機がある市街地や道路を歩くことが多いので水分補給はあまり心配しなくて済みますが、行動食は糖質、塩分、アミノ酸を意識しました。
  • 山道とアスファルト道が混ざる累積標高3000m強、距離56kmと言われる長丁場です。私は疲労低減のためにプレカット対応の「足裏貼足(はったり)」ゴンテックステープを使ってみました。痛くなってから貼るよりは前もって予防が大切です。
  • ガイドのつぶやき:登山中の健康管理は自己管理ですよ。といっても今まで経験したことがない長丁場、何が起こるかわかりません。全員完歩のために自分用に加えてクライアント用(お客様)の味の素アミノバイタル「パーフェクトエネルギー130g」と「GOLD顆粒5g」と「電解質チャージ9g」を2個づつ用意しました。一人分300g×6人分=1800gをリュックに詰め込んでいます。 
  • 今回の好日山荘登山学校 六甲全縦ツアーには味の素株式会社様のサポートが付いていたのです。

06:00

須磨浦公園駅改札先、皆さん定時に全員集合。すでにスタートは5時から可能ですから、この時刻ともなると意外と参加者の姿はまばらです。

  • ガイドのつぶやき:内心、集合6時ではなく、三宮エリアからの始発で間に合う5時35分(列車到着5:29)も可能ですね。

おはようございます。朝ご飯はお腹に入っています?水はハイドレーションにどのくらいいれています?

⇒ 背中に背負う量は水2リットル、加えて500MLのスポーツ飲料という組合せが多かったですね。

行動食は小分けになってすぐ食べられるものをすぐに食べられるように準備できていますか?

⇒ 身体を動かし脳機能を維持するための「糖質とミネラル補給」は重要です。筋肉の痙攣を起こすとその後の行動継続が難しくなります。小まめに補給できる様々な行動食をポケットにいれ、雨蓋に入れ、リュックサック本体に入れました。ウエストポーチに各種行動食を入れている方もいました。

  • ガイドのつぶやき:スタート時点で各自のタイミングで飲んでもらうようアミノバイタルGOLDと電解質チャージを皆さんにお渡ししておきました。本来であればアミノバイタルプロ3600も体験してほしかったのですが、持ち合わせがなくお渡しできませんでした。ごめんなさい。
  • ガイドのつぶやき:お客様の点呼は当然ですが、挨拶を兼ねた会話から登山プロフィールや今日の体調確認をします。ウェアや装備の外観をチェックして気になる点は直接確認するようにします。

06:07

受付し、スタート

全縦スタートは5時から7時。今回は6時15分スタートでしたが、30分は早くするべきでした。
スタート地点。写真付きの参加書でチェックです。

参加者の声:歩くのはゆっくりです。初めての全縦です。全行程を一気に歩くのは初めてです。完歩するために好日山荘ツアーに参加しました。

⇒ スタート後しばらくは筋肉もまだ温まっていないのに急な坂道と階段が続きます。この区間は道幅に余裕があります。心拍数が急激に上がらないよう、筋肉の暖機運転に心がけます。追い越されるのを気にしないようにしましょう。

今日の気温と気象条件に合わせ、汗で服を濡らさないようウェアを調整します。

ドンドン追い越されます! 追い越す方の息遣いが荒いのですぐわかります。私たちはというと自己紹介や日頃の登山のことなど会話ができるくらいで歩いているうちに、展望が良い東屋ポイントです。ここで、ウェアの調節と水分補給とちょっとした栄養補給です。

⇒ 出発時間を明確に指定して、ぱっぱと手早く済ませます。小さな積み重ねですが、小さな行動遅延が大きな遅れに繋がります。

  • ガイドのつぶやき:皆のはやる気持ちを抑えます。最後に笑うには今、何をすべきか。参加者の気力は充実してるか?

赤鬼とは? ⇒ 大会運営スタッフです。区間中で先行されても良いのですが、チェックポイントは「赤鬼」の前に通過する必要があります。

06:51

ここで日の出を堪能していることを後に後悔するとは考えず歓声を上げる我々六人でした。

旗振茶屋からの日の出。

日の出の様子 動画です。 ⇒ 全縦01

菊水山のチェックポイントには12:20に着かないといけないんですよ!皆さん! ⇒ 全く気にしていませんでした。加藤談

最初の渋滞発生は須磨アルプスでなく、手前にある岩混じりの下り区間です。

登山歴が浅い人は下りで慎重になるために遅くなります。そして渋滞です。

狭い登山道、「追い越し禁止」です。ここですべきことは何でしょうか。

⇒ 立ち休憩 水分補給 糖質補給 ミネラル補給 陽も上がってきたのでウェア調整などをします。靴紐の緩みなど気になるところも直しておきます。

  • ガイドのつぶやき:六甲全縦は登山イベントでもあり、スポーツイベントでもあるのでしょう。登山だけが趣味という参加者ばかりではありません。登山道のどこで渋滞が発生するかというと「岩場や砂路などの下り」、普段からスポーツが好きでもこういった場面の経験がほとんどないので仕方がありません。

08:39

馬の背通過です。

風もなく絶好のコンディション、既に最後尾グループの為、スムースに流れる須磨アルプス。

というか、既にこの時点で「最後尾」と書かれたゼッケンをつけたスタッフの後を歩いている私たちです。

抜けるような青空。

全く気にせずパチリとシャッターを押す加藤でした。

馬の背を元気に通過する様子です。動画 ⇒ 全縦02

09:16

妙法寺小学校の仮設トイレ。男女共用の仮設トイレが二台なので渋滞。大幅な時間ロスとなりました。

アミノバイタルGOLD顆粒を全員が飲みました。

筋肉は疲れています。常に細胞再生に役立つ栄養素を供給するのがポイントです。アミノバイタルプロ3600がベターかもしれません。

10:23

高取山。

10:50

交通量の多い通りの横断信号機待ち。 ここで菊水山チェックポイント12:20であることを意識しだします。 ⇒ 遅い!!

  • ガイドのつぶやき:全員の体調は問題なし!このアスファルト区間は速歩で頑張ってもらおう。間隔を開き過ぎないよう、道路の傾斜に合わせてスピードをコントロールします。

11:14

鵯越駅通過!参加者が意外にいると思ったら「緑のリボン」半縦走の皆さんがほとんどでした。

この区間、継続的な水分・栄養・アミノ酸補給のおかげで全員スピードアップについてくることができました。

時計の針を見つつ菊水山の登り前の小休憩です。

  • ガイドのつぶやき:皆の体力、気力は問題なし。階段が多いこの区間は多くの方が頑張って登って休憩、頑張って登って休憩を繰り返しています。それを横目に私たちはゆっくり呼吸とテンポ良い足さばきに徹します。

12:10

菊水山チェックポイント。各自行動食に加えて、全員が味の素のアミノバイタルパワーゼリーを一本飲み干し、12:25出発。

内容重量130gのうち、バナナ2本分の糖質エネルギーとアミノ酸5000㎎、水分補給もできます。
  • ガイドのつぶやき:皆さん良く「手に取って重い!重い!」とおっしゃいますが、水は別に持っているのに矛盾していませんか?
  • パーフェクトゼリーのおすすめは「一気飲み」です。血糖値を凡そ2時間にわたって維持することが可能な「デキストリン」と傷んだ細胞の再生に役立つアミノ酸5000mgが含まれています。私たちの細胞は24時間365日再生を繰り返しています。六甲全縦を歩いている時も再生を繰り返しています。小まめで良質な栄養補給は筋肉と脳細胞を働かせる「燃料」だけでなく、傷んで壊れた筋組織の再生を後押しするものでもあるのです。

おっと「赤鬼」に又、先行されました。私たちも出発です。

  • ガイドのつぶやき:やるべきこと「水分と栄養補給」をせずに焦っての出発とダラダラ休憩は後悔の元。

きれいな紅葉!

13:21

鍋蓋山にて「赤鬼」に追いつくも、再び先行されます。

14:11

市ケ原 桜茶屋。「赤鬼」に先行されたり、追い越したりとなかなかハードな状況に。

脚の痙攣で座り込むほかの参加者も多く見られた区間です。

  • ガイドのつぶやき:外用鎮痛消炎剤のスプレーをかけても一時的なもの。引き続き歩くのであれば、「水分・ミネラル・糖質・アミノ酸+休憩」そして腹式呼吸をしながら休憩することが必要です。気合だけでは痙攣は止まりません。そして、有酸素運動レベルの負荷となるよう小さな歩幅と小さな段差を心がけ、回復させながら歩いていきましょう。

15:04

学校林道分岐

15:48

掬星台チェックポイント。レモン水がまだ残っていて幸せをかみしめました。ボランティアの皆さんありがとうございます!

仲間となった私たち、足の痙攣で遅れたお一人が到着、全縦継続の意思確認をすると、力強いお答え。

全員そろって、16:10出発です。

16:26

杣谷峠 青鬼が後ろに付き、「失格になるぞ~!赤鬼は10分前だぞ~!リタイアした方が良いぞ~!」

大会のスタッフ、ボランティアの皆さんのご苦労を想うと遅い我々はヨレヨレ集団に見られても仕方ありませんね。

夕闇迫る斜光線の森の道 動画 ⇒ 全縦03

青鬼とは? ⇒ 「赤鬼」の10分後を歩き、リタイアを勧告や帰路のアドバイス、リタイア者から参加証の受け取りなどします。

 

17:06

様々な食料品を購入可能な藤原商店はお片付け中でした!自販機で飲料補給と行動食補給で小休憩です。

やゃ!青鬼がやってきたので出発です。記念碑台の信号機待ちで「青鬼」と合流、斜めに渡れませんので2回切り替わるまで待ちます。

  • ガイドのつぶやき:今更焦っても意味がありません。ちょうど良い立ち休憩と思いましょう。

ガーデンテラスに向け歩みを早め、「赤鬼」を追いかけます。

皆の合言葉:赤鬼はどこだ~? 追いつこう!

17:39

ガーデンテラス。ここで「赤鬼」を発見!

みんなの笑顔が弾けます!

  • ガイドのつぶやき:実は私の右太ももがピクピクとしたので歩きながら、ハイドレーションでの水分補給、パクつく行動食。塩分を意識したスポーツ羊羹などを15分おきに食べてみました。自分の健康管理を疎かにしてはいけません。

18:16

一軒茶屋チェックポイント。全員、味の素のアミノバイタルパワーゼリーを二本目を飲み干し、18:27出発。

6人の一体感が半端なく高まり「野球で言えば、毎回スライディングセーフだね!」といった余裕が出てきたのもこの辺りです。

  • ガイドのつぶやき:チェックポイントは毎回数分前の滑り込み! 体力を温存しつつここまで来れました!
  • 内心は本当にホッとしました。
一軒茶屋でトイレを済ませ、栄養補給!
この辺りで渋滞に。
  • ガイドのつぶやき:所々に現れる風化花崗岩のU字にえぐられた下り部分で渋滞が起きます。明るいヘッドランプで足元を照らしますが、手すりとして役立つ左右にある木の根や枝もチェックしましょう。靴底をフラットに押し当て、少ない重心移動と良い姿勢を心がけます。後傾になりお尻が下がると余計に滑ります。

19:39

船坂峠を通過。

大阪の夜景を堪能し、行動食と水分補給です。
  • ガイドのつぶやき:余裕もできましたが、終わりが見えてきたこの時点でしっかりと栄養と水分を補給しておくことが重要です。筋肉が疲労しているのは間違いないのですから。

20:35

大谷乗越。仮設トイレがあります。

風化花崗岩の荒れた登山道が出てくると塩尾寺ももうすぐです。

  • ガイドのつぶやき:下山時、疲労による転倒事故は「もうすぐだね!」といった辺りで良く発生します。程よい緊張感を失わないよう声掛けします。

21:32

塩尾寺を通過。ここからが評判悪い「急な舗装道路」です。

  • ガイドのつぶやき:硬い道路からの反発と勢いが付きやすい下りで「膝を痛める」方も多いです。疲れた大腿部の筋肉が悲鳴を上げるのです。最後の1時間を無事に歩くために「栄養・水分・ミネラル・アミノ酸」を小まめに摂っていたのです。
皆さん、余裕の笑顔!

22:05

宝塚ゴール。三か所のチェックポイントは毎回ギリギリでしたが、前半での栄養と水分補給と体力温存が功を奏した快調のゴールです。

 

歩き通したあとの充実した皆さんと加藤の感想をご紹介します。

1:公称56KMという長距離、累積獲得標高3000mを歩き切るために、分割して歩くトレーニングをしてきました。実際にできるか自信が持てないので、この加藤ガイド同行ツアー企画に参加しました。無理だと思ったけれど歩き通せました。

2:安定したペース配分、水分と栄養の定期的な摂取と休憩、参加者同士のコミュニケーションと良い雰囲気は歩き切るというモチベーションを途切れさせることがありませんでした。絶対、チェックポイントを通過し、宝塚にゴールする!と有言、実行できたのは今後の自信につながりました。

3:運動は得意な方ですが、登山経験は数年です。全縦に匹敵する登山経験はありません。途中、掬星台手前で足が痙攣し遅れましたが、チェックポイントを通過できたことで、宝塚に向かう気力が湧いてきたようです。ロープウェイでのリタイアの誘惑に振り向かず、「いきます!」の一言はさすがでした。後半、徐々にペースが良くなり、前半のトラブルなど全く感じさせなのは素晴らしいの一言しかありません。

4:「とにかく疲れました!」とおっしゃっていましたが、お顔は充実した笑顔でしたよ。

5:瞬発的な頑張りではなく、長時間、故障や怪我をせずに歩き通すためには常に身体の余裕を感じていなければならないのは人生そのものですね。

6:大会を夜明け前から深夜まで、神戸市だけでなく西宮市宝塚市に至る広範囲のコースでのスタッフとボランティアのサポートには本当に頭が下がります。登山自体は各個人のものですが、大会を通じて、人間って良いな!支えるのも支えられるのも良いな!と感じられたのも収穫です。

 

最後に私からのメッセージです。

ガイドの仕事は毎回異なり、二つと同じものはない面白さがあると改めて実感しました。

  • 1:ボクシングでいえばダウンを奪われるも10カウントのギリギリまで「体力を回復・温存」させるのと近い感覚でしょうか。決して他の参加者と張り合わなかったことが良かったと思っています。
  • 2:小まめな栄養と水分・ミネラルは身体が要求してくる前に一定時間毎に補給し、やるべきことを後回しにさせないよう休憩は小まめにメリハリをつけて行ったのが良かった点だと思います。
  • 3:一人ではない登山の良さ、最初は寄せ集めだったけれども仲間意識が培われ、全員で完歩したいという連帯感が生まれました。ラグビーとは違いますが、シナジー効果が生まれ全員の実力が高められたのだと思います。
  • 4:一人のリタイアもなく笑顔で完歩できたことと、自分に自信が付くことで新しい一歩を踏み出すお手伝いができたことは大きな喜びです。

山岳・登山ガイドになるには?

たくさん山に登ること、自然に謙虚であること、体力をつけること、人が好きであること、得意なジャンルを磨くこと、危ないことを知って近づかないこと、冒険はしないこと、

貴方は山岳(登山)ガイドになりたいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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