ガイドコラム

登山用具のお手入れしておきましょう! VOL.02 レインウェア

 

レインウェアといえば、今や防水性・防風性・透湿性に優れた素材が主流となりました。

防水だけであれば懐かしい「ゴム引き合羽」になるのですが、身体の汗腺から出る湿気(汗)で不快ですし、これからの春山では衣服を濡らすことによる命の危険も出てきます。

 何のためのレインウェア?体温低下がどれほど恐いことか 山岳ガイドは知っている ②

多くの素材は下記1,2,3を重ね貼り合わせています。だから接着剤が1と2、2と3の間に使われています。

 1:表面生地(カラー、風合い、厚さ等)各メーカー毎に違います。

 2:防水・透湿素材。ゴアテックスやポリウレタン系できた多くはフィルム状の「核心素材」です。

 3:裏地。最近は軽量化のため、使用しないタイプや極薄タイプなど各社のコンセプトでバリエーションがあります。

表面生地の撥水性が低下すると、「水の鎧」を着ているかのようです。

登山者の立場からして、上の写真のようになったら「防水性がなくなっちゃった!」と感じますね。

表面張力でコロコロ!

透湿性について

 1:汗も雨も液体の「水」です。透湿素材を通過することができません。

 2:水蒸気は気体なので、透湿素材や生地のすき間を通り抜けることができます。

 3:空気中には窒素・酸素などと水蒸気が含まれます。雲や霧、冬にできる白い息は「小さな水滴」です。

 4:空気中に含まれる水蒸気は、空気の温度によって決まっています。飽和水蒸気量といい、1立方メートルあたり、20℃で17.2g、30℃で30.3g、35℃で39.6gの「水蒸気」を貯めこむことができます。 ⇒ 飽和水蒸気量

 5:レインウェアを着た身体から発生した汗は、衣服内で体温温かくなり、たくさんの液体の汗と水蒸気を含んだ蒸れた状態です。

 6:表生地の撥水性が保たれていると、「衣服内から衣服外」へ水蒸気が排出されています。

 7:表面が濡れた状態では水蒸気の通過は困難です。登山者感覚では「雨が浸み込んだ!」ですが、実は「自分の汗が外に排出されていない」状態なのです。

雨降りの中での登山では、歩くスピード(負荷)を下げた方が快適ですね。

かいた汗(液体)を水蒸気(気体)にする必要があります。

 登山で良くあるパターン

気温の低い時期、休憩のタイミングで暑いからといって上着を脱いでしまう方も多いです。しかし、休憩したタイミングで運動負荷は下がり、筋肉運動から発生する熱が低下するので、急激に体は冷えてきます。冷えた身体では液体の汗を気体の水蒸気に変えることは難しくなります。 ⇒ 汗冷え

 おススメ

 歩き出して10~15分後、身体が温もってきたら「寒さを感じるくらいの薄着」に調整して登ります。適切なタイミングでの休憩時、身体が温かいうちにレインウェア上衣を羽織って身体の熱の喪失を防ぎつつ、汗で湿った中間着から水蒸気として排出します。

 

 ☆洗濯と撥水剤でメンテナンス

基本的には柔軟剤や漂白剤など添加物の入っていない液体の洗剤を使います。40度程度のぬるま湯で洗濯機でゆったりと洗い、十分すすぎます。ハンガーにつるして水を切りしっかり乾燥、乾燥機で熱をかけると撥水性が回復し易いです。

専用洗剤 ⇒ こちら

  ポイント ⇒ 泥・皮脂などの汚れをしっかり落とすこと。界面活性剤(洗濯成分)はしっかりすすぎ落すこと。洗う時は全てのファスナーは閉めること。

ゴアテックス製品のメンテナンス ⇒ 日本ゴア合同会社のサイト

 

 ☆リペアシートでメンテナンス

特定の一か所からいつも濡れてくるならば「穴」が開いているかもしれませんね。近年は装備の軽量化が進み生地が薄くなったため、ベンチのささくれ、ヤブのトゲ、岩場での擦れによってピンホールができ易いです。

もし、ヤブ漕ぎ、岩場などハードに使う方は厚手で丈夫な(つまり少々重たい)の使うなど、山行スタイルによって使い分けることをおすすめします。

 防水性が無くなる=破れてフィルムに穴が開く ⇒ 物理的に穴をふさぐ必要があります。 ⇒ こちら

濡れた状態では絶対に修理できませんから、乾いた状態の自宅で落ち着いた状態で補修してください。

張付ける生地の角は丸めておきます。凍えるような部屋で無く、暖かい部屋の方が接着力が増すでしょう。軽くアイロンで熱を与えてみるのも良いでしょう。

  なぜ、角丸に? 修理後の補修生地が剥がれる切っ掛けになりにくいからです。

レインウェアは雨の時だけでなく、風の強い時に体温を保持するために重要なアイテムです。私はジャケットとパンツは別のスタッフバックに入れ、取り出しやすいリュックサック上部にいれています。

  なぜ? ジャケットを着るのに面倒にならないようにしています。「後でいいや!面倒くさい!」はトラブルの呼び水ですよ。

 

登山用具のお手入れしておきましょう! VOL.01 雪山ギア ⇒ こちら

好日山荘登山学校 ⇒ こちら

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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