ガイドコラム

防寒靴と冬用登山靴の素朴な質問 違いは何なの? 

 

日本は世界に二つとない変化に富んだ地形と気象を持つ国土です。真夏のビーチから厳冬のアルプス稜線まで四季の変化に富んだ自然環境を体験できます。

人が住む場所は紅葉の話題で持ちきりですが、3000m級の峰々は低温と強風そして降雪の季節です。そろそろ暖かい靴、お気に入りが欲しいと考えている方もいることでしょう。

今回は防寒靴と登山靴の違いについてお話します。

年末年始の仙丈ケ岳 アイゼンとピッケルが必須の世界 *写真は加藤撮影

日本は9月中旬以降から5月一杯、およそ8ヶ月は雪降る国です。寒くて雪が少ない場所もあれば、寒さはそれほど強くなくても大量に雪が降る場所もあります。大量に雪が積もる証拠となるニュースがあったことご存知でしょうか。北半球の中緯度に位置する日本列島は大陸にあるような氷河ができるには標高が低すぎ氷河が存在できないとされていました。

「氷河」が長野県で二か所認定され、富山県の四か所と合わせて六か所になりました。

写真のどのあたりに現存する「日本の氷河」があるでしょうか。この点についてはまた、機会を改めてご紹介していきます。

唐松岳から見る剱岳 三ノ窓雪渓と小窓雪渓、池ノ谷右股が氷河と認められた。 *写真は加藤撮影

☆ 防寒ブーツ(防寒靴)の特徴

11月も下旬、雪のニュースが流れる時期です。足の指先が冷たいのは嫌ですね。防寒靴は字の通り「保温性を高めた」靴です。

シーズン初めには種類も多く並びます。

甲から脛にかけてカバーするアッパーはショート丈からミッド丈、素材も保温性重視タイプもあれば、雪などの濡れへの対応を重視したものなどがあります。

保温性と雪など濡れへの対応を考慮したモデルも並ぶコーナー

熱が伝わりにくく、雪や氷の低温でも堅くならずグリップ力を保つラバー材質が使われており、靴底の形状も個性的です。

ビブラム社のソールは登山靴のソールに似ています。雪面への喰い込みやソールからの雪離れを意識しているようです。
ソレルのソール(靴底)は個性的!

これまで見てきたとおり、防寒靴(防寒ブーツ)は自分の足と靴自体を密着させ一体化するためのつま先から足首までの靴紐で強く締めるコンセプトではありません。つまり、足と靴を一体化させ靴自体を自分の足と一体化させる「登山靴」とは考え方が異なるのです。

☆ 冬用登山靴の特徴

四季を通じた低山から夏のアルプスまで対応する登山靴と冬用登山靴との違いは何でしょうか。保温のための工夫が第一とし、アイゼン(クランポン)を確実に装着可能であることです。これにより、厳冬期の氷化した急な斜面から寒暖を繰り返した5月のアルプスの急斜面まで対応できます。黒いラバーは粘りがありながらも堅牢なので、堅く締まった雪への喰いつきも良いのです。

※ 冬用登山靴を無積雪期に使用するとソールラバーが早く摩耗しエッジも丸まってしまいます。登山靴のシーン別の使い分けは道具(ここでは登山靴)のせ初期性能維持にとても有効です。つまり安全に寄与する性能が長持ちするので、コストパフォーマンスが良くなるのです。

冬用登山靴の靴底(ソール)は彫りも深く雪を確実につかみ、剛性のあるソールは雪面に蹴りこむパワーを無駄にしません。

剛性が高い登山靴はアイゼン(クランポン)は的確に装着することができます。ここで注意したいのは氷河上や日本の北アルプス夏の雪渓でもアイゼン(クランポン)は使用するということです。つまり、アイゼン(クランポン)装着可能な登山靴だからといって、冬用登山靴ではないということです。

⇒ 保温性が高いか!

厳冬期日本アルプスからヒマラヤ登山まで使用可能な冬用登山靴。

冬山登山靴の素朴な質問

1:防寒靴(ブーツ)は寒冷気候の街中から滑落危険がない山地や雪原でのアクティビティにふさわしいです。保温性に重点が置かれています。

一方

2:冬用登山靴(ブーツ)は、凍傷の危険が予測される気候、且つ堅雪から氷化した雪面など目まぐるしく変化する山岳エリアで使います。最も重点が置かれるのは確実な雪面のグリップとアイゼン(クランポン)の確実な装着といった「命を守る機能」です。その基本機能に加えて「十分な保温性」が備わっています。

今回は防寒靴と冬用登山靴の基本的な製品コンセプトが違うということをご紹介しました。

これからの季節、日常だけでなく日本各地への観光でも大活躍する防寒靴(ブーツ)です。お気に入りを見つけにお店によってみてはいかがでしょうか。

次回は冬用登山靴の具体的な特徴と活躍する場面をご紹介します。 ⇒ こちら

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この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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