皆さんこんにちは。好日山荘・池袋西口店の高野です。
海外トレッキング連載企画第2回。「マナスルサーキット」トレッキング前編となります。
マナスルを中心にその周りを一周する約2週間のトレッキングルート「マナスルサーキット」での情報をお伝えしていきます!
第2回 「マナスルサーキット」トレッキング 前編
1 「マナスルサーキット」コース概要
今回はマナスルサーキットと呼ばれる世界第八位の高峰マナスル(8163m)を中心に周回するトレッキングルートを歩きました。
ネパールのトレッキングルートとしてはややマイナーな部類に入りますが、近年整備が進んでロッジなども増えており、エベレスト街道やアンナプルナサーキットなどの人気ルートを歩いたトレッカーが来ている印象がありました。
マナスルは日本人が初登頂した8000m峰で、日本人にはなじみの深い山となります。
トレッキングルートのポイントは標高が5000mを超える「ラルキャ・ラ」と呼ばれる峠越えでしょう。スタート地点の標高は低いため、気温の寒暖差にも注意が必要です。
2 行程表
行程表のコースタイムは実働時間の目安です。
トレッキング中の昼食はロッジで食べることが多く、料理の提供まで一時間近くかかることもザラです。その時間も計算して計画を立てる必要があります。
また、コースタイムや歩く距離だけではなく、一日の高低差も考慮する必要があります。体が高所に順応していない場合、2500m以上の宿泊地に行く際は、高山病予防のため一日の高低差を500m~800m程度に抑えることをお勧めします。
3 カトマンズの様子
カトマンズは外国人旅者も戻り、コロナ前の活気を取り戻しており、旅行会社やホテル、飲食店などは通常通り営業していました。
物価はネパールも上がっておりますが、飲食店に関しては、外国人向けのやや高級な飲食店の価格=日本の庶民店の価格、といった感じです。
日本食はもちろん中華、インド、イタリアンなどなんでもありますが、トレッキング出発前は食べ過ぎないように注意したいところです。私はトレッキング後に食べ過ぎておなかを下してしまいました…。
買い出しなどは大型のスーパーマーケットに行けば基本的には何でもそろいますし、登山用品もタメル地区に行けば一通りそろえることができます。中には粗悪品もありますので注意が必要です。デパートなどに行けば日本の調味料などもありますので、不便に感じることはなかったです。
4 ネパールの携帯電話の通信状況
カトマンズのホテルやカフェなどではフリーWi-Fiが使用できるので、不便を感じることはありません。トレッキング中もほとんどのロッジで有料のWi-Fi(300~500ルピー)が使用できますが、非常に不安定で、通信速度も遅いので、あまり期待はしないほうがよいでしょう。
どうしても通信手段を確保したい場合は、現地通信会社のSIMカードを購入するとよいでしょう。ネパールは「NTC(ネパールテレコム)」と「Ncell」という通信会社があります。
「NTC(ネパールテレコム)」は通信速度が遅く、都市部などでも動画視聴などは難しいことが多いですが、山間部でも電波が入ることが多く、トレッキング中に連絡手段を確保したい場合はおすすめです。
「Ncell」は都市部や比較的人口の多い街で通信速度が速いサービスを受けられるのが特徴です。ただし山間部に入るとパッタリ電波が途切れますので、個人的にはトレッキングに行くなら「NTC」がおすすめです。現地ポーターもほとんどが「NTC」でした。
5 行動記録 前編 3/20 ~ 5/10
3/20 成田空港(11:45) ~ カトマンズ(17:15) 空路にて移動
近年、成田からカトマンズ行の直行便は就航され、東京からでも乗り継ぎなしで行けるようになりました。出発は平日の昼間だったにもかかわらず、ほぼ満席でした。乗客はネパール人が6~7割、残りが日本人でした。
カトマンズに到着すると季節外れの雨。空港で携帯電話のsimカードを購入。迎えに来ていた現地旅行会社のガイドと合流して会社に向かいました。打ち合わせをして、ホテルまで送ってもらい、夕食はタメルの人気イタリアン「FIRE&ICE」。おすすめです。
3/21~3/23 カトマンズ 登山のための準備
登山装備の確認や食糧の買い出し、パッキング、GPSや衛星電話等の通信テスト、ブリーフィングなど意外と登山前はやることが多いです。
3/24 晴れ カトマンズ(6:30)~マチャコーラ(14:00) へ移動
チャーターしたバス1台で出発。カトマンズの渋滞を早めに抜けることができたので、順調に進むことができました。日本同様、朝と夕方はラッシュとなります。
10時に昼食のダルバートを食べました。ここから昼食はダルバートが基本となります。ダルバートはお代わり自由、味も素朴なので安心して食べることができるローカルフードです。長時間バスに揺られようやくマチャコーラに到着。
今日の宿泊地、「マチャコーラ」は、マチャが魚、コーラは川。「魚の川」という意味でおいしい魚が採れるらしい。バスで荷物を下ろしているとスコールが降ってきました。ホテルには多くのトレッカーで、賑わっていた。
3/25 晴れ時々雨 マチャコーラ(8:00) ~ ジャガット(15:30)へ移動
ジープでジャガットまで入れると言われて少し待機していましたが、昨晩の雨で道がぬかるみ、車での移動は危険が高いとのことでやはり歩いて行くことに。
スタートからしばらくはアップダウンのない広くて歩きやすいダート道を快適に進みます。3時間ほど歩いたあたりで、大きな吊り橋を渡り、左岸へ移ります。11時にドハンに到着。ここで昼食をとり12時に出発。ここからは旧道で、車道は新しくできた道だそうです。
この辺りはカトマンズよりも標高が低く、日中は非常に暑い。次第にアップダウンがある道となり、一旦、川床まで下り、広い河原を歩きました。ここで雨が降ってきたので雨具を着用。
15時に茶屋で一服し、ジャガットが見えてから30分で到着。
結局、ポーター達は車で移動できたようで、先にロッジに到着していた。どうやら車だと1時間半で着くらしい。車が絶対よかった。
3/26 晴れ→曇り ジャガット(7:00)~ダン(16:00)
今日は快晴。ここから登山隊の荷物はロバが運び、ロバはサマまで先に行くことになりました。
工事中の広いダート道を2時間ほど歩き、左岸への大きな吊り橋を渡とひと登りでフェリムに到着します。比較的大きな村で綺麗なロッジもたくさんありました。ツーリストチェックポイントのため、15分程滞在。
その後、40分程歩いて10時半にEkieBhattiに到着し、少し早めの昼食。水も豊富で雰囲気の良い村でした。ここまでは渓谷沿いで岩と土の道でしたが、次第に木々が出てきて、ランやシャクナゲがきれいでした。このあたりまで来ると荷物運搬はロバ。何度もすれ違いました。
立派なトラス橋を渡るとすぐにダンに到着。ダンで泊まったホテルは充電やWi-Fi環境がありませんでしたが、素朴な雰囲気が個人的には気に入りました。
3/27 晴れ→曇り ダン(7:00)~ナムル(15:30)
朝は快晴。今日も行程が長く谷間の道をひたすら歩きます。右手にガネッシュヒマールの山々が見えて俄然気分が上がってきます。ガップに10:55に到着し、いつも通りダルバートを注文。ダルバートが出来るまでの間、あまりの日差しの強さにポーター達と水浴びをしました。
少しのんびりと滞在して12:20ガップを出発。標高が2000mを超えると風が冷たく感じるようになってきました。宿泊地のナムルの少し下の村ではリンゴの木が植えられており、きれいなロッジが建設中でした。リンゴで村おこしを試みているようで、無農薬栽培のリンゴを頂きました。ここにきて生のフルーツは非常にありがたかったです。
ナムルに到着すると驚くほど立派なロッジがいきなり出現。部屋もきれいで、食堂も立派。昨晩泊まったロッジとの差がすごい。夜は一気に寒さを感じるようになり、夕方からはダンジャケット、ダウンパンツを着用しました。
3/28 晴れ ナムル(8:00)~ロー(11:50)
今日は行程が短いため、1時間朝食を遅らせてゆっくり出発。ナムルからローを飛ばして一気にサマまで行くことも可能ですが、そうなると標高差が1000m近くなってしまうので焦らず刻んでいくことにしました。途中のリヒという村には5m以上はあろうかという大きなマニ車がありました。
谷間からマナスルが正目に見えてくるとローまですぐです。
ローから谷が広がり景色が開けてくるようになります。午後になると谷から吹き上げる風が強まります。ロッジのテラスからはプンゲン氷河側のマナスルがよく見えました。
3/29 晴れ→曇り ロー(7:50)~サマ(12:00)
今日はサマまで約3時間半の行程。高度に体を慣らすようにゆっくりと歩きます。ローから見える高台にある寺院は、ラマたちの学校をかねているようで大きくて立派なつくりでした。
歩きやすい道をゆっくりと歩き、2時間ほどでひらけたショーの町に到着。
眼前にはマナスルがそびえ立っており、プンゲン氷河への分岐もありました。後日プンゲン氷河に入り、プンゲンゴンパ(寺院)まで歩きましたが、美しい湿原から未踏のマナスル東壁を見上げることができる素晴らしい場所でした。吊り橋を何度か渡るとひらけたサマに到着。ホテルは7年前に訪れた時と同じホテルでしたが増築して立派になっていました。
3/30~5/10 マナスルへの登山期間
マナスルの登山ではサマから1日かけてベースキャンプに入り、そこから本格的な登山活動になります。基本的に登山活動が終わるまで、ベースキャンプから降りることはありませんが、今回は天候が悪かったこともあり、登山活動中も一定期間天候の回復が見込めない場合はサマに下りて休養日を作りました。そのためサマのホテルには合計で10日間以上は滞在させてもらいました。結果的には登頂できませんでしたが、滞在中は裏の小屋を使わせてもらったり、自炊させてもらったりと、ホテルの方々には便宜を図っていただきました。
次回は「マナスルサーキット」後編のトレッキングの様子についてお話します。お楽しみに!
この記事を書いたのは「高野 優 ガイド」
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