高野山をじっくり
2015年(平成27年)で、開創1200年を迎えた世界遺産の高野山。弘法大師空海が密教の道場として開山したこの地を私が尋ねたのは、梅が見頃を迎えた3月半ば。関西圏からであれば、ワンデイトリップでも十分に楽しめるのですが、今回はしっかりじっくり楽しむ、そして健康的にたくさん歩こうという事で2日間かけて高野山だけを「ちょい旅」してきました。
必ず押さえておきたいスポットから
高野山といえば「一山境内地」であり、高野山全体がお寺。見所が沢山でお寺もその数117寺。ある程度の優先順位と時間配分を決めておかないと、旅の後半で焦ってしまう事になりかねません。今回は2日間あるとはいえ、やはり初日の到着後は「訪問マスト」とも言えるスポットから巡っていきます。
電車、ケーブルカー、バスと乗り継いで、金剛峯寺前でバスを降車した時には「六時の鐘」の鐘の音が心地よく響いていました。高野山はどこか喧騒から切り離された場所であるかのよう。そんな第一印象です。そんな中、先ずは今回の取材・撮影の承認をいただいた金剛峯寺の宗務総長公室にご挨拶。そこから奥之院へと向かいます。
高野山で“必ず訪れるべき3大スポット”は「金剛峯寺」「壇上伽藍」そしてこの「奥之院」とも言われています。
歩いて巡る楽しみ
高野山内では各スポットを効率よく巡れるようにバスが走っていますが、私はしっかり歩く事もこの旅の目的としている為「どうしても」の場合以外は徒歩での移動。金剛峯寺から奥之院へは舗装路を歩きながら、その途中にあるお寺やお店などもチェック。「ここは入ってみたい」「気になるな」というお寺はマップ(お寺の名前が入ったマップは、金剛峯寺のホームページからもダウンロードできます)に印をつけておき、今日の終わりに時間があれば、もしくは明日訪問しようという事に。また途上にあるお店もバスからだと店内の様子が分かりにくかったりしますが、徒歩での移動だとそれぞれのお店の商品や展示物をしっかり見る事が出来たり、食べ物の美味しそうな匂いや、この季節なら道端に咲く花やその香りを楽しんだりと、いろんな恩恵を「足で稼ぐ」感覚です。でも寄り道が多くならないよう、最初に決めた優先順位と時間配分を気にしながら行動します。
ただただ、圧倒されます
奥之院の御廟は空海が入定し今でも瞑想をされている、と言われる場所。灯籠堂ではその空気感に背筋が伸びる感覚に。タイミング良く廻向(読経供養)の最中、しばし心落ち着く時間に。今回は見る事が出来なかった「生身供」を次回訪れる際には見ようと思いながら、来た道を一の橋へと戻り、引き続き徒歩で壇上伽藍へと向かいます。
壇上伽藍とはお大師さまが開創の際に、最初に整備した場所で密教思想に基づいた塔と堂が建立されている場所。ここには多くのスポットがありますが、まずは金堂と大塔から拝観。内部の撮影は一切NG。写真に残す事を考えるよりも実際に自分の目で見て、その場で何を感じるかが肝心かなと思います。是非皆さんにもその場に訪れて体感していただきたいです。
その後は御社を見学し、「六角経蔵」を一人で回せるか試してみたり(回せましたが、結構力が要ります。女性や年配の方が回せないのを少しお手伝いもしてきました)、「三鈷の松」の落ち葉の中に三葉が無いか探していると、清掃の方が落ち葉掃きの作業中でごっそり落ち葉を持って行かれたりと、壇上伽藍を堪能(?)し、そのまま金剛峯寺へと移動します。
3大スポット制覇、そして。
金剛峯寺の内部も盛りだくさん。美しい襖絵や蟠龍庭、さらに意外と(?)興味深い台所など、しっかり時間をかけて拝観したいところです。昼食を取る事も忘れて”3大スポット”をしっかり見学&散策(歩き)、夕方までまだもう少し散策をしたいので、ここでエネルギー補給を。高野山銘菓「みろく石」でも有名な「かさ國」さんで、昔から高野山参拝者が食べている「焼き餅」を始め、和菓子”勝手に3種盛り”を頂きました。甘い物3つをぺろり。脳も身体も糖分を欲していたようです。
宿坊ならではの体験を。
エネルギーを補給完了したら、今度は最西端の「大門」へ。
意外とここからの眺めがよく山並みの風景も楽しんだら、これまた歩いて宿坊へ移動。お世話になるお寺は薩摩島津家の菩提寺との事。部屋に荷物を置き、休憩・・・とはなりません。宿坊ならではの体験を立て続けに。まずは寺内の道場で阿字観体験です。
禅体験は過去に参加した事があったのですが、阿字観と坐禅では半跏座だと足の組み方が違う事、手の組み方も逆という事を教わり、壁にある梵字の「阿」を半目で見つめ「阿」の声で念ずる、という流れで実修しました。日常の生活にはない静かで集中した時間でした。
さらに阿字観のあとは部屋で写経に取り組みます。「延暦寺で写経を体験したスタッフには負けまい(詳しくはこちら)」(ご存知の通り、写経は競争ではなく自己の修行です)と勝手に意気込んで取り組みましたが、途中からそんな事は忘れて、没頭してしまいました。
そして、高野山で食べる物といえば「精進料理」を夕食として頂く事に。所謂「部屋食」ですが、お膳は畳の上に置かれます。それを正座で黙々といただきます。味もしっかりついており、普通の食事と同じく美味しく頂きました。個人的には“飛竜頭”がベストメニューでした。
夜ならではの体験
日帰りでも行ける高野山で泊まったからこそ可能な事、まずは“夜編”「夜の奥ノ院を歩く」です。今朝一番に訪れた奥ノ院に再び訪問。先程触れた奥ノ院は一の橋から御廟まで約2kmの道のりには20万基を超える墓石や記念碑、慰霊碑が所狭しと並びます。灯篭が並んではいるものの基本的には暗い場所。少し恐さを感じそうなシチュエーションですが、神聖な場所だからか、はたまたツアーやグループで同じように歩く方がいるからなのか、「怖さ」みたいなものは微塵も感じず、むしろ神聖な空気に囲まれている感覚に。
燈籠堂まで行く事は可能ですが、扉は閉ざされているので内部には入れません。グルっとまわって宿坊まで再び歩いて戻り、この日は終了。
一日で2万2千歩ほどの歩行で、3,500kcalを消費。よく歩きました。
朝ならではの体験
吐く息も白い気温感の早朝。手を洗い、口をゆすいで身を清めたら本堂での勤行に参加。僧侶の読経を聞き焼香をする、朝からこんな体験はめったに出来ない事。貴重な時間は続きます。 勤行後はお寺のそばにある毘沙門堂での護摩祈祷を見学します。僧侶の無駄のない決まった動きをする祈祷の所作に見入り、小さな種火から祈祷に伴い大きく燃え上がっていく炎を無心で見る時間。護摩行は「朝ならでは」とは言えませんが、朝一番に見る事自体がレアな体験かも。この二つが泊まったからこそ可能な事”朝編”でした。
昨夜と今朝の体験が今回の旅のハイライト。日帰りでのちょい旅だと、見るべき名所を巡る時間を取った上で「さらに」の体験は、なかなか難しいかなと思います。
ハイライトはご紹介しましたが、旅はまだ続きます。もうしばらくお付き合いを!
くまなく見る
宿坊で朝食をいただき出発。宿坊での受け付けの方が一般家庭の生まれで出家されて高野山に来られた、との事。ご出身が神戸という事でローカル談義を楽しんで宿坊を後に。
昨日訪れた「3大スポット」以外の見どころを、今日もしっかりウォーキングで巡ります。今日は女人堂、徳川家霊台、金剛三昧院と巡ります。どこも見どころなのは勿論ですが、ここでは今回訪れたその他の場所から二か所を代表してご紹介します。
一つ目。女人堂へ歩いている途中に見つけた名物「笹巻あんぷ」の看板。そこから少し入った所にある「麩善」さん。こちらで「笹巻あんぷ」を購入。刈萱堂の前にお店が以前はあったそう。中心部から多少距離がありますが歩いてでも行く価値ありです。一個からでも購入できるので、ぜひお試しを。*私はおやつとして休憩中に頂きました。
二つ目。こちらもいくつか訪れたお寺の一つ「浪切不動尊別当南院」です。お大師様が遭遇した海難から救ったとされる浪切不動明王。個人的に海での災難に遭わぬよう、また世間の波風に打ち勝てるように、と参拝しました。
時間に余裕があるので
いよいよ旅もラスト。一通り予定していた場所を全て巡ったところで、今日はちゃんとお昼ごはんをいただきます。
高野山といえば精進料理の一つ「ごま豆腐」が有名ですが、有名百貨店でもごま豆腐を販売している「角濱」さんの飲食部で、様々な味付けのごま豆腐を楽しめる御膳をいただきます。ごま豆腐に限らず、豆腐好きの私には至福の時間。沢山食べても罪悪感をあまり感じないメニューか?などと思いながら完食。大満足です。
食後、少し時間がある中で私が最後に「おかわり」したのは、壇上伽藍でした。「今日こそは三鈷の松の落ち葉を探すぞ」と意気込むものの、今日も落ち葉は綺麗に掃かれた後でした・・・。
(参考までに2日目の高野山での歩数2万3千歩は、消費カロリーは約3,500kcalでした。2日間変わらぬ運動量)
如何でしたか?近場ながらもスケジュールを二日間取り、余裕をもって見たい所は全て訪れ、体験したい物も漏れなく体験する事が出来た今回のちょい旅。
皆さんも、混雑や行列を避けるためにも「時間を空けて後からまた来ればいいか」、と心の余裕を持てるプランでちょい旅をしてみませんか?
後日談
今回、高野山を訪れる前に色々調べていると神戸市の「須磨寺」(上野山福祥寺)が「真言宗十八本山」の一つである事を知り、恐らく30年以上ぶりに訪れた事は言うまでもありません。
当マガジンコラムの”時差登山”で訪れた宝塚の「中山寺」、”体調コントロールハイキング@生駒山”で訪れた「宝山寺」もその一つ。十八本山は善通寺(香川県)を除けば全て関西地区にあります。これを機に改めて全てを巡ってみようかな、と考えています。今回の「ちょい旅」が新たな「ちょい旅」に繋がりました。
*取材時は感染症予防対策を講じ、密集をさけての行動を徹底しております。
好日山荘マガジンライター:菰下 了
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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