2年ぶりの富士山開山
2021年、富士山が開山しました!2年ぶりになるこの時をたくさんの方が待っていたことでしょう。
今回はじめての富士登山を体験する私が選んだルートは、山梨県富士吉田市にある富士吉田口の登山道。そして、老若男女どなたでも登りやすく、昔の富士山信仰の名残を感じながら自然のなかを歩くことができる一合目から五合目を登ってきた様子をお伝えします。
富士吉田市へ
東京の八王子駅から2019年に新しく完成した電車「富士回遊」で乗り換えなしで富士山駅に到着。富士吉田登山口への最寄駅となる富士山駅は今年誕生10周年です。
富士山駅から3分ほど歩いたところにある金鳥居。富士山信仰の世界に入る門と考えられています。
北口本宮冨士浅間神社
翌日の登山の前に、立ち寄りたい場所「北口本宮冨士浅間神社」。鳥居をくぐり、長い参道をすすみます。以前訪れた時と変わりない神聖な空気が流れていました。
今回の旅の安全祈願のお詣りをすませ、拝殿の右奥にある富士登山道吉田口の起点へ向かいます。
ひっそりとした場所に冨士北口登山本道と記した石柱がありました。
「祖霊社」のお社のうしろに長く続く杉林とともに道がありました。昔はここからがスタートしていたと思うと、特別な空気を感じられ今回の登山がさらに楽しみになってきました。翌日はここから先へすすんだ「馬返し」からスタートします。
一合目「馬返し」からスタート
登山の日の天候は曇り。富士山はまだ雲隠れのなか、富士山駅近くから約40分かけて一合目「馬返し」1450mへタクシーで向かいました。途中からは森のなかを通る狭い道をすすみます。
「馬返し」に到着。「馬返し」とは、道が険しくなり、馬を帰して徒歩に変わる地点だったことからつけられた名前。
タクシーの運転手さんにお願いして記念撮影。
いよいよ出発。駐車場に車を停めていた登り口入ってすぐの大文司屋の方に、「どこまで?」と聞かれ、五合目と答えた私に、「大丈夫大丈夫!余裕!」と心強い声をかけてくださり、ちょっと勇気づけられました。
馬返しの象徴的な石造鳥居。手前の両脇には合掌する猿の像が配置されています。
とてもかわいらしいお猿さん。富士山の伝説の一つに富士山が一夜にして湧き出たというものがあり、その年が庚申(かのえさる)の年であったことから猿が富士山の使いであるとされるようになりました。合掌。
鳥居をくぐって少し進むと、「富士山禊所」と記した背の高い石碑がありました。神聖な領域へここから更に入山していく前に禊(みそぎ)を行った場所として、大正年間に建てられたそうです。
一合目 鈴原社
16世紀にはここに社があったことが分かっており、1840年代に建てられた建物が現存しています。富士山の神様、浅間大菩薩の本地仏とされる大日如来が奉られ、以前は像も安置されていましたが、現在富士吉田市の上吉田の御師のお宅に安置されています。登山道はほとんど木陰で気持ちよく歩くことができました。昔からある石垣には苔がいっぱい。足もとにも歴史を見つけました。どなたかのいつかのお賽銭?お釣りの古銭とガラスの破片。
一合五勺 レッキス
「レッキス」というカルピスのような飲料の名前のついた昭和初期に建てられた山小屋跡です。ひらけていますが、当時を感じさせるものはなく、この吉田口の登山道が主要でにぎわっていた頃は遠い昔だったのかな、と感じました。
二合目 御室浅間神社
二合目には富士御室(小室)浅間神社が祀られています。1612年にはあったとされる本殿は移築され残された拝殿も朽ちかけてしまっていましたが、奥に小さなお社が残っています。昔はこちらを「上浅間」、麓の北口本宮冨士浅間神社を「下浅間」と呼んだそうです。
二合目から少し歩くと、橋がありました。「御室浅間橋」橋が掛けられた場所には、溶岩がむき出しになっていて、富士山のスケールの大きさを感じます。
歩きはじめてしばらくしてから、ずっと気になっていた登山道のところどころにある木の枠に石が詰まって置かれた場所があります。これは「浸透桝」といい、雨などが降って水が流れたときに登山道を侵食しないように水を地面に浸み込ませるためのものだそう。富士山は噴火によりできた山で、削れやすい土壌を守る工夫とのこと。
他にも、登山道はシーズンに合わせて新しい丸太などできれいに整備されている箇所がたくさんありました。登山道を整備していただいているおかげで安心して歩くことができます。感謝です。
何?いっぱい棒が立っている!!と思ったら、三合目の手前で細尾野林道との交差点になり、自転車やバイクなどが入らないように設置されている場所でした。林道には5月から10月まで仮設トイレが設置されています。
三合目 中食堂(ちゅうじきどう)
麓から登山をはじめて昼食をとるころに到着するため、「中食堂(ちゅうじきどう)」または「三軒茶屋」と呼ばれた小屋があった開けた場所。見晴らしのある場所だったはずが、少し木が大きくなって、この日は雲がありましたことも重なってこのような景色でしたが、大勢の昔の人も同じように見たことでしょう。
三合目には江戸時代から続いていた見晴小屋など他の小屋もあったそうで、案内板の写真からは賑やかだったことがうかがえます。木にぶら下がるエアプランツのようなコケ。水滴がキラキラ。
四合目 大黒小屋(跡)
いよいよ2,000mを越えて、四合目に到着。大黒像が祀ってあったことから、大黒小屋や大黒堂と呼ばれていたそう。
大黒小屋跡を過ぎて、ふと見えた麓の景色に登ってきた実感が生まれて、うれしくなります。
富士山でもこの子に出会えるとは!「ギンリョウソウ」いつもの仲間に出会えたような・・・ほっとしました。
四合五勺 御在石浅間神社
御座石浅間神社の社と井上小屋跡が横に並んで一体となった建物。麓から五合目までの小屋跡としては、比較的きれいに現存しています。建物跡の左側には大きな岩壁があり、この地が神が依りつく石という意味の御座石と戦国時代には言われ、冨士講が奉納した石碑や岩に掘り込まれた文字などから信仰のようすを目にすることができます。
森のなかの緩やかなのぼりの石畳み。いつの時代の人もこの道を歩いたかと考えるとタイムスリップした気分にもなります。少し日が差し明るくなってこのような景色もそろそろ終わりが近づいてきているのでしょうか。名残惜しくなってきました。
中宮
いよいよ五合目の文字を目にしました。
富士山の中腹に祀られた社「中宮三社」があったことから、そのように呼称されていました。ここから先の一帯は「天地の境」とも呼ばれる領域。富士山を三区分する草山・木山・焼山のうち、木山と焼山の境界にあたるとされています。江戸時代には山役銭(入山料)122文を徴収していた中宮役場として山小屋がいくつか点在。後には麓の金鳥居で前払いすることになり、その証明として交付された登山切手を改める場所となりました。入山料は登山前の御師によるご祈祷代や、杖の代金、役所堂での護摩代や九合目にあった石垣の橋の修繕費などの費用に充てられていました。
中宮の山小屋のひとつたばこ屋跡の案内板。今の登山装備とは違う様子がうかがえますが、富士山にのぼりたい気持ちは一緒です。こちらも中宮の山小屋「不動小屋」の跡。広い跡地の脇には不動明王が祀られた富士山五合目不動神社の小さな社がありました。古くは、これより上に小屋を建てることは許されなかったといいます。
五合目
見上げると、見覚えのある棒が待ってくれていました。五合目の林道と交差します。
この日は滝沢林道が通行止め。もう少し登山道を歩きます。標高2,305m!
佐藤小屋
佐藤小屋に到着しました!今回の五合目登山のひとつのゴール!
ここから富士スバルラインの五合目まで歩いて15時台のバスでの下山の計画を小屋のお姉さんに話すと、まだ時間に余裕があるから、休憩していって~よく登ってきたね~とねぎらってもらってひと安心。ちょうど雲が晴れて麓、湖も見えて、一息つけました。
高度があがった時のお約束!袋がプクプク!チップのための小銭はお忘れなく。綺麗に使われているトイレをお借りして次のゴールへ向けて出発!
富士山の割れ目に遭遇。誰かの仕業?色んな種類の石が集合していました。ただただ続くシンプルな道。植物たちが迎えてくれます。
いよいよゴールしました!
今回私が歩いた吉田口馬返しから五合目は、5月から10月が登山可能時期。時期や登山道、交通機関などよく調べて計画してください。ゆっくりすすんでいくことを忘れずに登れば高山登山初挑戦でも充分楽しめます。富士登山といえば、五合目からが取り上げられることが多いですが、富士登山の歴史を知っておくのもおすすめ。富士山&登山好きな方にはぜひ挑戦してもらいたいルートです。
参考:富士吉田市富士登山モデルルート https://fujiyoshida.net/course/290
取材日:2021年7月16日 リフレッシュして健康維持。感染対策をしっかりした山登りを心がけましょう。
黙々と登る私に元気をくれたお花たち
富士スバルライン五合目
ほっとするまもなく、バスの時間までにしておきたいことがありました。
①富士山保全協力金 木の札は納めた証。ザックにつけておきましょう。②登山靴をゴシゴシ。土などを落としましょう。外来植物侵入予防のため。ぬかりなく、です。今日歩いた吉田口登山道の入口にも必要かも。③富士山小御嶽神社へ参拝 お土産物屋さんの建物の間の鳥居を進みましょう。④5合目から記念に郵便を出そう!かわいい富士山の郵便はが木!いつもテレビなどで見たことのある毎年にぎわう広場にいるのが不思議な気分。この日の富士山駅への最終バスに乗り無事に下山しました。
黙々と登る私に元気をくれたお花たち
登山・旅の前に要チェック
以前、好日山荘マガジンで紹介した富士山をめぐる旅をしてから、より富士山が好きになりました。富士山に登ることができなかった2020年、山梨県富士吉田市のサイト「フジサンノフモト」という富士山への愛が詰まったコンテンツに触れ、たくさんの魅力的な写真やコラムに魅了されました。登ること以外に、富士吉田市への興味がより広がりとにかく行きたくなってしまいました。ぜひ一度見てもらいたいすてきなことがたくさん見つかるサイトです。
■富士吉田市観光観光ガイド https://fujiyoshida.net/
■フジサンノフモト https://fujisannofumoto.com/
富士山駅で情報収集
■富士吉田市観光案内所
旅先の鉄則、現地に着いたら生の情報収集。富士山駅からすぐの観光案内所へお立ち寄り。富士登山のこと、まちなかののことも相談できる笑顔の素敵な方迎えてくれます。
こちらで登頂した写真を見せると、登山認定書をもらえます!! 詳細はこちらから https://fujiyoshida.net/feature/fujisan/index
■期間限定 好日山荘Qスタ店
富士山駅直結の商業施設のなかに期間限定で好日山荘のショップが期間限定でオープン。登山の前に持ち物を最終チェック、強い味方です。
Qスタの6階では、富士山を見ることができます。障害物一切なし!下山してきたあとには富士山がようやく姿をあらわしてくれました。
今回の登山のお供
今回のルートはずっと登りということもあり、暑さと外出自粛で体力の自信がなかった私は、新しい相棒のトレッキングポールを連れて行きました。こちらがあったおかげで足の疲れの軽減、体力の消耗も抑えられ次の日の観光も元気に楽しめました。軽くて折りたたみ収納可能なタイプがおすすめです。
「ハタオリマチ」富士吉田での欲張りなちょい旅は後編でお楽しみください!
#ちょい旅 富士登山一合目から五合目と富士吉田ハタオリマチ~後編~
文&編集&写真●関本 亜紀
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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