秋といえば「紅葉」、ですが
秋から冬の頭にかけて、ピークを迎える自然現象といえば「紅葉」ですが、見る事が出来る場所が限られてはいるものの、同じ時期に見頃となる「雲海」も外せません。
アルプスなど標高の高い山に登った時に雲海を楽しめる事は多いですが、「雲海を見に行く」という目的を持って登るというよりは、登山の副産物的に見て楽しめる、といった感じでしょうか。
今回は雲海の出現確率を予測しながら、標高の低い山を「雲海を見に行く」事をメインテーマとしたハイキングです。
雲海が引くとこんな感じです。この下3枚目の画像とほぼ同じ場所から。
山城と雲海
雲海が発生するには気象的、地形的な条件が必須ですが、地形的条件を考えた時、前述のような標高の高い山に登らずとも、低い山から雲海を眺めて楽しめる場所は探すと結構あるものです。今回は神戸から少し足を伸ばして岡山県の臥牛山(大松山・小松山・天神丸山・前山、4座の総称)へ。ここには「本丸が現存する12城」の一つ、備中松山城があり雲海シーズンには雲海の中に浮かぶ「天空の城」となる事でも有名です。
標高は500mに満たない事もあり、ハイキングとして丁度良い歩き応え。雲海を見るための展望台があり、お城という観光スポットがあるので、ある程度の高さまでは車でのアクセスが可能で雲海シーズンには多くの方が訪れるスポットです。(自家用車でのアクセスは道路の交通規制や駐車場の開放状況など、事前の確認を)
暗いうちからの行動
一般的に雲海が発生する時間帯は、夜明け前から早朝。日の出時間も遅くなる秋口ですと、周囲は真っ暗な状況から山を登る必要があります。
登山口までは街灯がありますが、登山口から先は樹林帯なので光はなく10m先が見辛い状態。登山口でヘッドランプのスイッチを入れて歩きはじめます。スタート時の気温が6℃ほど、指先や皮膚の薄い首元から寒さを感じます。グローブとネックゲイターも必携。なぜなら歩いている最中の対策としてはもちろんの事、雲海鑑賞時は「じっとしている」から、です。勿論ダウンやフリース、そしてその上には風を遮るジャケットの着用は必須です。
(この日も車で展望台に来られた方の多くは「寒い」を連呼しておりました)
あっという間に国指定重要文化財に到着
登山道は中国自然歩道の一部でもあるため、道幅は広く良く整備されておりとても歩きやすいコース。ふいご峠の茶屋と駐車場からの上部は、お城観光用の道らしく舗装路となります。
臥牛山一帯は猿の生息地としても有名。どこで遭遇できるのか、楽しみにしながら歩きます。
ゆっくり歩いて1時間半程度で、備中松山城の大手門跡まで到着。あっという間です。登り始めた太陽の光が色づき始めの城内の紅葉に照り付けて、鮮やかな色彩が目に飛び込みます。 そこから二の丸に上がると眼下には雲海が。
山々の間を埋めるように雲海が広がっています。朝日に照らされ、色の変化が刻一刻と変わっていく模様を楽しみます。
この時は感動して、そこまで思考が働かなかったのですがこの二の丸直下よりさらに下に雲海が見えるという事は、すなわち・・・。
それはさておき、この備中松山城の東に位置する尾根上の雲海展望台へと歩みを進めます。
お城の先に出合いあり
天神の丸、相畑城戸跡、大松山城跡をめぐり、大池と吊り橋を超えて行くのですが、本丸すぐそばの二重櫓の先へ進んだ所から何やら動物の声が騒がしくなり始めました。そうです、猿の群れです。大池を通過する時に猿の大群と遭遇。猿と出会った時の掟「目を合わせない」が出来ないぐらい、どこを見ても周囲には猿、さる、サルです。
こちらが檻に入っているかの如く、サルに囲まれてしまいました。猿も人には慣れたもので、威嚇してきたり危害をくわえてきたりするような事はありませんでした。大池~吊り橋間は猿との間合いに気を付けながら行動、吊り橋の先の管理用の林道と車道を抜ければ、雲海展望台に到着です。
天空の城は・・・
雲海シーズンという事もあり、展望台には多くの先客が。まずは展望台の最上部に登ります。そこからは右に備中松山城が聳え、臥牛山と同じぐらいの高さの山が正面奥の方まで点々とあり、その山々の谷を埋める雲海を見渡す事ができます。
今回はこんな感じでした、
お城に寄ってみると・・・
雲海に浮かぶお城は見れませんでしたが、青空と深い緑、ところどころの紅葉そして白い雲海のコントラストが美しい風景を作り出していました。
少しずつ雲海が動いているので、同じ景色は二つとありません。いつまでも眺めていられます。
で、ここで気づいたのです。そういえばお城の二の丸直下の視界は良好だったという事を。即ちその時点でお城まわりには雲海がなかったという事だったのです・・・。
望遠レンズを構える写真愛好家から親子連れまで、幅広い方が見学していましたがやはり写真愛好家の方は、ヘビーなダウンジャケットに防寒パンツ、ニット帽やイヤーマフなど、アウトドアアイテムで防寒装備は完璧です。
そんな中のお一人と話しが盛り上がって色々と情報交換をしたのですが、その方は夜明けの遥か前からカメラをセットして撮影していたものの、お城の下まで雲海がかかったのは暗い時間のほんのわずかの時間だった、との事。やはり自然現象を自分の思う通りに捉える事の難しさと、それをキャッチした時の喜びは「ひとしお」を再認識するのでした。
時間の経過とともに雲海は流れていきます。
お城とか城下町とか
気温が上がり太陽も高くなる時間、眼下に高梁市街が見えてくる雲海の引き際まで見届けたら展望台を後に。来た道を戻り、開門された備中松山城の天守閣を見学します。
余談ですが、戻り道では猿の声と藪の中を走り回る音、木々を飛び回る音は聞こえましたが、姿は見えませんでした(ちょっと残念)。
備中松山城には、朝から多くの見学者が訪れておりその人気ぶりを窺い知る事ができます。その人気の一つかもしれない猫城主「さんじゅーろー」がお出迎え。さんじゅーろーの周りには常に人が集まるのですが、日向でほぼ寝てました。マイペースで猫らしい・・・。
本丸と二重櫓の周りでは、紅葉が進んでおり建造物の白壁とのコントラストでよく映えます。
本丸入口の階段で、さんじゅーろーに見送ってもらいながら備中松山城をあとにし、朝と同じ道で下山します。
下山後は国指定名勝の小堀遠州作庭園を有する頼久寺にお邪魔したり、
城下町である高梁市を散策。武家屋敷を覗いたり、とちょっとした観光旅行を満喫しました。
ふと気が付くと、もうお昼もとうにすぎた時間。空を見ると早朝の雲海など微塵も感じさせない、秋としては日差しが強いぐらいの青空に。さすが「晴れの国おかやま」です。
秋らしいお出かけに「雲海ハント」を
如何でしたでしょうか。冒頭でも述べましたが秋の楽しみといえば「紅葉」が代表格ですが、それに加えて「雲海」目的のお出かけもお勧めです。今回のようにハイキングが楽しめる所もあれば、ロープウェイで登って雲海を楽しめるスポットなど、お好みのスタイルでアプローチして楽しめるところが全国にあります。
朝晩の気温差が大きく湿度が高い、無風で晴天の日が多くなるこの時期、雲海を狙って出かけてみてはいかがでしょうか。
*じっくり楽しむ為には防寒ウェアやアイテムは必須です。保温ボトルにあったかい飲み物を入れて持って行くのもお勧めです。
好日山荘マガジンライター:菰下 了
*取材時は感染症対策をとり、密集・密接を避けて行動をしております。
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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