皆さんこんにちは。好日山荘・池袋西口店の高野です。
好日山荘では2019年12月に導入した、『長期遠征等サポート休暇制度』という、世界中の遠征登山などにチャレンジする社員をサポートする制度があります。
今回『長期遠征等サポート休暇制度』を使用して、2023年3月末から5月末にかけて約2か月間、ネパールのマナスルへに行ってきました。
メインはマナスルへの登山ですが、その際に「マナスルサーキット」と呼ばれるマナスルを中心にその周りを一周する約2週間のトレッキングルートも歩きました。
今回は「マナスルサーキット」の情報も踏まえて、海外トレッキングに必要な情報を3回に分けて皆さんにお伝えしていきたいと思います。
海外へアプローチしたいと考えているお客様のご参考になれば幸いです。
~ネパール編~
第1回 準備編
1計画を立てる
「いつどこに行くか」。事前の情報収集が重要です。行きたい場所が決まっていれば、コンディションの良い時期を調べます。
または行く時期が決まっているのであれば、その期間に最適な地域を探します。トレッキングそのものの計画は日本と変わりません。
今回、私たちは行く場所がマナスルサーキットと決まっていたので、あとは春か秋(一般的に天候が安定する時期)に絞るだけでしたが、ほかのメンバーの都合で春になりました。
2016年にもマナスルサーキットを歩いているのですが、今回行ってみると以前はトレッキングルートだった場所に道路ができて、奥まで歩けて行程を短縮したり、村にロッジが増えていたり、物価が上がっていたりと。
特に発展著しい地域に行く場合は変化も大きいです。できる限り最新の情報を入手しましょう。古いガイドブックやネットの情報には注意が必要です。
2ガイドの手配
海外トレッキングとなると現地での言葉や文化が異なり、ホテルやロッジの手配、タクシーやバス、公共交通機関を使った移動、現地の人とのコミュニケーションなど、普段は苦労しない簡単な手続きもハードルがグッと上がります。
個人で時間に余裕がある場合などはそういった手続きも楽しみの一つと捉えるのも手です。
ネパールでトレッキングをする際、エリアによって「トレッキングパーミッション」と呼ばれる許可証が必要です。
マナスルサーキットはアンナプルナエリアとマナスルエリア、二つのエリアを通過する為、2つのパーミッションが必要です。
金額はそれぞれ数千円程度ですが、現地でネパール観光局などに出向き取得する必要があります。トレッキングルートにチェックポストが複数ある為、トレッキング中は許可証を常に携行しなければなりません。
こういった手続きも現地エージェントが行ってくれます。初めての国や山域に行くのであれば、旅行会社や現地エージェントを通してガイドを依頼すると安心感もぐっと高まりますし、時間の余裕も生まれます。
3保険に加入する
私は海外でクライミングや高所登山を行う際は、「海外登山保険」に加入しますが、通常の海外トレッキング(クライミングやピッケルアイゼンを使用しない)であれば、保険は「海外旅行保険」で賄えることがほとんどです。
私が保険を選ぶ際に気にかけているポイントは、「治療・救援費用(疾病・傷害治療費)」です。
保険会社にもよりますが、「治療費」は国によって大きく金額が異なります。
以前アメリカにクライミング行った際には、保証金額を高く設定しました。
クライミング仲間は骨折して治療費が数百万かかったとか…。
ある程度その国の保険制度を確認しておくことが必要です。
また「救援者費用」は、自力歩行困難となり、かつ車などが入れないような山岳エリアではヘリコプターなどでの救助となることがほとんどですので、救助で数十万円ないし、それ以上の費用がかかることもあります。
万が一に備えて保険の加入は必須です。
4装備を揃える
ここでは通常のトレッキング装備に加え、個人的に「あると便利だな」と感じた装備をご紹介します。
基本装備
①シューズ
実際に歩くトレッキングルートによって変化しますが、高低差が少ないルートであればミドルカットがオススメです。
軽量で足首の可動域が大きいので歩き易く感じられます。高低差のあるルート、宿泊を伴う場合はハイカットも選択肢に入れると良いでしょう。
シューズの捻じれや底からの突き上げが少ない分、不整地や疲労した際にも歩行時の安定感が上がります。今回私はミドルカットのシューズを使用しました。
②ザック
容量については宿泊を伴う場合は30L~40Lほど、日帰りのハイキングコースであれば20L前後で十分です。
ザックはウェストベルトが付いているモデルをお奨めします。ウェストベルトを使用する事で、肩の荷重を分散すると共に、行動中の荷物のブレを抑える事が出来ますので、疲労軽減につながります。
私はマナスル登山用と共用したので60Lのザックを使用しました。
③トレッキングポール
トレッキングポールを使用する事で、足腰の負担軽減してくれます。
また、足場の悪い登山道や不安定な斜面で転倒を予防する効果もある為、登りも下りも積極的に使用する事で長時間の行動でも体力を温存する事が出来ます。
ウェア
④高機能アンダーウエア
ファイントラックやミレーのアンダーウエアを着用することで、身体をドライに保ち汗冷えや低体温症のリスクを下げてくれます。
⑤ベースレイヤー
速乾素材のTシャツ、または長袖のもの。またウール素材のものは少し肌寒さを感じる時期にオススメです。天然素材の特徴として、防菌・防臭効果も備わっているため重宝します。
- 好日山荘のオススメ!
- ザ・ノース・フェイス/ショートスリーブGTDメランジクル―
- ザ・ノース・フェイス/エクスペディションドライドットクルー
- ザ・ノース・フェイス/エクスペディションドライドットジップハイ
- アイスブレーカー/200 オアシス ロングスリーブ クルー メンズ
⑥ミドルレイヤ―
ミドルレイヤ―(中間着)としてはフリースがオススメです。中厚手の物を選んでいただくと幅広い温度域に対応してくれます。私はフード付のフリースを好んで愛用しています。
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- ザ・ノース・フェイス/マウンテンバーサマイクロジャケット
⑦ダウンや化繊のインサレーションジャケット(サーマルレイヤー)
休憩中、山小屋滞在、また、万が一の危急時にダウンや化繊の「サーマルレイヤー」があると安心です。今回は薄手の化繊インサレーションと厚手のダウンを持参しました。
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化繊インサレーション
ダウンジャケット
⑧レインウエア上下
雨が降った時だけではなく、防寒や防風対策として着用することも多いです。
また、重ね着することで、ベースレイヤーやフリースが保持する暖かい空気を逃がさずさらに暖かくなるので温度調整としても重宝しますので、登山では必須です。
⑨トレッキングパンツ
3シーズン用のトレッキングパンツが使い易いと思います。気温が低くなることが想定される場合は、保温タイツを持参したり、レインウェアを着用して対応します。
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- ファイントラック/カミノパンツ
その他ウェア
⑩帽子・日焼け止め(紫外線対策)
国内でも対策は必要ですが、いつも以上に気を使う必要があります。私も日焼け止め、サングラス、つばの広いハットやアームカバーなどを持参しました。
特に残雪があるようなエリア、標高の高いエリアは紫外線が強く、日射によって体力を消耗しますので要注意です。
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帽子
日焼け止め
⑪グローブ・ビーニー(防寒対策)
今回は5000mの峠を超えるルートでしたので、薄手のインナーグローブとレイングローブの二つを持っていきました。
宿泊するロッジによっては建付けが悪い所もあります。隙間が多く、部屋の温度が外気とほとんど変わらない場所もありました。夜間は気温がグッと下がり、フードやビーニーを着けたまま寝る事もありました。
- 好日山荘のオススメ!
グローブ
ビーニー
⑫速乾タオル
宿泊を伴うトレッキングの場合はタオルに加えて、ファイントラックのナノハンカチ、もしくはナノタオルを付け加えるとさらに快適です。
濡らして拭くだけで皮脂・油を落としてくれますので、スッキリします。日本の山でも活躍します。
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- ファイントラック/ナノハンカチ
小物類
⑬ヘッドランプ
私は乾電池と充電池、どちらも使用出来る「ハイブリッドモデル」を好んで愛用しています。モバイルバッテリーを持参したりやロッジのコンセントが使用できれば充電できるので、予備の乾電池の数を減らせます。
今回、私は約2か月間の山行でしたが、乾電池は使用しませんでした。
※マナスル登山期間中はとメインと予備の充電池、合計2つをソーラーパネルで充電しました。
- 好日山荘のオススメ!
- ペツル/アクティック コア
⑭水筒
気温に応じて、保温ボトルが必要なのか、それとも常温ボトルだけでいいのか事前に調べておく必要があります。
今回は日数も長く、気温差が激しいので両方持参しました。ロッジによっては水も販売していますが、マイボトルは必須です。
⑮ファーストエイドキット
万が一負傷した際の応急処置に使用します。現場で対応できる処置は限られますが、最低限のアイテムは揃えておきましょう。私たちは個人装備ではなく、一緒に行く仲間との共同装備として、1個持参しました。
⑯トレッキングマップ
GPSと併用して使用します。仲間と計画を立てたり、ロッジなどで日々の行程やルート情報を共有するのには、やはり紙媒体があると便利です。
⑰ドライバッグ
衣類や電子機器を水濡れから守るためのナイロンバッグです。色々な大きさがありますので、用途によって使い分ける事ができます。
プラスアルファの装備
①インナーシーツ
寝袋や布団の内に重ねて使用する、薄いシーツです。軽量でコンパクトなため、ロッジに宿泊する場合に持参すると感染症対策になります。
防虫効果などがあるモデルもありますので、より快適に休息をとることが出来ますし、衛生的にも安心感が高まります。
②嗜好品
長期間の旅行で現地の味付けが口に合わなかったり、体調を崩したりした際に、フリーズドライのアルファ米やスープ、おつまみなどがあると、体調不良の時や疲れた際に、気分をリフレッシュできて、元気も出ます。
軽量でかさばらない物がよいでしょう。
③サンダル
ロッジでの宿泊時や町のホテルなどででもリラックスできます。これも軽量、コンパクトなものがよいでしょう。
- 好日山荘のオススメ!
- キーン/シャンティ
- テバ/メンズ オリジナル ユニバーサル アーバン
④薬品
怪我等の外傷の他、いつもとは異なる環境、食事などで体調を崩す事が想定されます。
薬品自体の重量はそれほど重くないので、いくつかピックアップして持参する事をお奨めします。
これまでの経験で比較的使用頻度が高かった薬品をご紹介します。
⑤モバイルバッテリー
携帯電話や充電式のヘッドランプなどの電子機器の充電に重宝します。軽量なものが一つあると便利です。
⑥パルスオキシメーター
パルスオキシメーターとは「血中酸素飽和度」と「心拍数」が計測できる小型の機械です。
高の高いエリアに行く場合、パルスオキシメーターがあると数値として客観的に確認できる為、日々の体調管理の目安になります。毎日の起床時に計測する事をお奨めします。
⑦GPS MAP66i
地図上で現在地を確認するだけであれば、スマホのアプリでも十分ですが、最新のGPSは携帯電話の電波が届かないような辺境地でも、衛星ネットワークを通して天気予報の取得、メールの送受信や位置情報の共有が可能です。
1台あると心強いアイテムです。
⑧電子はかり
空港での預け荷物や機内持ち込みの重量を計るのはもちろん、トレッキングで背負うバックパックの重量を計ります。
バックパックの重量は歩く速度や疲労度に直結します。海外トレッキングでは、心理的な不安から荷物が多くなりがちです。
普段からバックパックの重量を計って、自分が普段どのくらいの荷物を持って、どのくらいのスピードで歩いているのかを知っておくと現地でもどのくらいが自分の許容範囲なのかが分かります。
⑨浄水器
基本的に水は沸騰させてから飲用しますが、海外トレッカーの多くは浄水器を持参しています。
簡易的なもので構いませんので一つあると重宝します。ミネラルウォーター等も販売している小屋もありますが、場所によってはかなり古い商品もあるため避けた方が無難です。
- 好日山荘のオススメ!
- ソーヤー/ソーヤー ミニ
ある登山家の言葉で、「出発したら登山の半分は終わったようなもの」という言葉があります。
気軽に海外トレッキングに行けるようになりましたが、現地で余裕を持って楽しむには事前の準備が重要です。とはいえ、いくら綿密な準備をして出発しても必ずトラブルは起こるものです。忘れ物、メンバーの体調不良、天候不順などなど。それもひっくるめて旅を楽しむ余裕が必要です。
万全の準備をおこなって、日本では見られない絶景や異国の文化を堪能しましょう。
国内外問わず、トレッキングや登山の準備についてのご相談はいつでもおこなっております。是非お近くの店舗へお立ち寄りください。
次回は実際の現地の様子についてお話します。お楽しみに!
この記事を書いたのは「高野 優 ガイド」
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