「北アルプスでもっとも人気があるエリアはどこですか?」
と聞かれれば、ずばり涸沢カール・穂高岳でしょう。
涸沢カールにある涸沢ヒュッテ、涸沢小屋の2つの小屋が例年4月末くらいから営業を開始し、
雪の穂高を楽しむ登山者を迎えてくれます。
テントも沢山立てられ、色とりどりのウェアを着た登山者でにぎわいます。
涸沢カールに来ることが目的の人、穂高の頂上を目指す人、みなさん様々です。
雪が締まって比較的安定した雪山の北アルプスに登れる貴重なチャンス。
雪山登山のステップアップとして涸沢カールに行ってみませんか?
■涸沢カールと穂高岳ってどんなところ?
■涸沢カール周辺の他のルートについて
・涸沢~穂高岳山荘~奥穂高岳
・穂高岳山荘~涸沢岳
・涸沢~北穂高岳
・新穂高ロープウェイ~西穂山荘~西穂独標
■涸沢カール(上高地)へのアクセス
■涸沢カール(上高地)周辺のたのしみ
■参考になる登山レポート
■春山で持っておきたいアイテム
涸沢カールと穂高岳ってどんなところ?
涸沢カールは、3000mを超える穂高岳の主峰奥穂高岳、前穂高岳、北穂高岳に囲まれた日本有数の氷河圏谷です。
すり鉢状の底から壁のように立ち並ぶ穂高岳の稜線はまさに絶景!
盛夏の緑の木々、秋の燃えるような紅葉、どの季節でも素晴らしい光景を見せてくれる涸沢カールですが、
春の残雪シーズンでは雪のついた白い穂高岳を眺めることができます。
夏には様々なルートから涸沢カールへ行くことが出来ますが、春の残雪の時期は積雪のためルートが限られます。
ほとんどの登山者の方が上高地から横尾を経由して、横尾谷の底に積もった雪の上を歩いて涸沢カールまで登ります。
穂高岳は、日本で3番目の高さを誇る主峰 奥穂高岳3190mを中心に、前穂高岳3090m、北穂高岳3106m、涸沢岳3110m、明神岳2931m、西穂高岳2909mの総称になります。
岩の稜線で繋がれた山々で、急峻な岩場に登山道が刻まれ、そして滑落危険の難所が多いのが特徴です。
しかしながら厳しくも美しいその姿に魅了され多くのアルピニストが目指す聖地なのです。
春は雪が付き特に危険な山域ですが、涸沢カールをベースに奥穂高岳、北穂高岳、涸沢岳、前穂高岳を目指すことができます。
春の上高地は、緑の森と清流梓川、真っ白な穂高の山々、蒼い空の対比がとても美しく映えます。
厳冬期には雪に埋もれた上高地は、春を待っていた登山者、観光客でにぎわい始めます。
上高地からスタートし梓川に沿ったハイキング道を歩き、明神館、徳澤園を通って横尾へ至ります。
横尾は、涸沢カール・穂高岳への道と槍ヶ岳への道の分岐点になります。
横尾山荘が営業しており、目の前の広場にはテント場もあります。
川をそのまま北上して登っていくと槍ヶ岳へ。
大きな橋を渡って横尾谷を登っていくと涸沢カールに到着します。
雪のない時期には川の上に橋がかけられる横尾本谷ですが、春の時期は橋がかかっていません。
ここから夏道ですと、屏風岩側の山の斜面を登っていきますが、春の時期は横尾谷の底の雪の上を上がっていきます。
横尾谷 Sガレ付近。
時期や気温によって雪の踏み抜きが多発し、ズボッと腰くらいまで落ちてしまう事があります。
すでに雪の上についている他の人の踏み跡を外れないよう注意してください。
到着! 涸沢テント村です。
GWには沢山の色とりどりのテントが立ち並びます。
涸沢カールの底で営業している涸沢ヒュッテ。
ヒュッテのテラス席で雪の穂高を見ながら、おでんとビールで一杯やるために毎年来る、そういう人もいるとかいないとか?
カールの底にあるので、そのまま奥穂高岳、涸沢岳、前穂高岳へ向かうことが出来ます。
右側の大岩壁の下には涸沢小屋があります。
涸沢小屋のすぐわきから北穂高岳へ登ることが出来ます。
夜明け直前の涸沢カール
夜明けのピンク涸沢カール。
これが有名な涸沢カールのモルゲンロートです!
(モルゲンロートとは、朝日に照らされた山が赤やピンクに染まることを言います)
【登山コース】
上高地→(60分)→明神→(60分)→徳澤→(60分)→横尾→(100分)→本谷橋→(150分)→涸沢
涸沢カールの周辺の他のルートについて
涸沢からさらに上の穂高の山々へ登るには、大滑落・雪崩の危険のある急な雪の斜面を登るため雪山経験と技術が必要です。
ここでは少し穂高への雪山登山について説明いたします。
■涸沢~穂高岳山荘~奥穂高岳
例年ザイテングラードは雪で埋まっており、夏の登山道をたどることはできません。
(穂高岳山荘も涸沢の小屋と同時期に営業を開始しています。)
奥穂高岳に向かう登山者はザイテングラード左を直登することが多いようです。
上部に向かって斜度が増していきますので、ペース配分、滑落に特に注意してください。
遅い時期になると登山者によって刻まれたステップが出来る場合がありますが、雪崩等によって消失する可能性があります。
穂高岳山荘から左へ登っていくと奥穂高岳へ繋がりますが、上の稜線は強風で磨かれ、カチカチに凍結している場合があります。
その場合はアイゼンの爪も容易に刺さりません。
また白出沢上部の岩壁(穂高岳山荘前の岩壁)も雪が付き、登山道は隠れています。
上部の雪の大斜面・岩稜帯は大変危険性が高いです。
状況によっては、ロープを使った確保が必要になります。
※警察により奥穂高岳への入山制限をしている場合があります。
あずき沢上部、穂高岳山荘に向かうにつれ、斜度が上がります。
ハシゴも埋まっている場合もあります。上部の雪の斜面が危険です。
穂高岳山荘前の岩壁の直登は落石等を誘発するため禁止されています。
奥穂高岳頂上と北穂高岳と槍ヶ岳。
素晴らしい景色です!
■穂高岳山荘~涸沢岳
穂高岳山荘の右側の斜面の上が涸沢岳です。
夏道はつづら折りになっていますが、雪で埋まっている場合は多くの方が直登コースをとります。
山頂直下に急な斜面があり、雪の状況によってはアイゼンの前爪を蹴り込んで登る必要があります。
滑落に注意して下さい。
頂上からは穂高の山々、槍ヶ岳などを見ることが出来ます。
涸沢岳頂上から眺める奥穂高岳(中央ピーク)と前穂高岳(左ピーク)
■涸沢~北穂高岳
涸沢小屋の上に立つ北穂沢の雪の斜面を登っていきます。
登山道は雪で埋まっており、夏の登山道をたどることはできません。
かなりの急斜面ですので、雪崩・滑落に特に注意してください。
状況によっては、ダブルアックスやロープを使った確保が必要になります。
上部に向かって斜度が厳しくなっていきます。
北穂高岳山頂。
後ろに槍ヶ岳山頂が見えていますね!
北穂高小屋がすごい埋まっています。
■新穂高ロープウェイ~西穂山荘~西穂独標
新穂高温泉からロープウェイで一気に3000m付近まで高度を稼ぎ、緩やかな登りを登った先に通年営業の西穂山荘があります。
西穂山荘から稜線を進んでいくと、丸山、独標に至ります。
丸山までは雪山初心者でも安心なエリアですが、西穂独標は直下に急な登りがあります。
雪山経験・技術の心配な方は丸山までがオススメです。
丸山からの3000m級の雪景色は一見の価値ありです!
西穂独標から先、ピラミッドピーク、西穂高岳主峰は大変危険性が高く、毎年事故が起きています。
西穂主峰を目指す方はガイド登山をお勧めいたします。
ロープウェイ駅を降りて、樹林帯を登っていきます。
通年営業の西穂山荘。登山者の強い味方ですね。
スタート直後の丸山は緩やかな登りです。
危険な岩稜帯を注意して歩きます。
西穂高岳主峰からの風景。
ここから先は国内でも指折りの高難度エリアになります。
エキスパートの世界です。
涸沢カール(上高地)へのアクセス
交通機関をご利用の方
■東京方面
JR松本駅から松本電鉄上高地線に乗り換え、新島々まで。そこからバスまたはタクシーで上高地バスターミナルまで入ることが出来ます。(松本駅から直通バスもあります)
■関西方面 飛騨高山経由
高山から路線バスで平湯温泉まで。そこから上高地行路線バスに乗り換えて上高地バスターミナルまで入ることが出来ます。
お車をご利用の方
国道158号線で沢渡駐車場へ。沢渡にはたくさんの駐車場があります。
上高地は自然環境保護を目的として、マイカー規制をしています。
沢渡に車を止めていただき、路線バスやタクシーをご利用下さい。
涸沢カール(上高地)周辺のたのしみ
上高地
日本有数の自然山岳リゾート地で、GWになると上高地までバスで入ることが出来るようになります。
清流梓川に架かる河童橋から望む穂高の白き山々、大正池、明神池の水の景色、緑豊かな森の風景を求め、毎年多くの人々が訪れます。
雪山登りはちょっと怖い・・・という人にも是非目にしていただきたい、素晴らしい景色です。
いろいろな温泉
上高地の西に立つ活火山の焼岳から湧き出る温泉地が周辺に沢山あります。
平湯温泉、中ノ湯など多くの湯殿があります。
上高地入口の釜トンネル前には卜伝の湯という岩の洞窟の中に湧く珍しい温泉もあります。
参考になる登山レポート
残雪 涸沢と奥穂高岳
入山日: 2015年05月20日 (水)~2015年05月21日 (木)
晴天の北穂高岳
入山日: 2014年05月07日 (水)~2014年05月08日 (木)
白銀の西穂高岳(2909m)
入山日: 2014年04月23日 (水)
春山で持っておきたいアイテム
ファイントラック パワーメッシュインナーグローブ
グローブが濡れてしまうことが多い残雪期。このグローブをインナーとして使用すれば、指先の濡れ感を大幅に抑えることができます。もちろん、予備グローブを持っていくことも忘れずに!
アライテント エアライズ 2(2~3人用)
高山の強風が吹きやすい涸沢カールでは、風に強いテントが必要です。
雪面に穴を掘り雪のブロックを立ててしっかりと風対策!そして風に強いテントを立てましょう。
オルトボックス バッジャー
軽くて、シャフトが長く伸びるスコップ。春山でもスコップは持っていきましょう!
筆者のおすすめするスコップを選ぶ基準は、
「全体の強度、軽さ、腰を曲げずに使えるのシャフト長さ、硬く締まった雪面にも蹴り込めるようにブレードの肩が平らで足が乗せられるタイプ」
です!
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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