上から紅葉を見てみよう。~木曽駒ヶ岳~

”秋の登山”の醍醐味は?

秋は登山に適した季節。秋山登山の良い所は色々あります。カラッとした爽やかな風を感じる、山の上で美味しい山ごはんやコーヒーを楽しむ等々。登山をする多くの方が秋の山に求めている物、それは「黄色や赤色、褐色の彩鮮やかな木々や植物を眺める」事ではないでしょうか。

春から秋までの3シーズンハイカーには、一年間の「有終の美」を迎える締め括りの季節かもしれません。最後は綺麗な紅葉で〆たい、なんて方も居るかと・・・。

話しが少しずれましたが、今回は「紅葉登山」という秋の定番をお届けします。

どの山で楽しむか

紅葉のいわゆる「当たり(=見頃)」をひくのは、自然が相手なのでなかなか難しい事。「万事は一期一会、この世に同じ物は一つとしてない」なんてお説法のようなフレーズを自分に言い聞かせて紅葉登山にでかけるのですが、毎回「あと少し早かったら・・・」とか「枯れちゃっているなぁ」とか、しっかり色づいた紅葉を見ながらも考えてしまうのです(贅沢なのでしょうか?)。

紅葉の見頃について少し解釈を変えてみます。”紅葉前線”が日本列島を北から順に南下していくのと同じく、「山」ひとつで考えても標高の高い所から順に麓へと「下りて」くるので、例えば2,000mを超えるような山なら「今は何合目が見頃」という楽しみ方も出来るかなという考えのもと、今回登ったのは標高2,956mの”木曽駒ヶ岳”です。

木曽駒ヶ岳は中央アルプスの最高峰で、駒ヶ岳ロープウェイを利用すると一気に2,612mまで標高を稼げる事から、高山デビューの方や、観光登山をされる方にも人気の山です。四季折々の楽しみ方がある山としても有名です。

今回の楽しみ方は。

訪れたのは10月初旬、例年であればロープウェイ終点駅を下車した目の前に広がる「千畳敷カール」は赤や黄から褐色に変わり、山の中腹が黄葉・紅葉する頃。紅葉が徐々に標高を下げていく時期です。

今回は褐色となった千畳敷カール、そしてメインの木曽駒ヶ岳に登り、その周辺の山々の紅葉を「上から眺めてみよう」をテーマに登りました。

 

アプローチは快適

早朝のバスに乗り込み、駒ヶ岳ロープウェイの起点となる”しらび平駅”に。紅葉シーズンをむかえている事もあり、マイカー利用者の拠点となる菅の台バスセンターの駐車場には溢れかえらんばかりの車と多くのハイカーや観光客が・・・。「紅葉を楽しみたい」と思っている人が多い事、そしてこの駒ヶ岳は都市圏(大阪・名古屋・東京)からのアクセスが良く、登山もロープウェイ利用での時間短縮によって日帰りも可能な事なども人気の秘密としてあるのかな、と思われます。

バスもロープウェイも、混雑状況によっては臨時便を出しているようなので、焦らず自分の乗車タイミングを待ちます(運行状況に関しては、現地でお問い合わせください)。

快適に上まで運んでもらえるので、多少の待ち時間は苦になりません。日本一の高低差を誇るロープウェイで一気に千畳敷のある2,612mまで上がれます。

ロープウェイの搬器から見える眼下の斜面には、目にも鮮やかな黄色や赤色が広がり、この時点でもはや感動です。ここで充分堪能した感がありますが、あくまで観光の方と違い木曽駒ヶ岳の頂上から、そしてその周辺の紅葉を上から眺めてみよう、が私のミッション。千畳敷駅の駅舎内で準備を整え、千畳敷カールの遊歩道を木曽駒ヶ岳に向けて歩き出します。

 

すこし登れば

夏はお花畑となる千畳敷カール。秋の褐葉が進む遊歩道の中を少し歩けば、目の前の宝剣岳の大きさが分かる八丁坂への分岐点はすぐそこに。ここまでやって来るといよいよ本格的な登山道です。この八丁坂からは九十九折したガレた登山道を登ります。分岐に設置された注意喚起看板の通り、ここからはしっかりとした登山装備は必携です。観光地ともいえる千畳敷カールとの距離が近いためか、普段の服装や靴のまま登る方も見受けられました。

距離は長くはないですが、すこし息が上がるぐらいの急登。そこを詰め切ると乗越浄土、分岐点となります。ここからすでに将某頭山方面の斜面の色づきが見れます。まさに遠望で上から見下ろす紅葉・・・なのですが、まだ感覚的には目線より少し下ぐらいの感覚で”上から眺めている”感覚はないです。ここから中岳そして木曽駒ヶ岳へと登り、さらに標高の高い所から紅葉を見下ろそう、と再び歩き出します。

森林限界点を超え、アルプスらしい稜線歩きを楽しみます。風が吹くと汗をかいた体は冷えを感じます。薄手のジャケットを着たり、ネックゲイターやグローブで皮膚の薄い部分や末端を冷やさないようにします。

 

遠望&直下の紅葉を

乗越浄土から、中岳そして木曽駒ヶ岳山頂まではパノラマビュー。南・中央アルプス、遠くには御嶽山に八ヶ岳や富士山、北アルプスまで見る事ができます。眺める稜線に雲が掛かったり取れたり、日が差したり陰ったり、と刻一刻と表情を変えるので、同じような眺めが続きますが飽きが来ません。しかも景色を楽しむ事が出来るぐらい、余裕を持って歩ける登山道。ここでアルプスデビューする人が多いのも納得です。

景色を楽しみながら最後の登りを登りきると木曽駒ヶ岳山頂。中岳からはあっという間です。

そして山頂周辺から、ぐるっと360°で下の斜面を見てみると・・・

深い緑に混じって黄色、赤色、褐色の斜面が広がっています。

斑となって、一面が紅葉という訳ではないのですが山の紅葉を見下ろす事は、高山でないとなかなか出来ないかなと思います。

 

登山道から見上げて楽しむ紅葉、麓から遠景で楽しむ山全体の紅葉を楽しむ以外にもこんな楽しみ方もお勧めです。

 

来た道を戻る下山の道すがら、色んな所で紅葉を上から眺めます。

 

小さく見下ろしてみても

「紅葉を見下ろす」は大きく俯瞰するだけではありません。自分の足元を見下ろしても紅葉がちらほら。

 

小さくても、立派に色づいており秋を感じさせます。

時間と体力に余裕のある方は、乗越浄土から伊那前岳方面に足を延ばしてみて下さい。

こちらからは将某頭山方面の紅葉を、さらに近くで見下ろす事ができます。

終わりに

いかがでしたでしょうか。「紅葉登山」を楽しむときに、山全体が黄色や赤色に染まっていなくても、目的の場所の見頃が過ぎていても、目線を変えればその時々の紅葉を十分に楽しめると思います。

とりわけ今回のように標高の高い山であれば、一つの山でもその時々で見頃の場所や見どころが違うと思うと、楽しみ方が増えていいですね。

短い秋、自分なりの楽しみ方や見方で紅葉を楽しんでは如何でしょうか?

 

紅葉だけじゃない、四季の楽しみ方イロイロ。好日山荘スタッフによる木曽駒ヶ岳の登山レポートは、こちら

 

好日山荘マガジンライター:菰下 了

 

*取材時は感染症対策をとり、密集・密接を避けて行動をしております。

 

 

 

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!