山登り好きならではの楽しみ方
毎年11月も半ばを過ぎる頃、「来年の干支は何だっけ?」から始まり「(翌年の)干支に因んだ山と言ったら?」となるのが、登山を嗜む方にとっての「登山あるある」ではないでしょうか?
「なるべく近くで、できれば1月中には登っておきたい」をベースに干支に因んだ山を探してみよう、でマガジン編集部も動きます。
今回お届けする寅年に因んだ山は、実は一昨年の晩秋には既に決定していたのです。
山の名前に「寅」は付いていません、が。
一年以上前から訪問を決めていた山、それは大阪と奈良を跨ぐ生駒山地にある「信貴山」です。
山名に「寅・虎」が付かないのに、なぜ寅年に因んでいるか? を簡単にご説明。
その昔、聖徳太子がこの山で悪徒平定を祈願した際に現れた毘沙門天王から霊力をもった弓と箭を授かり、これをもって平和な世の中を取り戻したことから、聖徳太子が毘沙門天王を祀る伽藍をこの山腹に建立。その後現在の朝護孫子寺に。毘沙門天が現れたのがちょうど「寅の年、寅の日、寅の刻」だった事から、寅が信仰されるように。
寅と所縁のあるこの朝護孫子寺が山腹にある事から、由緒ある(?)「寅に因んだ山」として、こちらをご紹介です。
もう一つのポイント
寅に因んでいる事が最大のポイントではありますが、「登山目線」で言うと信貴山は標高500mにも満たない山なので、気軽に登りやすい事もポイントとして挙げられます。
前述のとおり、干支の山は出来れば一年の始めである一月には登りたいところ。しかしながら気温も下がり山間部では雪も舞う季節。がっつり積雪して根雪になるような山だと、初心者の方や慣れてない方は気後れするかもしれません。
この信貴山は大阪と奈良の両側から登れますが、とりわけ奈良側からは斜度も緩くあっという間に登れる印象です。
大阪側もケーブルカーが信貴山のお隣にある高安山の頂上直下あたりまで運行しています。
メンバーや体力、気象条件に合わせてルートを決められる事、すなわちオプションの多様性がもうひとつのポイントです。
程よいハイキング
今回は大阪側からハイキングをスタート。近鉄信貴線の信貴山口駅からスタート。住宅街を抜けた先の登山口まではすぐ、大阪側から登る場合は先ず高安山へと登るルートとなります。この高安山の麓は古墳群や社寺があり史跡めぐりをするのも楽しそうなエリアです。
登山口からは森の中の登山道を登って行きます。足首上まである落葉はフカフカの踏み応えですが、隠れた浮石や滑りやすい粘土質があるので油断は禁物。
緩めの登山道が続く中ではそれがちょっとしたスパイスに。「やっぱり山は楽させてくれないよな…」なんて事を考える余裕があるぐらいです。
高安山山頂へ向かう前に、登山道の分岐を西信貴ケーブルの高安山駅方面へと向かいます。ここにはその昔に山上鉄道線(信貴山急行電鉄)が信貴山門まで走っていたのですが、その当時のホーム跡を見学しにお立ち寄りしていきます。
遺構を後にし、水平道をしばらく歩くと高安山のピークまではあっという間です。
高安山から信貴山へは、程よいアップダウンと日の光が差し込む登山道が続いていきます。信貴山は山城があった場所で、その規模は奈良県下最大級。登山道の途中に山城の遺構が点在しています。興味のある方はこれらを巡るのもおすすめです。
いよいよ”寅スポット”
この信貴山城址を山頂まで登ると、そこから朝護孫子寺へと下って行きます。九十九折の舗装路を下って行き、先ずは本堂に参拝です。本堂では「戒檀めぐり」(長野県の善光寺が有名ですね)を体験。本堂の地下に作られた九間四面三十六間の回廊をぐるっと廻るのですが、わずかな御燈明の灯りの中を右手を壁に添えて歩いて行き守本尊をお詣り、そして暗闇の中で如意宝珠の錠前に触れる事が出来れば功徳が与えられる、という物です。私もかろうじて錠前に触れる事が出来ました(触れた瞬間、思わず手を引っ込めてしまったのは条件反射?)
本堂を出たら境内をぐるっと巡り「寅」を探します。歩きながら見回すといたる所に、あらゆる虎がいます。
虎を見つけては眺めて写真に収め、次の虎をまた探す…。これの繰り返しです。ですが、全く飽きません、看板、お堂の装飾、石造からお土産まで。様々な虎と出会います。 人生の中でこの短時間にこれだけの「虎もの」を見たのはこの時が初めてといっても過言ではありません。『「三寅の福」何回分?前借りし過ぎか?』などと考えながら、「さすがは寅に因んだお寺(山)」と、悦に入ります。
以下、「寅集め」(ごく一部です)
大トリに大トラ(?)がまってます
寺(寅?)巡りでは聖徳太子像などの見所もおさえて、いよいよメインの”寅”に会いに行きます。
それがこれ「世界一の大寅」です。
張り子の寅ですね。
大寅の傍にある石碑には「世界一福寅」の文字が刻まれています。個人的にはこの張り子の大寅に会いに来たかったので、感無量。沢山の方が写真を撮りに来られていましたが、恐らく私が一番滞在時間が長かったのでは?というぐらい、前やら後ろやらと色んな角度で眺めていました。
寅のご利益のあとは
「大寅と出会う」をクリアしたら、一気に空腹感が…。朝から行動食しか食べていなかったのでお腹を満たしに参道にあるお店へ。こちらも大寅と同じく「信貴山に来た際には必ずチェック!」と思っていた「アベノ日本一」さんの”すじカレーラーメン”をいただきます。
少しだけ寒かったこの日、ラーメンでありカレーでもあるこの一杯は至福の一言。スープとなるカレーは辛すぎないので子供でも食べれそう。すじ肉も少し噛むとお肉がほどけていく、いい塩梅の煮込み具合。一気に平らげてしまいました。
お腹も満たされ、奈良側へと下山開始です。信貴山下駅へと向かうのですが、ここからの登山道は廃線となった東信貴ケーブルカーの線路跡なので、ひたすらまっすぐな道を歩きます。
往路で登った大阪側からと違って、比較的緩やかな傾斜となっています。廃線あとなので足元も整備されておりフラットで歩きやすくなっています。
参道からあっという間に、近鉄生駒線の信貴山下駅に到着。ここで今回の「干支登山」はフィニッシュです。
自分なりの干支の楽しみ方を
十二支に因んだ遊び方をアウトドアで楽しめるのは、私が知る限り登山ぐらいかなと思います。皆さんも、名前や所縁など「干支縛り」でテーマを見つけて楽しんでみては如何でしょうか?
例えば、以前の冬に#ちょい旅で訪れた「東洋のマチュピチュ」こと「竹田城(兵庫県)」が鎮座する古城山は、山全体が虎が臥しているように見える事から「虎臥城」とも言われており、干支に因んだ山(スポット)と言えます。
冬の竹田城のちょい旅コラムはこちらから。
他にも好日山荘スタッフによる登山レポートでも、見つける事が。
例えば・・・
■虎の縦縞が名前の由来「虎毛山」
■岐阜百山「虎子山」
■虎尾桜が名物「福智山」
などなど、行先を決めるヒントにしてみて下さい。
おまけ
今回は信貴山から張り子の寅を「連れて帰り」ました。信貴山の縁起もんとされている張り子の寅。首を振るその様から「よく首が回る(何事においても不自由しない)」と云われており、勇ましい姿から「魔除け」のご利益がある、とも。
好日山荘マガジンライター:菰下 了
*取材は、感染症対策を行い密集を避けて行動しております。
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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