秋のアルプスの楽しみ方と注意点

 

9月に入りました!!暑くて嫌だなーと思っていた夏も終わりが近づくと寂しくなりますね。

 

でも、夏が終わってもアルプスの登山シーズンはまだまだ続きます!!

夏に比べると、涼しく快適に歩け、また、空気が澄んでいるので遠くの景色まで綺麗に眺められます。

アルプスでは、登山道の標高差が大きい為、長い期間紅葉を楽しむことも可能です。

また、登山後の季節料理、温泉、そしてビールで乾杯!想像するだけでもわくわくしてきます。

 

【八方池から眺める不帰】

 

ただ、秋のアルプスには夏と違ったリスクが存在します。安全に秋のアルプスを楽しむために注意してほしいことを2点お伝えします。

 

「昼間と朝晩の寒暖の差が激しい」

秋のアルプスは1日の中に四季があると言っても過言ではないほどの寒暖差があります。登山日が快晴無風の場合、日中は夏と変わらないほどの暖かさを感じ、登りではたくさん汗をかくものです。そして、日陰に入る、稜線にでて風が強くなる、また、日が傾く夕方になる、少しの環境変化で体感温度は急激に下がります。この時に、汗でぬれた服は体温を奪います。最悪な場合は低体温症の危険も。

 

対策として個人的にお薦めなのはメリノウールのベースレイヤーです。天然の温度調整機能により、広い温度域で身体を快適に守ります。汗を多くかく方は、ファイントラックやミレーの高機能アンダーに速乾性の高い化繊のベースレイヤーを重ね着する等、ご本人の体質に合わせてレイヤリングを考えるのも良いでしょう。

ファイントラック スキンメッシュ

ミレー ドライナミックメッシュ

 

また、レインウェアは、雨天時だけでなく、防風対策としても着用します。風が出てきたり、休憩時にサッと着ることができるようにジャケットなどは取り出しやすい位置にパッキングしておきましょう。ニット帽、ネックゲータ、手袋など体温が逃げやすい部位を覆う保温小物は、服を脱ぎ着しないでも体温調整が可能です。テルモス(魔法瓶)に入れた温かい飲み物もありがたいものです。ダウンジャケットやフリースなどの保温着も持っていきましょう。

また、事前に低気圧通過、寒冷前線の通過、上空への寒気流入、雨雲の動きなど気象情報を入手します。
防水防風透湿機能を持つジャケットパンツを着用し、体温維持、行動力、思考力を保てるよう行動食をしっかり食べることも重要です。

 

「秋のアルプスは天候によって、真冬のような環境になりえる」

標高の高い山域では急激な気温低下や天候急変による強風やときには降雪もあります。
風雨・風雪の影響が出にくい樹林帯にいる段階で防御する対策、引返すなどの決断が必要となります。

「せっかくの連休だから、天気が悪いけど行けるところまで行ってみよう」の考えが大きな失敗を引き起こします。

「○時には下山を開始しよう」「天候が崩れたら○○地点で引き返す」といった事をグループで共通認識として事前に取り決めておきましょう。

【10月の立山 この前日は全く雪がありませんでした。一晩で真っ白に】

時間や天気の状況を見ながら、下山まで気を抜かず、安全に秋山登山をお楽しみください。

今年も下山後の美味しいビールの為に頑張って登るぞ―――!!

この記事を書いたのは「田中敦 ガイド」

田中敦 ガイド

公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイド ステージⅡ
N.I.A.J(Nature Instructors Academy of Japan)所属

山好きの父親の影響で、物心がつく前から登山、スキーを始める。
航空関係の学校を卒業しながら全く航空系には進まず。卒業後すぐにガイド業を始める。
20歳~32歳まで、オセアニア、ヨーロッパ、特にスイスを中心に日本からのトレッキング、登山、スキーのお客様を案内する。
33歳に帰国後は、日本からガイド兼ツアーリーダーとして世界各地の山にお客様をご案内。
現在は、好日山荘登山学校講師 普段は好日山荘 松本パルコ店に勤務

≪主な海外山行≫
■タンザニア キリマンジャロ(4回)
■ロシア エルブルース(4回)
■南極 ビンソンマシフ
■オーストラリア コジオスコ
■ヨーロッパアルプス 4000m峰12座(モンブラン、マッターホルン等)