須磨アルプスと地元をちょい旅

 

神戸のアルプス

地元の山登りと地元再発見の「マイクロツーリズム」のちょい旅をご紹介。好日山荘のお膝元、兵庫県神戸市は瀬戸内海沿いに伸びる街の背景にそびえる六甲の山々と海がとても近い都市です。その山々を登ることができる登山口はいくつも存在します。56キロほど連なる山々を歩くルートを「六甲全山縦走路」といい、年に一回市のイベントして、また個人でも楽しむ人も多くいらっしゃいます。その一番西の端っこからの一連の山を「須磨アルプス」と呼びます。住宅街のすぐそばから登り始めることができることもあり、毎日登山などで地元のみなさんがよく登る山です。

須磨アルプスの核心部分横尾山と栂尾山の山容。

須磨アルプスを歩く。馬の背を体感。

今回は「須磨アルプス」の東山から旗振山までのコースを歩きます。最寄り駅、神戸市営地下鉄妙法寺駅からスタートです。駅から住宅街をあること10分ほど、「六甲全山縦走路」という小さい標識を見逃さないように昭文社山と高原地図「48 六甲・摩耶」と照らし合わせながら歩きます。住宅街に面して山があり、登山口がひっそり、しかしながら道標はしっかりあります。すぐに登山らしい道がはじまります。のぼりの階段が続き、15分ほど上がるとさきほどまで歩いてきた住宅街が眼下に広がります。神戸の海にあるポートアイランドという埋立の際、この周辺の宅地造成で出た土が使われていました。そのため大きな団地を含め多くの方が移り住んだ住宅地です。登山口から約30分ほどで最初のピーク、東山(253m)に到着。このあと、横尾山~栂尾山~高倉山~鉄拐山~旗振山~鉢伏山と続きます。東山から横尾山の南側斜面の部分が岩肌露出した部分、須磨アルプスの「馬の背」が見えました!ここから少し下り、核心部分へ近づいていきます。
名勝「馬の背」に到着しました!荒々しい岩場、足元がザラザラした風化花崗岩です。この日は登山者も少なくマイペースでゆっくり行くことができましたが、気軽に来ることができる分、足取りは慎重にかつ確実にすすみます。こんな狭いところにハシゴ!こわい~!スリリングですが、こわがりの私でも意外と楽めました!ふりかえると山並みが続いているのが分かります。一番近くに見えるのはお隣の高取山。南側がひらけた時には、もれなく海も見えます。海と山の距離が近いです。この先は樹林帯へ入っていきますが、鎖がついた岩を登るところもあったり、飽きないルートです。次のピーク横尾山(312m)に到着。ここには一等三角点があります。さらにすすんでいくと、栂尾山(274m)頂上の展望台に到着。素晴らしい展望が待っています!西側には淡路島と明石海峡大橋。住宅街の先には次に向かう高倉山~旗振山。東側は神戸市街地。海に小さく浮かぶ右の島が神戸空港。いつ見ても飽きない景色。霞が無いときは遠くは瀬戸内海の島や大阪までスッキリ見渡せます。今日歩いたルートではじめて案内図がありました。地図とあわせて位置確認。ここからは一気に住宅街に向けて下ります。階段約350段ほど。

くだりで見るとこんな感じ。のぼりだとこんな感じ。どっちも急です!!

高倉山のおらが茶屋へ。

陸橋を渡り、次に目指すは高倉山。この地域「高倉台」の名前の由来にもなるにもなる山で、地域の方が毎日登山をしていたり親しまれている山です。
ここにも長い階段がつけられているので、やすみやすみゆっくり上って行きます。高倉山に到着。標高はもともと291.5mだったのですが埋め立てのために一部を削られました。景観存続のために残された現在は200mとなっています。(通称おらが山)

おらが茶屋

高倉山頂上の「おらが茶屋」。1階はありがたいお手洗い、2階は茶屋、屋上は展望台になっています。おらが茶屋は、創業平成2年。通常は土日祝の営業になっています。いつも素通りしてしまいがちなのですが、せっかくなので立ち寄ってみるとうれしい情報がいっぱいでした。茶屋の中に入ると三方の窓から光が入りとても明るく景色を存分に楽しめます。私は南側の席を選んでカレーとケーキとドリンクがセットの「おらが茶屋セット」を注文。食べながら見れる景色は贅沢そのもの。カレーを平らげたあとに持ってきてくださったハンドドリップの珈琲と綺麗に焼かれたケーキ。お話してみるとスタッフの中田さんの手作りケーキときいて、納得。以前に習得した技だとか。今度はチーズケーキも試してみたいです!店内のテーブルに双眼鏡とたくさんの景色のイラストが。なんと、こちらも中田さんの独学でのイラストとのこと。実際に見えているよりも高度を上げて描かれているそうで、位置関係がとてもわかりやすい。丁寧で細かくてじーっとみてしまいます。東側は、遠くの葛城山や二上山も見えるとか。条件が揃えば双眼鏡で大阪城も見える!?一度見てみたいです!ここからの景色のことを色々ご存知の中田さん。私が海を見ていると、浮かぶ船が須磨海苔の漁のもので、今の時期にしか見ることができない冬の風物詩なんですよ。と教えてくださいました。海苔は、潜り船といって海苔の棚をくぐり船の上で収穫するそう。須磨に住んで海を見ることはあっても、手に届きそうな所で須磨海苔の収穫をしているとは知りませんでした。灯台下暗しです。おらが茶屋からの展望は素晴らしく、時間があれば是非ゆっくりと景色を楽しんでもらいたいです。とても良い時間を過ごすことができました。

ウバメガシの林のなかを鉄拐山~須磨浦公園駅まで

おらが茶屋の先は樹林帯に入ります。須磨アルプルのルートではよく見るこの樹木が何なのか、ずっと気になっていたのですが、今まで気づかず、この日、看板に出会うことができました。

「ウバメガシ」(ブナ科)。九州、四国、本州伊豆半島までの海岸のごく近くにだけに自生する常緑広葉樹で、もし内陸部でこの木がみつかると、昔はその付近まで海岸が入り込んでいた証しとなります。この木で焼いた木炭は備長炭といい、とても硬く、立ち消えせず、最高級の木炭になります。材は堅く、木槌として利用され、庭園樹としてひろく全国に植えられている。(看板より)

ルート上には道標も含め色んなものがあります。どれもチェックしながら進みます。2022年1月時点では通行止めの看板がありました。次は鉄拐山(234m)に到着。今日歩いてきた山々がきれいに見えました。

ここから旗振り山へ向かう須磨一ノ谷といわれる場所は源平の合戦場でもよく知られるところです。ルート上にあった「逆落とし」の看板。源義経は弁慶をはじめとする騎馬軍団を率いてこの山の急な斜面を攻め降りて平家に勝利したと言われています。

このあと、緩やかな道を行くと、茶屋もある旗振山(253m)に到着。その昔はここから旗で信号を送っていたといわれる場所です。この日は茶屋がお休み、しかも北からの寒波でこの時はものすごい強風で吹雪になってしまいせっかくの景色は臨めませんでした。昔は摂津の国と播磨の国の国境があるとされていました。今は須磨区と垂水区の区境になります。ここからは海岸近くまで主にくだりのルートになります。ほどなく、鉢伏山(260m)です。道標は広場にポツンとあり一瞬見逃しがちです。ここを過ぎると、須磨浦山上遊園地があります。展望台や楽しい施設がありますが、この日は残念ながら昭和レトロで有名な乗り物カーレーターもロープウェーも冬期休業。唯一入ることができた展望台からは海と山が一番接近している様子が分かりました。海が真下です!下り切ると海が目の前に広がり、山陽電車須磨浦公園駅に到着でゴール。須磨アルプス登山は終了です。須磨浦山上遊園 http://www.sumaura-yuen.jp/

海と山の近い須磨アルプスの楽しさを少しは感じていただけましたでしょうか。みなさんの地元のご当地アルプスもぜひ歩いてみてはいかがでしょうか。

好日山荘登山レポート 須磨アルプス

冬必須!あったか小物紹介

写真でお分かりいただけないのが悔しいとことですが、取材の日も晴れているかと思いきや、強い北風と急な吹雪に見舞われました。あったかい小物は必ず持っていきたいですね。ルート上には岩肌が慮出している場所も多いこともあり、防寒と手の保護も兼ねて小物をこまめに着脱しました。はじめてフリース素材のネックゲーターを購入してみたらあったかさにびっくりしました。濡れたり落したりすることのある手袋は予備を必ず持つようにしています。

風景印

平日で時間に余裕があれば、風景印をいただきに神戸横尾郵便局へ。須磨アルプス(馬の背:横尾山)と多井畑厄除八幡宮(源義経も祈願したといわれる厄除霊地)のデザインの風景印です。

日本郵便 神戸横尾郵便局 https://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/fuke/detail.php?id=210

ここからは須磨アルプス周辺のちょい旅!今回は地元では長く親しまれている場所をご紹介します。

須磨離宮公園

須磨アルプスの南側にある須磨離宮公園。市民の憩いの場で植物園など季節の花を楽しむことができたり、園内には史跡も存在します。

約100年前に皇室の別荘である「須磨離宮」(正式名称:武庫離宮)が建造されました。総檜造り二階建ての御殿は、大正天皇や皇后、昭和天皇もご利用されました。昭和20年の空襲で御殿は焼失、進駐軍の射撃演習場を経て昭和42年、離宮公園が正式開園しました。(園内案内板転記)

左右の門柱と六角形の亀甲型の石積みは約100年前の当時のものです。小さいころに訪れた時からこの噴水がシンボル!とにかく広場と相まって豪華な印象です。

古今和歌集や源氏物語にも登場する平安期の歌人在原行平ゆかりの「月見の松」跡付近に石灯篭やあずまや「傘亭」(現在は復元)を建てたことからこのあたりの地域は月見山と呼ばれ、関西で車を乗る方には聞き覚えのある阪神高速月見山出入口の近くでもあります。園内にある植物園エリアへ行くにはタイムスリップするような感覚の隧道(トンネル)をくぐります。こちらも開園当時からあり、一説には有事の際に避難路として建造されたと言われているもの。

この時期は水仙と梅園では蝋梅が身頃を迎えていました。野鳥も花のあるところを飛び回って楽しそう。白梅紅梅はこれから咲き始めるところでした。

園内は野鳥も多く見ることができたり子供たちに人気のアスレチックがあったり、幅広い年齢層の方に楽んでもらえること間違いなしです。そのアスレチックの奥には須磨アルプスへ向ける登山口がひっそりとあります。公園を楽しんだ後に歩くのも良いかもしれません。
バラの咲く時期には多くの種類を鑑賞できることでも有名です。この日はひとつだけバラのつぼみを見つけることができました。「チャールストン」という開園当時から栽培されている品種。咲いている姿も見てみたい。

神戸市立須磨離宮公園 https://www.kobe-park.or.jp/rikyu/

多井畑厄除八幡宮

須磨アルプスの栂尾山から下ったところにある多井畑厄除八幡宮。地元では親しみを込めて通称「多井畑の厄神さん」。770(神護景雲4)6月に疫病が大流行し、それを鎮めるために五畿内(大和、山城、河内、摂津、和泉)の国境10ヶ所に疫神を祀り、疫祓いが行われました。多井畑厄除八幡宮は古山陽道の摂津と播磨国の国境に位置していたため、その一つとして疫神が祀られたと伝えられています。現在の兵庫県神戸市須磨に配流された在原行平や、一の谷の合戦の際には源義経が祈願したといわれており、日本最古の厄除けの霊地と伝えられています。(公式ホームページより転記)毎年1月18日から20日の3日間に渡って厄除祭が行われ、厄年のお祓いや疫病退散、病気平癒の祈願と厄除けに多くの参拝者で賑わいます。昨年の御札を返納し本殿にお詣りします。本殿から少し上がったところに疫神祭塚があります。こちらで行なわれるのは厄除けならではのひながた(人型)流し。紙で人体の形をしたものを作りこれを流して災いを除くといわれ、古くは平安時代には宮廷や貴族の間では陰陽師によってこの行事が行われた。今日一般には本人の身代わりになる人型として水に流します。「厄災ヲ被ヒ給ヒ清メ給フ」とかかれたひながたに名前と数え年を書きます。幼稚園の頃からお詣りにきているのに、御朱印ははじめていただきました。橘の紋がとても好きです。おみくじは半吉をはじめてひきました。

参道入り口の鳥居からすぐのところに立ち寄れる場所もご紹介。元たばこ屋の店舗の店構えのあるパン屋さん「味取」がオープンしていれば超ラッキーです!また、1184年2月7日源義経一行が多井畑厄除八幡宮に戦勝祈願をした後、この松の下で休息をとり一の谷に向かったと伝えられている「義経腰掛の松」や、在原行平が慕っていた村人姉妹、村雨と松風が姿を映したとされる「鏡の井」を再現された井戸もあり史跡めぐりも楽しむことができます。

多井畑厄神八幡宮 https://www.tainohatayakuyokehachimangu.or.jp/

須磨のお土産ご紹介

神戸土産では洋菓子を選びがちなのですが、今回出会うことができた特産品はお土産として是非とも紹介したいものです。

須磨海苔

海苔は身近で昔からよく食べるご飯のお供。今回はおらが茶屋の方に教わった須磨の海での潜り船でとれた須磨海苔を購入してみました。調べてみると、701年に記された大宝律令にも 献上品の1つとしてあげられていたそうですが兵庫県での海苔の養殖が始まったのは、昭和30年代頃で全国的に見ても新興県だそう。 一番摘みだけを使用した海苔は風味が良くて美味しい!佃煮も気に入りました。

創業50周年 須磨海苔の河昌 https://www.sumanori.com/

Rikyu Honey(離宮ハニー)

大正時代から現在まで100年間大切に守り育てられてきた自然豊かな須磨離宮公園で生まれたハチミツ。2019年から製品として販売されていてデザインもすてき。須磨離宮公園内のレストラン「GARDEN PARTAGE(ガーデンパタジェ)須磨離宮」ではこちらを使ったカフェメニューがあります。

須磨離宮公園の正門やオンラインでも購入可能です。https://www.kobe-park.or.jp/rikyu/news/post-9635/

地元のマイスターになるべく?私がするべきこと(案)

今回自分の住む須磨の歴史を知っておくとよりこの場所が好きになると感じました。身近なので少しずつでも訪れてみたいと思います。

・須磨寺に行く

・敦盛だんごを食べる

・須磨ロープーウェーとカーレーターに乗る

・須磨離宮公園でバラをはじめ季節の花を見ること

・旗振茶屋でゆっくりして、景色を楽しむこと

取材日:2022年1月13日、15日 感染対策を講じ、安全安心な登山・旅を心がけ取材を行いました。

文&編集&写真●関本 亜紀

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!