ガイドコラム

滑らない!チェーンアイゼンが活躍する場面はここです!

 

雪は滑る?何を当たり前のことを!と叱られてしまいそうですが。

白い雪より透明感のある雪が曲者ですね。ボーと歩いているとマンガみたいに転びますよ!

八ヶ岳美濃戸の圧雪された林道

スキーやスケートで滑るのは氷雪面と物体の間に水膜ができるから滑るといわれています。が、最近の研究では必ずしも圧力で表面が雪氷から水に変化するから滑るという説が揺らいでいますね。気になったら調べてみましょう。

雪山登山で使う登山靴が夏用に比べて大きく違うのは靴底裏ゴムのブロックパターンと彫りの深さでしょう。

低温でも適度な柔軟性を保ち、深い彫りのブロックパターン
フラットな靴底と高い剛性(曲げにくさ)、しっかりとしたコバ(アイゼン装着に必要なことも)がある冬用登山靴

靴底やスタッドレスタイヤなど雪の上で雪をしっかり踏み捉え、ブロックパターンで固めて「雪柱」をつくり、足裏で蹴り出すことで全身力を生み出しています。これを「雪柱せん断力」といいます。氷とゴムが低温下でひっつこうとする「凝着摩擦力」と、ブロックの「エッジ効果」と合わせて前進する駆動力を得ています。しかし、氷上では靴底が全く喰い込まないうえ、接地面積も小さいので前進する十分な駆動力が得られません。

そこで必要となるのがチェーンアイゼンやアイゼンと呼ばれる金属の爪を持った装備です。

サレワのチェーンアイゼン。どのような靴にでも装着可能。サイズはS、M、L、XLです。

 

チェーンアイゼンが活躍するのはどのような場面でしょうか。

1:冒頭の写真にあるような圧雪され、所々が融雪と凍結によるアイスバーンになっているところは最も適しているでしょう。

2:1月から2月頃、1000m前後の少ない積雪エリアの北面や沢形状で陽が差し込まないコースを歩く場合、関西なら六甲山や金剛山など良く管理されたコースでしょうか。靴底をフラットに置くことができる無積雪期の登山道が使えるコースです。

3:夏のアルプスの雪渓歩き。コンパクトさでは4本爪ですが、歩行の安定度は抜群です。

登りより下りが滑る!

チェーンアイゼンが相応しくないのはどのようなところでしょうか。

1:積雪が多い日本海側気候の1000m前後の山や2000mを超えるアルプス、東北から北海道にかけての高山です。これらのエリアは全て登山環境はそれぞれ異なります。ですから、これらの領域に出かける場合は最も安全を脅かす状況に対処できる前爪付10本爪以上のベーシックなアイゼン(クランポン)が必要です。合わせて、アプローチに合わせてチェーンアイゼンを持っていきます。

 理由はこちら ⇒ 深い雪、軟らかい雪では短い爪では支持力が得られず、氷化した斜面ではチェーンアイゼンと靴が横ずれし易く身体を安定させにくいからです。

2:落ち葉がたくさん積もった冬の低山です。落葉のミルフィーユ状態になって爪は隠れてしまい、本来の機能を発揮できません。この様な低山領域では外しましょう!

前爪付10本爪以上のベーシックなアイゼン(クランポン)は5月のアルプスまで活躍します。春山登山では絶対に必要な装備です。私はこれを持ってこない方をご案内することはけっしてありません。

私のおすすめアイテムのひとつ、ペッツルバサック。

もう一つ大事な点があります。滑るか滑らないかは道具使用の有無だけで決まるわけではありません。

1:雪の有無に関係なく、靴底をフラットに押し付けること、歩幅はいつもより狭くして体重移動距離を小さくすること、登山道の雪、氷、泥、砂、岩、コケなど靴底に接する物体をしっかり見て丁寧に足を動かすのが大切です。

2:チェーンアイゼン、雪山登山用前爪付アイゼン(クランポン)の脱着が素早くできるよう繰り返し練習します。家で行っておくのは最低限のことで、登山中に荷物を背負って、手袋をつけたまま、低温で手がかじかむ中、など安全な場所を素早く見つけ行うのは、実際の登山中に折りをみて行うようにします。

3:登山者の過剰利用でえぐれた身近な低山の泥の登山道で「滑るから」とアイゼンを漫然と使うのはけっして美しい姿ではありません。1に書いたように歩き、十分な時間を見込めば登山道を傷めなくて安全に登山靴だけで済む場合もあります。登山される方の体力・歩行能力に応じた安全配慮を最優先してほしいですが、自分にとって本当に必要な場面かどうか、自分自身で判断する習慣を身に付けることが大切です。

 

Yahooニュース/個人/ライフ/加藤智二 ⇒ こちら

霧氷を見に行こう!

加藤校長と行く 日帰り雪山企画はこちらです。

 

アイゼンのお買い得情報 ⇒ こちら

 

 

 

 

 

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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