山岳ガイドが語る春の山の楽しみ方と注意点-加藤ガイド

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春の山には、厳しい雪の季節の足跡と、新しい芽吹きの季節の息吹が共存しています。
そんな春山の登山の楽しみ方と注意点を加藤ガイドに聞いてみました。
(この記事は2016年春の記事を再編集しています)

Q1.春山(残雪期含む)の魅力や楽しみ方と言えば?

A.植物の芽生えや自然の変化、空気感を感じることですね!

大陸から冷たい空気の南下が少なくなる春。
山々に積もった積雪は徐々にその厚みを減らしていきます。
この季節、ドロに汚れたザラメ雪で登山靴は汚れますが、落ち葉の積もった日当たりの良い斜面にはスプリングエフェメラルが姿を現す心躍るときでもあります。
春の妖精といわれる可憐な花の代表選手は「カタクリ」でしょうか。
そして豊かな植生には多様な落葉広葉樹が欠かせません。「ブナ」は春夏秋冬、楽しませてくれる私の大好きな木です。
新しい葉をまだ大きく茂らす前、林床に温かい陽が差すうちに「カタクリ」は真っ先に花を咲かせ、幅広の葉で懸命に光合成を行い実を付けます。
ブナの葉が森を覆い尽くす6月には、「カタクリ」は地上部を枯らし次の春まで永い眠りについてしまいます。
春の山を登るということは麓の春から中腹の早春へ、雪を抱える高山へと季節を遡ることでもあるのです。
日本は大陸の国々に比べれば狭い平野ですが、複雑で急峻な山岳地形が多様な植生を形作っています。
雪、泥雪、泥、砂など登山道の状況と自分の登山靴とで、様々な摩擦状況がうまれます。
靴裏から伝わる感覚と対話しながら、スリップしにくい歩行姿勢を身につけよう。
 

Q2.加藤ガイドおすすめの春山は?

A.花の山がおすすめです!

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中国地方なら、岡山県と鳥取県との境にある毛無山のカタクリ。

関東地方なら、東京都奥多摩にある御前山のカタクリ。

中京地区なら、鳩吹山山麓のカタクリはお手軽に見ることができるスポットです。

雪の多い北陸地方なら、6月の山開き頃の人形山。見るだけなら剣岳馬場島、早月尾根の登山口付近がオススメです!
 

Q3.春山での必要な装備のポイントは?

A.道具をしっかり整備して、新しい季節への準備をしましょう。

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登山靴のブロックパターンがしっかり残っているものを使ってスリップしにくくしましょう。
防水性能はもちろん、撥水処理をしっかり施しておきましょう。
下山時、沢で泥落としに使うブラシがあると重宝しますね。

ゲーターはパンツの裾汚れ防止に有効です。

トレッキングポールを活用しましょう。
泥雪道で軽アイゼンの安易な使用は避けたほうがいいです。
トレッキングポールにゴムキャップを付ける意味は使いながら良く考えてほしいですね。
ゴムキャップをつけていると木の根などを傷つけずに済みますが、雪や泥地ではグリップが効かないばかりか、キャップ自体が脱落しかねません。

季節の変わり目は体も心も油断しがちです。
リュックサックにはレインウェア、ヘッドランプの基本装備に加え、防寒着、防寒用の手袋や帽子も忘れずに。

せっかく春の山に来たのですから、デジタルカメラを使いこなしましょう!。
花の接写なら設定はマクロモード、フラッシュOFF、両脇固めてチャレンジ。
雄しべや雌しべ、花弁のどこにピントが合うか、何枚も撮ることをお勧めします。
 

今回、春山の楽しみ方と注意点を教えてくれたのは「加藤ガイド」

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加藤 智二(かとうともじ)
公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師
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1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
好日山荘登山学校校長のご挨拶

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!