みなさんこんにちは。おとな女子登山部のつじまいです。
新型コロナウィルスによって私たちの生活が脅かされてから2度目の夏を迎えようとしています。
コロナ禍の雷鳥沢キャンプ場
私は好日山荘に入社以降、休日はほとんど毎日のように山や岩場、クライミングジムに行く生活を送ってきました。
その生活が、コロナによってどういう風に変わったか、また変わらなかったのか。
コロナ禍だからこそ、自分自身と山の関係性を真剣に考えてみようと思いました。
みなさんはこの1年間、どのような登山をされましたか?ご自身のことを振り返りながら、読んでいただければ幸いです。
1.2020年春の緊急事態宣言
2020年度までは普通に山に行きクライミングを楽しんでいましたが、大阪府では4月7日に緊急事態宣言が発令、5月21日に解除されるまで、個人単位で不要不急の外出を自粛する要請が出されました。
山にいることがもはや日常になっている私にとっては、『登山=不要不急』という流れに多少の疑問を持ちましたが、立場的にも世間の目を気にしていたのが本音です。
会社でも自分自身でよく考えて行動するように、という話がありました。
ちょうどその頃、勤務する店舗ではなく、月の半分くらいは神戸にある本社での勤務となり、たまに仕事帰りに誰もいない六甲山でナイトハイキングするのが楽しみでした。
夜景が美しい六甲山
時々仕事終わりにクライミングの練習をしていたクライミングジムのグラビティリサーチは、1ヶ月半ほど完全休業。
トレーニング不足を補うために自宅にホームウォールを設置しました。おうちどあです!!(※自宅でも出来るアウトドア活動)
ただ、気を紛らわしてみても山への思いは募るばかり。。
憧れのホームウォール
2.コロナ禍での登山・クライミング
2020年5月下旬に緊急事態宣言が解除されると、徐々に登山やクライミングの自粛も緩和されるような風潮となりましたが、やはり人の多いエリアなどは避けました。
まわりの仲間の間でも、人に会うことがほとんど無い沢登りが流行っていました。
おとな女子登山部メンバーと沢登りを楽しむ
山は色々なことに思いを馳せることの出来る場所
唯一、夏に剣岳へ登山した時に人が多いな、と感じましたが、テント泊でバリエーションルートだったので、他人と接触することはほぼありませんでした。
夏山シーズンにアルプスへ行ったのは剱岳だけでした
3.開拓クライミング
この頃から国際ルートセッターで岩場開拓のプロである東(ひがし)秀磯(ひでき)さんと、人混みを避けてほとんど忘れ去られた岩場を巡る機会が多くありました。東さんが昔の「岩と雪」の記事を拾ってきて、次はこの岩場へ行こう、と連絡をくれるのが楽しみでした。
武庫川オベリスク、小和田山、笠形山・・・どれもヤブの中を分け入ってたどり着くような岩場。
今ではほとんど記録のない武庫川オベリスク
ネットから記録を拾ってGPSログを辿って行くような登山やクライミングしか知らない私にとって、そんな秘境のクライミングは冒険のように思えました。
その流れで、一緒に岩場の開拓をしてみようとお誘いをいただきました。
一つは、東さんが既に開拓された非公開の岩場で、空いているスペースがあるからここにルートをつくろう、ということでした。
ぶら下がりながらのボルト打ちを初めて体験しました。
初めてのボルト打ち。一生忘れられない思い出。
秋には海岸にある岩峰を登りにいきました。これは既存のルートがあって初登は叶わなかったのですが、素晴らしい一日でした。
東さんからはクライマーにとって大切なことをたくさん教えていただきました。
『初登』というのは、世界で自分ひとりだけがなせること。
そして、そのルートは自分が死んだあとも生き続け、たくさんの人が登る。だから、他の人がつくったどんなに難しいルートより自分のルートを作って登りたい、とおっしゃったのが印象的でした。
金床の鼻で辺境クライミング
コロナ禍だからこそ、こんな希少な経験ができたのだと思います。
4.冬の緊急事態宣言
冬の緊急事態宣言下では、春とは様子が違っていましたが、同様に登山の自粛をお願いした自治体もありました。
私自身はアイスクライミングをメインに山に入っていましたが、賑わう山小屋を横目に、雪中キャンプ。
毎週のように行ったアイスクライミング
冬の間、アイスクライミング目的で濁河温泉へ一度だけ宿泊まりで行きました。平日だったこともあり民宿の宿泊者は私たちだけ。
夏山シーズンには山小屋がピンチだと取り沙汰されましたが、登山口や山奥の民宿も大きな痛手となっていることを改めて知りました。
宿のおじさんは、「今シーズンまだまだ登れるから、またおいで」と見送ってくれました。
あの愛情でいっぱいの民宿に、これからも泊まりにいけますように。
大好きになった岐阜県・濁河温泉【湯の谷荘】
5.山に行く上で気をつけていること
私がコロナ禍で気をつけているは、「人が少ない山」に行くことだけではありませんでした。
もちろん、日常生活では外食を控えたり、公共の場所で長居しないことなどは言うまでもありません。
移動には必ずマイカーを使ったり、一緒に山に行くパートナーは自分の行動に責任を持てる人に絞っていました。
今でも、山に行くときには第一に地元の方の感情を考えなければいけないと思っています。
自分自身の体調管理は大前提としますが、地元・自治体がウェルカムなら胸を張って登山していいと思うんです。
秋に訪れた九州のキャンプ場は関西からの私達を歓迎してくれました
また、クライミングを行う上でも配慮したことがあります。
それは、医療体制に負担をかけないこと、つまりは頑張りすぎないことです。
普段より登るグレードを少し落としたり、自信が無ければトップロープにする、等です。
自己責任とはいえ、常に『安全』を意識して行動していました。
おとな女子登山部メンバーとの小川山クライミング
6.コロナによって変わった考え
今まで以上に山について考え、どうして私は山に行きたいのか?と考えるようになりました。
身近なところでは、コロナがきっかけで山の世界を離れた人もいます。でも私は今までと変わらず真正面から山と向き合いたいと思いました。
山に入ると、マスクをとって美味しい空気を思う存分吸えます。
何より、山に入ると日常の嫌なことがすっぽりと消えてしまいますよね。
コロナがあって、そんな山の素晴らしさをより一層感じるようになりました。
多くの方々が、コロナ禍で心身の疲れを感じておられるのではないでしょうか。
そんな時は誰もいない山の中で、マスクを外し思いっきり深呼吸してみてください。
帰るころにはきっと、気持ちが前向きになっているはずです。
自然の中にいることで心身の健康を保つことができる
普段勤務している大阪の店舗では、大都市ということも影響してお客様がかなり減りました。
それでも来てくれるお客様にたいして、今までよりもお一人お一人に接する時間が増え(ソーシャルディスタンスは保ちながら)、たくさんの山の話ができるようになりました。
私は登山用品を販売するのが仕事ですが、山の素晴らしさを伝えることも同じくらい大切なことなんだと改めて気付かされました。
混雑を避けた登山をしよう
これからもコロナと対面して行かなければならない状況は続きますが、登山者がうまく分散すれば、もっと山にも行けるようになるはず。
私にできるのは、混雑の無い登山を目指して『あまり知られてはいないけど、いい山』をお客さまと共有することです。
私は今後もコロナと向き合い、山に登り続けたいです。
つじまい(好日山荘おとな女子登山部)
奈良県生まれ。26歳の頃に屋久島を訪れ、登山に目覚める。2018年夏に、焼岳~親不知まで13日間かけテント泊単独縦走を行う。好きな山域は、屋久島、北アルプス、奈良大峰。ジャンル問わずクライミング活動に休日を費やす。2021年現在、好日山荘グランフロント大阪店勤務。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・奈良山岳自然ガイド協会所属。
※感染拡大を防ぐための適切な措置を講じながら登山・クライミングを行っています。
※この記事は2021年2月にヤマケイオンライン掲載分を一部変更・更新して掲載しています。
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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