全国各地で山開きとなり、本格的な夏山のシーズンとなりました。昨年(2020年)の夏は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、アルプスなどでの夏山登山を控えた方も多いかと思います。
今回は普段から山に入り、職業としても山を歩く好日山荘登山学校の加藤智二ガイド、田中敦ガイド、旭立太ガイドの3名に今年のアルプスに関してヒアリングし要点を纏めました。
これから夏のアルプスで登山を楽しむ予定の方、計画を立てる方は参考にしてみてください。
Q、アルプス登山に関して、去年と今年で異なる印象を受けた事は?
【加藤ガイド(以下:加藤)】5月、6月と燕山荘に宿泊しましたが、その時は落ち着いたお客さんのいりでした。山小屋もしっかり対策と準備をしており、WEB予約のシステムが増えてきました。
【田中ガイド(以下:田中)】普段勤務する白馬店でお客さまと接していると、昨年は初心者の方が体力不足で予定通りに行動出来なかったとか、ちょっとした雨でも登山を中止する方が多かったですが、今年はシーズン前からしっかりと準備をして楽しもうという方が増えた印象です。
【旭ガイド(以下:旭)】最近になって登山を始めたのかな、という人が増えた。皆さんイキイキと楽しんでいるようで、とてもよい事だと思います。若い登山者も増えた印象で活気を感じます。ただ、装備は充実しているが歩行やパッキングの技術が伴っていない方が多い気がします。
Q、山小屋やテント場、登山道などは?
【加藤】小屋は勿論の事、テント場も時期によっては完全予約の所が多い印象。キャパシティも小さいので縦走登山で予約がうまく取れるか否かで、計画や行動が変わる可能性があります。急な予約のキャンセルや、遭難するような悪天候による予約なしの急な宿泊希望が出た時の山小屋の対応が問われるかもしれません。
【田中】(山の上での話しではないですが)白馬での登山者の行動パターンとして、今年は下山後に現地観光や食事、温泉などを楽しんで帰るという、コロナ禍以前のような楽しみ方をする方が戻ってきている印象です。
【旭】昨年は山に人が少なく、登山道でのすれ違いもスムーズでした。テント泊が増えた事によって、山小屋は比較的空いている。予約さえ取れれば山小屋も人数制限を行いパーソナルスペースをしっかり確保できるので、快適に過ごせる。
Q、計画と準備におけるワンポイントは?
「計画や装備に関して」
【加藤】登山道の道普請が十分でない所もありそうです。十分な装備と時間に余裕を持った計画を立てて下さい。また山小屋やテント場の予約の変更・キャンセルは早めに。予約を取りたくて待っている他の登山者もいます。山小屋泊では「インナーシーツ」を持参しましょう。さらには小屋によっては歯磨きが出来る洗面所の閉鎖を余儀なくされている所もあるので、携帯用の口腔ケア用品があると安心です。
【旭】まずは計画時に「登山の目的」を明確にする事が、その目的達成するための装備を精査するポイントになります。一つの山行でやりたい事が多いと、その分荷物も多くなり費やす時間も多くなります。シンプルにするとスピーディーでスムーズな行動ができて、山そのものを楽しむ事ができます。
Q、久しぶりにアルプスを登る方に、準備段階におけるフィジカル面でのアドバイスは?
【加藤】計画を立てる前に、しっかりと歩きこみが出来ているでしょうか?計画の2週間前くらいに、想定している装備を背負って6~8時間ぐらい山を歩いて自分の体力を把握し、他人の記録ではなく自分の行動時間を見積もっておきましょう。
【田中】トレーニングとして、レベルを落とした山に行くのが一番だと思います。登山は体力、経験も重要ですが、リスクに気がついたりする感覚を持つのも重要です。これは、筋トレやランニングでは養えないので、やはり登山をすることで体力と合わせてそういった感覚を取り戻すのが大切だと思います。
【旭】本番と同じ以上の重さの荷を背負って登下降のトレーニング。本番以上の負荷を練習でかけておけば、余裕を持って楽しめます。暑い日の登山も練習には良く、熱中症対策や紫外線対策などのマネジメントを行う。避けるだけでなく、あえてその環境下でリスクを軽減する手段を体感して知る事も大切です。
Q、最後にメッセージを。
【加藤】日本のような複雑な山岳気象において、一言で「天気が良くないから」と山小屋をキャンセルするのではなく、現地の気象を勘案して最適な登山計画を練り直し、変わりゆく気象条件の日本山岳を実体験してもらう姿勢も大事です。山小屋経営も大変である事を知っておいて下さい。
【田中】ネット情報を鵜呑みにしない。自分の体力、装備、経験を過信しない。感染症に気を取られ過ぎてしまい、山にもともと存在しているリスクに気が付かなくならないように。
【旭】山の中でスマートフォンばかり見ている人が多いです。登山地図を使った方が、その山域の概要も分かり大きな視点で山を楽しめます。せっかくの山、オフラインで楽しもう!
まとめ
如何でしたでしょうか?この2年間リモートワークになったり、休日も外出を控えて巣篭り中心のライフパターンとなった事で登山のブランクがある方も多いのでは?自分の感覚や経験則を過信せずに、「余裕を持った計画」と「今の自分の体力を知っておく事」などが肝心です。
併せて夏の登山を楽しむ為には、装備・道具の準備計画も確実に。
お店のスタッフにも色々とご相談下さい。
答えてくれたガイドのプロフィールはこちら
*文中に掲載している画像は過去の物となります。
画像提供:旭立太ガイド
構成・編集:【好日山荘マガジン】菰下
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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