ガイドコラム

登山×防災 命をつなぐ「水」を手に入れるための浄水器

 2020年は新型コロナウイルス感染拡大によって登山活動も自粛状態です。とはいっても自然災害はいつ起きるかはだれも予測付きません。登山が再開されたとしても、山奥に於いて水の入手が今までより困難になるかもしれません。

 今回は登山アクティビティにおいて欠かすことができないアイテムが災害時にも活躍することを紹介しています。

 合言葉は「登山防災・自助・共助」です。

 初回は「水」一人が健康に生活するのに必要な水の量は3リットルといわれています。

 日本では水と空気はタダといったことが普通に感じられるほど、綺麗な水と豊かな森林に恵まれています。各地にある「名水」や清らかな沢水で喉を潤したことは数えきれないほどです。新型コロナウイルス感染予防における洗浄において、豊富な水があることがとてもありがたく思っています。

登山に於いてはどうでしょうか?この夏以降の登山が再開された場合でも山間地における「飲み水」入手は地域によっては厳しい状態になることも予想されます。たとえテント泊が可能であったとしても、山小屋がテント場への「引水」をできるかどうかは微妙であることは容易に想像できます。

ハイドレーションも3リットルタイプも需要が高まりそうです。3リットル以下なら自由に入れられますから。 ⇒ こちら

軽量コンパクトな「light&fast」といった従来のインフラをあてにした登山ができないケースも出てくるとかと思います。水を2~3リットル背負い、水場を往復するといった行動も必要になってきます。一方、北海道におけるエキノコックス汚染(キタキツネ由来)された水、水量が少なく土壌表面を流れ汚染が懸念される水を利用せざるを得ない場合もあります。その場合は煮沸を十分に行うか、これからご紹介する「浄水器」を活用しなければいけません。

35リットル程度のザックで行けた夏の小屋泊アルプスが、「シュラフ持込み」など、荷物が増えることも考えられます。テント泊なら大型ザックも必要になるかもしれませんね。

50リットル以上の大型ザック ⇒ こちら

ソーヤー SAWYER 携帯用浄水器 スクィーズ フィルター SP131

 原水パウチ2Lと浄水器とリザーブタンクを連結し、あとは重力に任せるだけなので非常に手軽でした。

 今回、滋賀県と福井県の県境、「高島トレイル」使用してみました。原水は綺麗でしたが「ニホンジカ」など多く生息しているうえ、土壌表面を水が流れている状態でした。

 様々な雑菌のことを考えると「浄水器」使用したいな、と感じました。料理に使用するなら煮沸するので安心ですが。目に見えて濁っているケースを考えて「コーヒーフィルター」を持っていきましたが今回は使いませんでした。新品である点&原水に固形成分が無い点、は考慮に入れるべきですが、浄化スピードは早く2Lは3分程度で完了でした。

 実際に使ってみた! ⇒ こちら

今回は原水は2リットルの付属パウチパック、浄化された水は透明なプラティパスに貯めました。個人的にきれいな水は見えた方が安心なので。スクリューキャップは一般のペットボトルと規格が一緒なので汎用性があります。(念のため液漏れがないか確認をお勧めします。)説明書には原水用と浄水用を分けるよう注意書きがあります。購入後マジックなどで自分でマーキングしておくことをおすすめします。

パッケージ内容

雑菌で汚染された水でお腹を壊すのは辛いだけでなく、脱水症状から命を脅かすことにもつながります。周りの環境を自分の汚物で汚染するなんて考えたくはないですね。

地球規模では汚染された水で命を落とす人々が多いのは事実なのです。
Yahoo!ニュース 実は24億人が安全な水を飲めず、経済負担も大

  •  自然災害時、飲み水確保について考えてみたいと思います。身の回りにはどのような「水」があるでしょうか。
    1:風呂の貯め水、
    2:壊れた浄水管から溢れて溜まっている水、
    3:見た目にきれいな河川水
    4:雨どいから集めた雨水
    といったところでしょうか。

通常生活では一人につき3リットルの飲料水が必要といわれています。家族4人なら12リットルですね。

家庭での買い置きを考えと2リットルペットボトルが6本入ったケース買いでしょうか。一般に3日分が目安と言われていますので3ケースが家の中を占拠することになります。家にストックして置くなら不可能ではないですね。

 もう一点忘れてはいけないのが水の重さです。1リットル=1キログラムです。つまり、自宅以外に避難する場合は家族が大切なものを持ち出せば、当面の数リットルを持つのが精いっぱいなのです。

2020シーズンの登山では水場チェックの重要性は高まります。

登山では常識ですが登山行程での水場チェックは欠かせません。必要以上の水を背負うということは、それだけ体力を消耗することになります。現地調達という発想は欠かすことができません。

携帯型浄水器だからといって浄水機能が劣るとか心配はありません。何といっても適正に使用する限り380万リットルもの浄水をつくることができるのです。この装置が100グラムも満たないカートリッジなら災害時に持ち出す「非常用バックパック」に入れておくべき重要アイテムであること間違いありません。

安全な水! 家族や仲間の命を繋ぐ「携帯型浄水器」をチェックしておいて損することはありません。

ヤマケイオンラインの記事

 

この記事を書いたのは「ガイド 加藤智二」

ガイド 加藤智二

公益社団法人日本山岳ガイド協会 認定山岳ガイド
日本プロガイド協会
日本山岳レスキュー協会所属
国立登山研修所講師

1960年生まれ。高校では小学校から続けるサッカーに没頭、キャプテンを務めました。
住み込みで新聞配達をしながら専門学校に通い、一人で山を始めました。卒業後、社会人山岳会に入り沢登り、岩登り、冬山など本格的に登山を開始、84年にネパールを皮切りにパキスタン、中国へ海外登山を行いました。
冬山登山や岩登りも行いますが、植物・地質など自然全般が大好きで、写真撮影も得意としています。
広範囲な登山を目指すことをモットーとしています。
現在は国立登山研修所講師や公益社団法人日本山岳ガイド協会などの事業への協力を行っています。

≪主な海外山行≫
■パキスタン ガッシャーブルムⅡ(8035m)
■中国 チョーオユー(8201m)
■日本・中国・ネパール三国合同チョモランマ・サガルマータ(8848m)

≪関連ホームページ・ブログ≫
■好日山荘登山学校校長のご挨拶

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