安達太良山紅葉登山と麓をちょい旅 ~好日山荘100名山~

 

好日山荘100名山「安達太良山」

好日山荘創業100周年に向けてみなさんと選んでいる「好日山荘100名山」。2020年の投票で、96座目に決定したのが福島県の「安達太良山」です。日帰りで初心者でも一緒に登れるとしておすすめしたい山というのも選定基準のひとつ。体力に自信が無い私でも登ることがきっとできる!と行ってきました。

登山口まで向かう車内から見えた山の全容。ロープウェイ山頂駅と「安達太良山」と言えば、のぽこっと出た頂上が目印。

奥岳登山口→安達太良山ロープウェイで山頂駅へ

安達太良山(あだたらやま)は、福島県中部にある活火山。東北地方の磐梯朝日国立公園のひとつとして数えられ、深田久弥の日本百名山にも選定されている日本を代表する山です。今回は標高950m奥岳登山口からスタート。幾つかあるなかの一番メジャーなルートです。人気の理由は高原スキー場の「あだたら山ロープウェイ」山麓駅から一気にロープウェイで1350mまで上がることが出来ること。

なだらかな山容、麓が見え、最後はギュッと高度が上がって10分ほどで到着。ロープウェイさんに感謝!

「ほんとの空」に近づける山

高村光太郎詩集「智恵子抄」に謳われた「ほんとの空」は阿多多羅山の上の青空。この山に登れば、ほんとの空の一番近くに行けるかな、と出発前から思っていました。麓はそんな空が見れる予感がしていたのですが、少し雲がかかってきました。頂上では晴れてくれることを祈りながら、樹林帯の木道から歩きはじめます。さっそく、ナナカマドの実が盛りだくさん!紅葉した葉っぱもむかえてくれました。

すすむにつれ、福島県の県花である「シャクナゲ」の木が多いことに気づきます。登山道そばの木が近いこともあり、春にはとても間近で花が楽しめそうです。この日は、昨日の雨でぬかるんでいたこともあり、自然と下を向きがちに。しかしそんな足元にも、気になるものが!蔓のところどころに薄いムラサキの花をつけたツルリンドウを見つけました。少し先の別の場所では艶のある長丸の実を付けているものもありました。両方見れてラッキーです!他にも、ゴゼンタチバナの赤い実やピカピカのイワカガミの丸い葉も発見して、春から夏にかけてもさまざまなお花がむかえてくれると感じました。不安定な足元を通り過ぎたい一心で黙々と歩き、ふと気が付くと、登山道は次第に視界が広がって、岩や石がゴロゴロとしてきました。生えている木なども今までと違ってきたようです。

花は小さくてなかなか見ることができないというガンコウランの実とハイマツの松ぼっくり。

出発から2時間ほどで、ようやく頂上が近くに!長く続く稜線も綺麗に見えました!

安達太良山 頂上1700m到着しました。

この日の「ほんとの空」。晴れてくれてよかった。

登ってくると、西側の景色がようやく見えました。和尚山への稜線。安達太良山は、南北にいくつか山が並ぶ複合火山安達太良連峰に位置します。那須火山列のひとつと数えられ、一部の登山道ではガスが発生し、立ち入りが禁止されているルートもあります。頂上付近は火山活動で植物はほとんどなく、いろんな種類の岩が目立ちます。

頂上から10分ほど歩いたところで、突然違う世界が急に目に入りました。「沼の平火口」直径1.4kmの大火口。1900年の新火口がほぼ中央にあります。植物も生えていないことからも、火山噴火のすさまじさを感じるスケールの大きすぎる風景。想像以上の大迫力でした。

くろがね小屋へ

峰の辻を経由してくろがね小屋に向かって行きます。
下ってすぐ、牛の背と呼ばれる稜線が下から見えました。なだらかにまた違った景色が見えてきました。奥に見えるのがくろがね小屋のうえにあるという鉄山でしょうか。先を急ぎたくなります。頂上とは違い、一気に植物も増えます。ナナカマドもすずなり。前方には、赤一色で紅葉した一帯が見えました。ナナカマドの群生と思われ、まとまるとほんとに綺麗です。あちらにも登山道が通っているのですが、次回秋に来りことがあれば、赤くなったなかを歩いてみたいです。
ところどころに岩があります。頂上で見たものとも違って折り重なった形状がおもしろい。
先の道をしめしてくれるのも岩です◎。
いよいよ進んでくると鉄山が近づいてきました。あと少しです!!
頂上から約1時間で鉄山の真下、くろがね小屋に到着しました。

くろがね小屋

温泉の香りの漂う一帯にあるくろがね小屋。名前の由来は鉄山からきているそうです。この日も小屋のなかで休憩する方、お手洗いをお借りしたり、安達太良山登山にはなくてはならない存在です。岳温泉の源泉に一番近いかけ流し温泉のある山小屋として通年営業をされています。お土産に手ぬぐいを購入!2013年冬、好日山荘の店頭で配布していたフリーペーパー「GUDDEI research」(グッデイ・リサーチ)の表紙の写真を見てから、一度は来てみたい山小屋でした。そのことを山小屋の方にお話しすると覚えていてくださり、「今度は泊まりにおいで」と親しみを込めて言ってくださいました。今度は泊まりに来ます!温泉にも入りたいです。ありがとうございました!くろがね小屋 https://www.tif.ne.jp/kuroganegoya/

ご予定の際には、必ず事前に情報を収集してください。福島県による建て替え工事の予定があるため、令和5年3月31日までの営業となり、その後の予定は決まり次第告知されます。

 

紅葉を見ながら下山

くろがね小屋で休憩した後は、紅葉を眺めながらの奥岳登山口までの道のりです。この日歩いた中で一番この季節らしい道です。

黄色がとてもきれいな紅葉です。くろがね小屋も離れてみると一段と山深いところにあるとあらためて感じます。温泉地にはつきものの湯気と湯の花。登山道のそばにいきなりあると思わずパチリ。登山中、見かけなかった水がしみだして溜まっているところもありました。馬車道を下って秋を満喫しながら奥岳登山口まで無事に到着しました。

地図や情報だけでは分からなかった安達太良山のたくさんの表情を見ることができて、充実した登山となりました。紅葉はもちろん、季節を変えてたくさんの花も見てみたいです。地球規模の火山、噴火のスケールの大きさにも触れ、登山出来ること、温泉の恵みもありがたいものと感じました。盛り沢山で楽しめることいっぱい大満足の安達太良山、おすすめの山です!

好日山荘100名山 http://www.kojitusanso.jp/100mt/

好日山荘が2024年に向けて100座を決める「好日山荘100名山」。今回の安達太良山は96座目。地元の山、登ったことのある山は入っているでしょうか。次の登山の計画、旅の計画にも入れていただけると幸いです。

 

岳温泉安達太良山について https://www.dakeonsen.or.jp/adatarayama

安達太良山ロープウェイ http://www.adatara-resort.com/green/express.stm

※2021年秋は、11月7日まで毎日運行。11月2週目からは土日のみで12月1週目までの運行になります。予定を立てられる際は情報を事前にチェックしてください。

くろがね小屋 https://www.tif.ne.jp/kuroganegoya/

 

登山だけじゃもったいない!麓で楽しめるちょい旅ショートバージョン!

風景印 岳温泉郵便局にて

郵便物に押される消印の種類に「風景印」というものがあるのをご存知でしょうか。郵便局のあるその土地のシンボルや名産品などをデザインしたものです。いろんな図柄があり、登山に行くまえに最寄りの郵便局に風景印があるか調べ、山のデザインが入っている場合は立ち寄るようにしています。
今回は、安達太良山の麓にある「岳温泉郵便局」で風景印をもらいました。もちろん安達太良山とシャクナゲが入ったデザイン。63円以上の郵便物に相当するハガキや切手があれば、投函しなくても押印いただけます。郵便局員さんが慎重に押してくださいました。

岳温泉郵便局 https://map.japanpost.jp/p/search/dtl/300182327000/

 

土湯温泉とこけし

安達太良山のまわりには温泉がいくつかあります。時間をつくり、是非どこかには立ち寄りたいものです。今回は、古くからの温泉街、土湯温泉に行ってみました。川に沿って旅館が点在しています。土湯温泉は、鳴子、遠刈田と並ぶ三大こけし発祥地と言われています。「土湯こけし」は街のシンボル。お土産のこけしをみつけるべく、温泉街のなかの「まつや」さんへ。こけしの作り手を「工人」と言い、まつやさんには、阿部国敏さんがいらっしゃいます。店頭で技を見ることは出来ませんが、店内には地元の工人さんの作品を中心にいろんなこけしを見ることができます。

お店の方に教えてもらった土湯こけしの特徴は、クジラ目にたれ鼻、おちょぼ口。胴体はボーダーのろくろ模様。首を回すと「キィキィ」と愛らしく鳴くはめ込み式で出来ています。なんだか目が合って、気に入った右側のこけし。なんと88歳の工人今泉源治さんが今日ご自身で納品されたそうです!この子をお土産にえらびました。土湯温泉観光協会公式サイト https://www.tcy.jp/

土湯温泉こけしの魅力 https://www.tcy.jp/kokeshi/

土湯温泉で出会ったこけしたち。

取材日:2021年10月14日 感染対策を講じ、安全安心な登山・旅を心がけ取材を行いました。

文&編集&写真●関本 亜紀

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!