京都一周トレイルを知りつくしたマイスターと歩く 嵐山から高雄

 

嵐山 渡月橋からスタート

京都を三方囲む「京都一周トレイル®」。5つのコースがあり、様々な場所を起点として自分の体力などに合わせてアクセスできる魅力的なトレイルです。山歩きだけでなく、歴史的な寺院などにも立ち寄れたりと贅沢に楽しめます。今回は、秋にぴったりなコースを京都一周トレイルを知りつくした京都一周トレイル会の竹内さんと馬場さんにご案内いただきました。

京都嵐山と言えば、の定番の桂川の景色を楽しみながら歩きはじめます。朝早いスタートは静かで空気が澄んで清々しいです。桂川のほとりには紅葉シーズンの屋形船の準備をすすめている方々も。

京都三大銅像 角倉了以氏

京都一周トレイルの標にそって、川沿いを離れ、亀山公園へ入ります。色づいた紅葉がきれいな石段を登っていくと、竹内さんが教えてくださった京都三大銅像のひとつ 角倉了以氏の銅像があります。

角倉了以氏 安土桃山・江戸初期の豪商。朱印船貿易などで財をなしたと言われています。大堰川(桂川)・高瀬川・保津川を開削した人物。凛々しい姿で、右手には鍬を持っています。マメ知識:京都三大銅像のあと二つは「高山彦九郎像」、「坂本龍馬像」と言われています。

小倉山から伸びる屋根で山の形が亀に似ていることから、亀山公園の由来になっているそう。公園内には周恩来氏の「雨中嵐山」詩碑もありました。

誰もが見たことのある定番の景色

少し登ると、ポスターや映像で幾度となく見たことのある山の合間を流れる川を下る船の風景が。ここからの眺めだったんだ!

対岸の旅館へ行くには船で川を渡って・・・素敵なストーリーです。いつか泊まってみたい!?

眺望を堪能したら、亀山公園をくだり、嵯峨の中心へ。嵐山の象徴的な竹林の小径。高く伸びる竹に囲まれた別世界です。

御髪神社入り口そばの小倉池はハスでいっぱい!花のあとの種が残っていました。この蓮は常寂光寺の住職が植えられたものだそう。夏の時期は花がとても美しいと 馬場さんが教えてくださいました。落柿舎 松尾芭蕉の弟子・向井去来の別荘として使用され、周囲の柿が一夜にしてすべて落ちたことによりこの名前になったと知られています。柿、実ってました!小倉山の麓にあたるこの周辺の地域で小豆を栽培し砂糖を加え煮詰めた餡が小倉餡の由来とされているそう。

中心地から、嵯峨野の落ち着いた街並み 鳥居本へ

国の伝統的建造物群保存地区に選定されている嵯峨の山里らしい町家が立ち並んでいます。左には小倉山、右には五山送り火の鳥居を有する曼荼羅山の間の道を進んでいきます。素人な私は、鳥居形を見たい!と簡単に思っていたのですが、山のこちら側の麓ということと、木などが茂り、残念ながら送り火の時以外はなかなか見えないものだと教わりました。こちらの道沿いの左手に続く高い石垣は、石塔や石仏で知られる化野念仏寺。

鳥居本

愛宕神社参道の集落を鳥居本といい、赤い大きな鳥居は愛宕神社の一ノ鳥居になります。左手へ進み、落合へ。この辺りからは、静かなトレイルのはじまりです。さきほどの鳥居本の愛宕神社の一ノ鳥居から六丁(約650m)に位置する六丁峠まで少しのぼりが続きます。峠を越えると、「あそこに見えるのはトロッコの保津峡駅だよ!」と竹内さんが教えてくれました。さきほどの街なかとは真逆の山深さです。さらに下ると、落合橋に出ました。落合は、大堰川(保津川)と清滝川が合流する地点にあたります。 こちらを渡り、トンネルをくぐるとキラキラした川が見えてきました。 保津川下りの船が見えるビューポイントで小休止。ここから真下の川辺にまでおりることができ、船も間近で見ることができます。この川原は、映画やドラマの撮影に度々使われる場所だそう。先日放送していたドラマに登場した岩場もここで撮影したのだとか。

休憩のおやつは馬場さんがおもてなししてくださいました。ごちそうさまでした!

澄んだ水のそばのトレイルへ

小休止後は、清滝川の金鈴峡までくだり、流れに沿ったトレイルを歩いていきます。水辺近くにおりた途端から水の透明さにびっくり。深さによって、光も加わると水の色が緑や水色に見え、とても嵐山から歩いてこれる場所とは思えないほどの風景に出会うことができます。思わず河原まで近づいてじっと眺めてしまいました。夏なら即ジャボーン!と入っちゃう!?川のそばのトレイルの分岐、落合から水尾へ通じている道は、米買道(こめかいみち)と言われ、清滝の土地で稲作する場所がなかったため、米をはじめ、生活物資を運ぶための大切な道だったそう。川と橋はセット。こちらは落合の潜没橋。清滝川の地形にそって、澄んだ水に癒されながら自然と足がすすみます。

渓流沿いの道もアップダウンがありながらも、見通しが良くきれいに整備され、ストレスなく景色を楽しみながら歩けます。

清滝から高雄へ

渓流沿いに歩くと、橋が見え渡ると上流にも橋が架かっているのが見えてきました。水の流れに沿ってトレイルがあるため、橋との遭遇率も自然と多くなります。この時期は紅葉がとてもきれいです。京都一周トレイルのルート上には、要所でマップが掲げられています。わかりやすいルートとはいえ、地図と道標で現在地を把握しながら進みましょう。

愛宕山の登山口

清滝は、火伏せの神が祀られている愛宕神社が頂上にある愛宕山の登山口です。清滝までは京都駅からバスも通って、駐車場もあり登山の拠点となっています。こちらが愛宕神社の二ノ鳥居。

愛宕山の西の柚子の里、水尾の柚子が売られていました。もちろんお土産にゲット!さわやかないい香りです。お家で後日ジャムを作りました!!清滝川の辺りには、ゲンジボタル、カジカガエル、オオサンショウウオが生息。あれだけ綺麗な水のあるところだと、それも納得です。一度でいいから自然の中にいるオオサンショウウオを見てみたい!と言っていたら、馬場さんに「見たことあるよ~」と言われちゃいました。何度も来ていると会えるかも?

清滝川を北上する清滝から高雄の渓谷は錦雲渓と呼ばれ、ずっと水の流れを感じながら歩いていきます。

北山杉

急に雰囲気が変わり、まっすぐにのびる静かな杉林がありました。京都北山の名産として知られる北山杉です。

伐採された木の切断面、意識して見たことが無かったのですが、段差になっていました。山側の半分は下を切り、逆は上を半分切り、自然と山側に倒すため、このような形に切るんだと竹内さんが教えてくださいました。なるほど!!

ようやく高雄に到着です。高雄(尾)、栂ノ尾、槇尾は、三尾といわれ、いずれも京都を代表する紅葉の名所として知られています。トレイルからちょっとよりみちできる場所として、鳥獣人物戯画が有名な世界遺産の高山寺など寺院を参拝するのもおすすめです。(こちらは好日山荘河原町店内の鈴木みきさんイラストの壁画です)高雄は、タカオモミジといわれる紅葉がピークで美しい色でした。今回は京都一周トレイル北山88の道標で終了。観光地として有名な嵐山、嵯峨野からはじまりましたが、思ってもみなかった渓谷と水の美しさと紅葉を楽しめ、とても充実した一日となりました。ひとりで歩く京都一周トレイルは、道標だけを追うことに必死になってしまい、ここだけでしか見えない風景を見逃していました。京都一周トレイルを良く知るお二人と歩け、いろんなことを感じることができました。竹内さん、馬場さん、ありがとうございました!京都一周トレイルに行きたい!と思ったら、まずは予習と情報収集のためにこちらでチェックすることをおすすめします。情報が満載過ぎて、行き先迷ってしまうかも?

京都一周トレイル®公式ホームページ https://ja.kyoto.travel/tourism/article/trail/

京都一周トレイル会

京都一周トレイル会パトロールスタッフは担当のルートを歩き、危険箇所が無いかも含め、整備を行っています。お二人のお荷物のなかには、すぐに整備が出来るように道具が用意され、取材を行ったトレイル上にも、すでにメンバー内で情報が共有されている整備が必要と判断された箇所が2ヵ所ほどありました。現場では現状を把握し、スピーディー判断し、手早く整備を実施していました。ささやかながらお手伝いさせてもらいましたが、重労働!みなさんの活動に頭が下がります。このような活動は、京都一周トレイルの地図の収益から費用が捻出されています。

今回案内してくださったマイスター

京都一周トレイル会 京都府山岳連盟トレイル委員長 竹内光雄さん

京都一周トレイル会だけでなく、地元の自治会長もされていると聞いて納得の安心感と存在感。整備の時も頼りになる凛々しさで、鋸つかいは明らかに超人!眼にもとまらぬ驚きのスピードで木が切れていきました。色んな事を教えてくださりありがとうございました。

京都一周トレイル会 馬場好子さん取材前日もトレイルの整備に行っていて、この日もとにかく元気に歩かれていました。そして、馬場さんがいらっしゃるとその場の雰囲気が明るくなるムードメーカー的存在。いろんなものが登場する小さいリュックはまさに玉手箱!30年間で愛宕山を1000回登頂したという偉業を達成されている達人です。神社からいただいた大切な笏を見せてくださいました。愛宕神社の「火迺要慎」(ひのようじん) のお札も持ってきてくださり、頂戴いたしました。台所に貼らせていただきました。ありがとうございました!

馬場さんの愛用品とバックパックから出てきたコレクション!京都一周トレイルのパトロール以外の活動にも参加されています。
バックパックのサイドポケットに持っているのはマイ鋸!シューズはSIRIO P.F.116-2ブラックをご愛用。とても足に合っていて履きやすいとのことで、先日も2足購入したのだとか。いつもご利用ありがとうございます!

ちょっとちょい旅 京都一周トレイルお立ち寄りどころ

京都のパン屋さん パン処太陽

今回のトレイルのお昼ご飯を考えた時に、一人あたりのパンの消費量が多いといわれる京都に行くならやっぱりパンでしょう!ということで、朝早くからオープンしているパン屋を念入りにリサーチ。嵐山近くに興味の湧いた店舗がひとつありました。

嵐電鹿王院駅からほど近い住宅街のなかに溶け込んだ店構えの「パン処太陽」。外から覗き込むとコンパクトなお店ながらも、朝からずらりと多くの種類が並んでいました。さくっと上がった一番人気のカレーパンもあれば、小ぶりなのにたっぷり中身が詰まったあんパン、綺麗につくられたクロワッサン(さくっとバターの風味が良くて抜群!)、家に持って帰れるならマーブルの食パンも欲しい!と案の定迷いました。店主の近藤真悟さんにお伺いすると、「もう少し後にハード系のパンが焼き上がります」、「どんな人が来られても買いたいと思うパンがあることを考えてつくっているんです」と教えてくださいました。京都の老舗志津屋さんや松戸の有名店ツオップで修業されたということから納得のバリエーションの多さです。わざわざ足を向けたくなるパン屋さんが一つ増えました。川のほとりでおいしくいただいたのはこのパンたち。カレーパン本格派。ヴィエノワのチョコクリームが濃厚でとても好みでした!お店のロゴもかわいい!
神戸から来たとお伝えすると、パンの話で盛り上がりました(笑)。とても気さくなやさしい雰囲気の方でパンとともにファンになりました。ハード系、プレッツエルも食べてみたい!また買いにいきます!

パン処 太陽 Instagram https://www.instagram.com/pan_taiyo/?hl=ja

京都一周トレイル鈴木みきさんイラスト答えあわせ@好日山荘京都河原町店

今回歩いたトレイル上で立ち寄ることのできた場所はこちら。ゆっくり参拝することが叶いませんでした。欲張りは禁物!山行き・旅は余裕を持って計画しましょう。天龍寺 http://www.tenryuji.com/

愛宕念仏寺 https://www.otagiji.com/

好日山荘京都河原町店 http://www.kojitusanso.jp/shop/kinki/kyoto/

気になり過ぎる嵐山嵯峨野高雄のあれこれ

取材日:2021年11月18日 感染対策を講じ、安全安心な登山・旅を心がけ取材を行いました。

文&編集●関本 亜紀

写真●菰下 了、関本 亜紀

協力●京都一周トレイル会

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!