山岳ガイドが語る冬山登山の楽しみ方と注意点-井坂ガイド

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冬の登山には他の季節とは全く異なる美しい景色や厳しさが共存しています。
そんな冬山登山の楽しみ方と注意点を井坂ガイドに聞いてみました。
(この記事は2015年冬の記事を再編集しています)

Q1.冬山の魅力・楽しみ方と言えば?

A.ルートや行程など決断力や選択が試される

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冬山の魅力は様々あると思いますが、ルート取りや行程、進退の決断を登山者自身が考え、決断し行動することができるのが1つあると思います。

登山道が雪で覆われた山は基本的にどこでも歩くことができます。
その中から安全で速く目的地まで着くことのできるルートを自分で考え、選択できるというのは夏山ではできない経験です。

また、気象条件も夏より厳しいので天候の見極めも重要になってきます。

私自身は、アイスクライミングや冬壁でのクライミングを楽しんでいます。
いつも同じ形をしている岩を登るのとは違って日によって条件の違う雪や氷を登るのは毎回新鮮で飽きません。

Q2.おすすめの冬山はどのエリアですか?

A.西穂独標 : 通年営業の小屋を利用して達成感を味わおう

厳しい環境の北アルプスで唯一通年営業しているのが西穂山荘。
新穂高ロープウェイで一気に2000m以上まで上がれるので、駅から西穂山荘まで約2時間と、アプローチも比較的楽です。

西穂山荘からはご来光が見られるので運が良ければ初日の出を拝めるかも。
西穂山荘から西穂独標へは稜線歩きとなります。
丸山までは比較的なだらかで徐々に高度を上げていきます。

独標への最後の登りはかなり急で岩が出ている場合が多いので要注意です。
急な鎖場を登りきったら西穂独標です!
西穂山頂へはまだまだ急峻な稜線を上り下りしないといけませんが、独標までだけでも達成感はひとしおです。

通年営業の小屋があるとはいってもやはり北アルプスですので環境はかなり厳しいです。
風が強い日は凍傷になりやすく、また視界の悪い時は丸山までのルートが分かりづらくなるので、無理は禁物です。

A.伊吹山 : なだらかで広い斜面では雪上歩行の練習に最適

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関西からアクセスが良く、本格的に雪山を楽しめる山と言えば伊吹山でしょう。
標高は1377mとそれほど高くないので気温はさほど低くなりませんが、日本海が近いため積雪は豊富なのでバックカントリーで遊ぶこともできます。

また、なだらかで広い斜面が多いので雪上歩行の練習にも適しています。
降雪直後はかなりのラッセルを覚悟しなければいけませんが、山頂から眺める琵琶湖は壮大です。

Q3.冬の西穂独標、伊吹山に登るために必要な装備選びのポイントは?

A.おすすめのピッケルをいくつかご紹介いたします

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クライミングテクノロジー/アルパインツアー
リーズナブルな価格ながらシャフトは強度の高いTグレードです。
ベントシャフトなので急な斜面にも対応します。

グリベル/エアーテックエヴォリューション
安価ではないですが、とにかく作りが美しいです。
手になじみやすいヘッドの形状は芸術品!長年の定番品です。

カンプ/ネーヴェ
抜群のコストパフォーマンス!
クセの無いストレートシャフトで初めての一本に最適です。

クライミングテクノロジー/ハウンドG
Tグレードシャフトのモデルとしては非常に軽量です。
ヘッドは一体成型で持ちやすく、シャベル部分がコンパクトなので女性でも持ちやすい形状になっています。
私も愛用中ですがピークハントからバリエーションまで幅広くこなしてくれます。

ペツル/サミットエボ
シャフトの形状が独特の曲線を描いていますが、これがシャフトの中間部分を持つときに効果を発揮します。
程よいベントと頑丈なピックでバリエーションルートでも使える作りになっています。

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今回、冬山の楽しみ方と注意点を教えてくれたのは「井坂ガイド」

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井坂 道彦(いさかみちひこ)
公益社団法人日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド ステージII
>ガイドコラムへ

1987年生まれ。中学時代に立山に登ったのを機に登山を始める。
山小屋で働いたのをきっかけに、穂高周辺でのアルパインクライミングを始め、ヨーロッパアルプスへの遠征も行う。
ボルダー、フリー、アイス、アルパイン等々、ジャンルを問わず幅広く楽しんでいます。

≪主な登攀歴≫
■ドロワット北壁「ジナットルート」
■モンブラン・ドゥ・タキュル「スーパークーロワール」
■穂高周辺のアルパインルート