好日山荘100名山と麓の街の魅力を探る ~藤原岳と桑名市~

アクティブに動き回りたくなる季節”夏”がやって来ました。山に登りたい、小旅行したい、美味しい物食べたい…なんて、色々欲張ってしまいがちなのは夏という刺激の多い季節だから、という事にしておくとして、しかしながらそんなに沢山のお休みは取れないのが現実。そこで今回は山とその界隈を一日で巡るプランで「山+ちょい旅」の模様をお伝えします。

今回訪れたのは・・・

先ず登る山を決めた基準は、「お手軽に登れて標高はさほど高くなくとも、楽しい稜線歩きと涼しい空気感を楽しめる所」という事で「好日山荘100名山」のページを見て・・・どこにしようか??・・・

と少しだけ(!)悩んで、”鈴鹿セブンマウンテン”の一座でもある「藤原岳」に決定。いつかは鈴鹿セブンマウンテンをスルーハイクしたいと考えている私ですが、今回は藤原岳から竜ヶ岳までの2座の稜線歩きを楽しもうとプランしたのでした。

最も気を付けたい事

当日早朝に三岐鉄道で終点の西藤原駅に降り立つも、前日夜からの雨が残りまだポツポツ。駅舎の待合室でスマホの雨雲レーダーを見ながらやり過ごす事に。この時点で2座縦走とちょい旅のプランが押し始めます。

雨も止み、仕切り直して登山口へと歩きます。駅から登山口が近いのはとても嬉しい限り。特に夏の暑い日に山に入る前に舗装路で大汗をかくと、結構テンションが下がってしまいがちなので、メンタル的にはほど良い距離感です。

さてこの季節の鈴鹿山脈で最も気を付けたい事、それは「ヒル」です。登山口にある立派な休憩所で、ヒル忌避剤をたっぷり足回りにふります。タオルにもふり首元に巻きます。

足元は、靴はもちろんソックスやパンツの裾にもたっぷりふっておきます。(その他、腕などお肌が露出している部分には、通常の虫除けスプレーも忘れずに)

ここで私なりのヒル対策ポイント

①、パンツや靴は出来るだけ明るめの色をチョイスする→足元を登ってくるヒルを見つけやすい

②、休憩は出来るだけ落ち葉がなく、日が差す明るい所で。可能であれば岩の上など→これも近づくヒルを視認しやすくするためです。

③休憩時に忌避剤を少し靴にふる→メンタル的に落ち着きます。

④同じく休憩中は、ザックを下さず座り込まない→どこにくっついてくるか分かりませんので。

「②~④を厳守!」と、自分に言い聞かせながら登ります。ヒルに気を使いすぎて登山を楽しめなくては本末転倒。あまりヒルばかりに気をとられないよう、立ち止まった時はとりわけ気を払うようにしました。

待てど暮らせど

登山口からは鬱蒼とした森の中をひたすら登り詰めます。この日は朝からガスがみっしりと空気を包み込み、登り始めには蒸し暑さを感じていましたが、5合目から上部は体を動かしている割には涼しさを感じ、夏の雨上りの割には快適に行動する事が出来ました。

八合目から上は石灰岩の山らしく、独特の白っぽい岩がたくさん顔をだしており、苔むした石灰岩が並んでいると、ちょっとした日本庭園的な見え方がするな、と暫し鑑賞。九合目あたりから眺望が抜けるはずですが、前述のとおりこの日はガスがどんどん発生し、時間経過と共に濃くなっていくのでした。

ガスに軽くまかれながらも藤原山荘(無人避難小屋)に到着。とても綺麗に維持された小屋で、ここで泊まる人が多いのも納得です(トイレもバッチリ)

小屋周りではガスが濃く、その姿を捕えられませんでしたが鹿の鳴き声がずーっと聞こえてました。こちらから見えない所で様子を窺っていたのでしょうね。

小屋周りで「ガスが晴れないかな」と無駄に時間稼ぎをしましたが、期待に反しガスは時間の経過と共にどんどん濃くなっていきます。ここでジャッジメント。「待ってもガスは晴れない」と判断し竜ヶ岳への縦走は中止!! とりあえず藤原岳のピークへ。稜線上も山頂も見渡す限りの・・・「ガス」でした(このコラムのトップ画像をご覧ください)が、ここで納涼しながら行動食を食べつつ小休止。かなり涼しく汗も一気にひきました。

再び行動を開始するも全くガスは晴れずですが、来た道を戻り天狗岩へ。こちらも「たられば」は禁句ですが、晴れていれば美しい稜線と眺望が・・・。しかし今回はガスのみでした。

この後は予測通りと言いましょうか、ヒルに気を付けながらの下山中もガスは晴れずでした。富田駅まで戻ってきた時にようやく晴れて、夏らしく気温が上昇してきました。(遠望する山は雲がかかったままでした)

こんな日もあります。お天道様は人間の意志ではどうしようもありません。それに合わせる事が大事ですね。

気分をかえて、第二ステージ「桑名でちょい旅」です。

ちなみに今回の登山で最も気を付けていた「ヒル」ですが、山中では2度靴を這い上がってくるのを発見。驚きだったのは帰りの電車に乗った時に、ひょっこり靴のアウトソールから現れました。

下山後、水道でブラシを使って靴を洗ったのに・・・。未だに謎です。

旅のはじまりに名物を

桑名でまず、何をするか?下山後なので、もちろん栄養補給から! 実は個人的にこの旅で一番楽しみにしていた桑名の名産「蛤」をいただきます。この初夏が旬の蛤、皆さんはご家庭で蛤を食べる時にどんな調理方法でたべますか?焼き、酒蒸し、お吸い物といったところでしょうか。桑名では蛤を売りにする数多の飲食店が立ち並び、産地ならではの様々な蛤料理を提供していますが、今回私が選んだのは”俵寿司本店”さんの「焼き蛤の蒸し寿司」です。

大ぶりでプリプリの身に甘辛いタレがからまった蛤。これまで私が食べてきた蛤とは全くの別物でした。貝類はそんなに沢山食べる物ではない、と思っている私ですが「この蛤はいくらでも食べられる」そう思えるぐらいの美味でした。他にも蛤料理は色々ありますが、この蒸し寿司の余韻を残したいので、欲張りませんでした。

コンパクトで巡りやすい

ここ桑名は、近鉄線とJR関西本線の桑名駅から徒歩でグルッとまわりやすく、登山アフターのちょい旅には最適。

桑名は東海道五十三次の中で唯一の海上路である「七里の渡し」で結ばれた宮宿(現在の名古屋市熱田区)についで二番目の規模を誇る桑名宿であった所、賑やかだった当時をしのびながら、食後の腹ごなしも兼ねてスタートです。

先程の俵寿司本店さんのすぐそばが旧東海道。ここから「七里の渡跡」へ、ここには「伊勢国一の鳥居」が。ここから伊勢路が始まると思うと、なかなか感慨深いものが。因みにここの鳥居は式年遷宮ごとに建て替えられる、伊勢神宮宇治橋外側の大鳥居を貰い受けて建て替えられているそうです。

七里の渡跡のすぐそばにある、桑名城跡の「蟠龍櫓」にも立ち寄ります。ここの二階から木曽三川を眺めます。ボランティアで案内をされている地元の方に色々と教えていただきましたが、伊勢湾台風を体験された方で、その当時の話しを聞けた事が最も印象的です。

そこから旧東海道を歩きますが、道の途中には控えめに当時に関する案内が設置されています。一番興味深かったのは、人々の生活用水として引いていた「通り井跡」。道の真ん中に「井」の文字があるのですが、これはこの案内が無ければ気付かなかった事でしょう。

途中、春日神社に立ち寄ってから再び旧東海道へと戻り、密かに楽しみにしていたスポット「歴史を語る公園」に到着です。ここは江戸の日本橋から京の三条大橋までの東海道五十三次をモチーフにしたコンパクトな公園。観光地でありながら地域住民のコミュニケーションスポットの役割も果たす公園といった印象。公園内には登れない富士山もありました。

さらには公園脇を流れる堀川の対岸には、桑名城三の丸の石垣を眺める事も。

登山アフターでのちょい旅にしては結構歩いて欲張りました。その後旧東海道のテーマからは外れますが、まだ開園時間内だったので和洋折衷の建造物と素晴らしい庭園がある「六華苑」を楽しんだり、昔は宿場町として賑わい人口が多かっただけに沢山のお寺がある、桑名らしい寺町通りを歩いたりと目一杯楽しんでしまいました。

お陰で帰りの電車では、発車後10分もかからずに深い眠りに落ちました。

因みに桑名では「桑名かき氷街道」なるイベントを行っているようで、市内の飲食店で工夫を凝らしたかき氷からベーシックなものまで、色んなかき氷が楽しめるようです。夏の散策時の休憩にはもってこいですね。

如何でしたでしょうか、今回の「サクッと好日山荘100名山と麓をちょい旅」。下山後の「日帰り温泉、食事、道の駅でお土産」などは、皆さん毎回の山行計画に入れられているかとは思いますが、麓やその近郊の街を観光で巡ってみる事”ありき”で登山の計画を立てるのも、短い休みを有効に使う手立ての一つかと思いますし、新たな発見に繋がるかもしれません。

 

四季折々、好日山荘スタッフによる藤原岳の登山レポートはこちらから。

 

おまけ

今回のお土産は桑名名物「安永餅」を、老舗の柏屋さんで購入です。素朴な味でほっこり。トースターで軽く炙ると違った食感が楽しめます。

 

好日山荘マガジンライター:菰下 了

 

*取材は感染症対策をとり、移動時や室内では混雑や密集を避けて行われています。

この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」

好日山荘マガジン 編集部

登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!