今年は低い山でも雪が堪能できます。
「雪山登山」
「厳しそう」「難しそう」とか自分のスキルや体力などと照らし合わせた時、「ちょっと自分には無理かな」と思いつつも「行ってみたいな」と思っている雪山未経験の方が多いのかな、という印象を受けます。
「雪山を登ってみたい」と考えている方に、魅力を伝えるべく、今回は「好日山荘96名山」でもある滋賀県の赤坂山に登ってきました。
登山の前にいきなりお立ち寄り
登山口へ向かう道中にまずは琵琶湖中に大鳥居がある「白髭神社」でお参りと日の出鑑賞をして行きます。
ここの神様は「人の営みごと、業ごと全ての導きの神様」という事なので安全登山を祈願しておきました。
そして朝7時半、赤坂山登山のベースとなる滋賀県高島市にあるマキノ高原に。ささっと素早く準備をして登山開始。ベースの気温が5℃ぐらい、動きだすとすぐに発汗すると予測し、降雪もないのでベースレイヤーのみでスタートします。ここは子供達が雪遊びを楽しむためのゲレンデがあり、そこを縦断すると登山口に辿り着きます。
登山道に入り、しばらく歩くと登山道は完全に雪に覆われており、これだけでも別世界感が出てきます。
おおよそ50センチから多いところだと1m以上の積雪でしょうか。
直近の数日間で気温の上昇があり、融雪と再凍結を繰り返したザラメ状の雪ですが、これぐらいの雪が初めての方には歩きやすくて良いかもしれません。
足元の装備をどうするか
雪のある山でまず必携となるギア(道具)の一番手はアイゼンやスノーシューなどが挙げられますが、今回私が持参したのは軽アイゼンと言われる6本爪のアイゼン。(どの道具にするかのチョイスに関してはビギナーの方は見当がつかないことが多いと思います。そんな時はお店や経験者などに相談する事をお勧めします)
今回の赤坂山で他の登山者を見てみると、12本爪、ワカン、スノーシュー、古来のかんじき(レンタルかな?)と多岐に渡ります。
「ピッケル+12本爪」を装備して急斜面で滑落停止の練習をする若者、スノーシューでトレースのない脇道や雪原に入るご夫婦、昔ながらの木製ワカンを履いて団体で登る学生さん(合宿でしょうか?)
そんな皆さんの装備やスタイルからも、赤坂山にはいろんな目的を持った幅広い層の登山者が多いよう。ビギナーから厳冬期の雪山縦走のトレーニングまで、楽しみ方は十人十色。小学生ぐらいのお子さん連れも何組かお会いしました。
ビギナーの方が雪山を選ぶにあたっては、そんな幅広い層の人が多く訪れる山が良いかもしれません。
分かりやすく、登りやすい
最初の休憩地点「武奈の木平」まで小一時間、緩やかに程よく登っていく快適な歩行が続きます。途中で動物の足跡をみたり、日陰の柔らかそうな雪に足を踏み入れてみたり、面白い雪害樹形を見たり楽しみながら登れます。
またしばらく降雪がなかったからという事もありますが、登山ルートがはっきりと分かる状況で案内版も雪に埋もれていません。「入山する人が多い→トレースがしっかりついている→コースを外しにくい」と考える事も可能です。勿論夏山同様で地図とコンパス、GPSなどで常に自分の位置を把握しておく事が大前提ですが、「人がいる事」が認識できればメンタル面での安心感があると思います。
夏の山以上の達成感(!?)
このあと粟柄越を経由して稜線を山頂まで歩くのですが、ここが雪原のように広くなっています。天気も良く風がないので、ついついはしゃいで走り回りたくなりますが、稜線では雪庇が張り出している所も。まがり間違って踏み抜かないように、山頂までは足元の確かな所を歩きます。
粟柄越からはものの10分ほどで山頂に到着。見下ろせば山肌は真っ白。雪の季節以外に登る時と見え方がまるで違ってきます。「山中の雪」という期間が限られた非日常の中を歩く事によって、いつもの山登り以上の充実感や達成感が得られるのかな、と思います。よく言われている「冬は別世界」という体験を、標高1,000mにも満たない山で体験できる事は、とてもありがたい事なのかもしれません。
標高1,000m以下とは思えない雰囲気
この時期にしかできない楽しみ方も
雪山へは低山と言えども、夏の装備には無い「持って行くと良い物や必携の物」があります。
今回私は雪山には必ず持って行くスコップで、山頂直下の平原、人が通らないところに雪のベンチとテーブルをつくり、ゆっくり琵琶湖を眺めながらティータイムを満喫。折角持って行くのならば道具も極力使ってあげる事で道具に慣れたり、もしかしたら道具の不具合を見つける事が出来るかもしれません。とりわけ冬の間しか使わない道具は、機会があればガンガン使ってあげましょう。
注意したい事
そして、長めのブレイクで少し体が冷えた頃、下山を開始します。その日の状況など様々な要因で変わってきますが、例えピストンで同じルートを戻るとしても、午前と午後では雪のコンディションが大きく変わっている事はよくあります。下りこそ、しっかり安全第一で歩くようにしてください。
この日も気温がぐんぐんと上がり雪がどんどん”ザラメ状”に。下る時には足元をとられる程でした。
(停滞・減速を余儀なくされる事がありますので、地図などのコースタイムより1.5倍以上を見ておいても良いと思います)
下りながら、踏み跡のない所を歩いてみたり(踏み抜きに注意!)、斜度の緩い所で走ってみたり(これも踏み抜き注意!)と
雪を満喫しながら、あっという間にスタート地点のゲレンデまで戻ってきました。
雪山には雪があるうちに
当たり前の事を書いていますが、それぐらい雪を楽しめる期間は「足が早い」です。今回登った赤坂山もそうですが、登山口から山頂まで「雪山登山」を楽しめる条件が揃うのは一年でも本当に短い期間だと思います。
冬ならではの楽しみ方として、まずは登りやすい雪山に気候が安定しやすいこれからの季節に、ぜひ始めてみて下さい。
「初心者でも登りやすく、誰かを誘って登りやすい山」をコンセプトに選ばれている”好日山荘96名山”の中には、冬場に雪がしっかり積もる山もあります。今回の赤坂山もその一座です。
好日山荘96名山のコンセプトは「初心者でも登りやすい山。みんなを誘って登りやすい山」です。
冬のシーズンには雪を楽しめる山もありますので、ご参考に。
またスタッフの登山レポートも参考に、雪山登山を楽しんで下さい。
*この取材は、登山中、移動中共に感染症予防対策を行い、最新の注意を払い取材いたしました。
おまけ:赤坂山とエトセトラ
下山後にマキノ高原から車ですぐのお食事処「蓮」さんに。ここでは赤坂山がある高島市の琵琶湖を挟んだ対岸、伊吹山の麓である米原市産の「在来種伊吹そば」を使ったお蕎麦と、何と言ってもここは「鯖街道」の一部高島市、という事で「鯖ずし」をセットで食べさせてもらえます。
脂がのった鯖寿司(雑穀米を使ってます。珍しい!?)とさっぱりしてのど越しすっきりの伊吹蕎麦とのコンビネーションはバツグン。しかもセットには私の大好物の一つ「きずし」(しめ鯖)が!! 至れり尽くせりでした。満足!
さらにそこからの帰り道は「メタセコイアの並木道」車をピックランドさんに停めて見学。冬枯れしているこの時期でも十分に楽しめました。四季それぞれで訪れたくなる風景です。
そこからまた寄り道して、ザゼンソウの群生地へ。時期的にすこし早いかなとはおもいつつ、見学してみました。まだ早いようでマメに見に来るという地元の方とお話ししたのですが、「もうちょっと先かな」との事でした。
おまけ その②:雪山登山ちょっとした事ですが、ご参考に。
Tipその①
この日は朝から気持ちの良い青空が広がり、快適な登山が楽しめました。飛沫防止のマスクとして着用したネックチューブが、日焼け止めとしても重宝。これに加えて、日焼け止めを顔に塗る事もお勧め。雪山は思ったより照り返しがきついです【サングラス・ゴーグル焼けにも注意を!)
Tipその②
雪山では、ジャケットを脱いだり着たりが多くなりがちですが、都度バックパックに「格納したり取り出したり」を繰り返すのはとても煩わしいので、リッド(雨蓋)があるタイプのバックパックであれば、リッドと本体の間にジャケットを挟んだり、フロントのバンジーコードなどを活用して、スムーズな出し入れを。
Tipその③
ストックを携行しましょう。ピッケルが不要な場合でもストックがあると重宝します。雪の中を歩くときにバランスを取ることは勿論、アイゼンの底面に付着した雪を落としたり、自分の進む道の状況をストックで雪面に挿して確認したりと、夏以上に活躍する事間違いなしです。
また登山中、一時的にグローブを外した際にはストックのグリップに挿す事で、グローブの紛失や降ってきた雪がグローブ内へ侵入する事を防ぎます。
Tipその④
冬用に使う登山パンツは裾の部分を補強した、アイゼンガード(パッチ)がある物にすることをお勧めします。
軽アイゼンといえども、意外と裾を引っ掛けがちです。
好日山荘マガジンライター:菰下 了
この記事を書いたのは「好日山荘マガジン 編集部」
登山・クライミング・キャンプのプロ、好日山荘スタッフによる編集部。あなたのアウトドアライフを応援します!
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